史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第八章 王国帰還編

540話 大人の女ァ

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「わぁ」

 ノマちゃんの部屋に足を踏み入れた私は、広がっていた光景に唖然としていた。
 驚いたのはまず、広さだ。考えてみれば王の間以外に他の部屋にはあんまり行ったことがなかったので、他の部屋がどんな風になっていたのか知らなかったけど……

 ひ、広い。人一人に必要な広さか? ってくらいに広い。
 学園の寮の部屋だって、二人でもこれより狭かったぞ。

 それに、家具もひと目見て豪華だとわかるものばかり。ベッド、タンス、大きな鏡……
 これは……ここで暮らして良いって言われたら、甘えちゃうのもわかる気がするなぁ。

「適当に腰掛けておいてくださいな。
 えぇと、あの指輪は確か……」

 ノマちゃんは、私に適当に座っておくように告げ、自分はタンスへと歩いていく。
 それから引き出しを開けたりなんかして……
 その様子を見守りつつ、私は座る場所を探していた。

 ただ、ぱっと視界に入るのはやっぱりあのベッドだ。
 なので、少し躊躇しながらもベッドへと、腰掛ける。

「わ……」

 ベッドに腰を下ろし、体重をかけた瞬間……おしりが、沈んだ。
 これは……なんてふかふかなんだろう。ただ座っただけなのに、沈み込んでいく……!

 寮のベッドとはえらい違いだ。さすがお城のベッド、いい素材を使ってるんだなぁ……

「……えぇと、フィールドさん?」

「はっ」

 ノマちゃんは戸惑ったように、私を見ていた。
 その理由は……私が、ポヨンポヨンとベッドの上で跳ねていたからだ。沈んだ体を打ち上げて、また沈む……それを繰り返している。

 し、しまった。あまりの気持ちよさについ、ポヨンポヨンしてしまっていた。

「ごめん、つい……このベッド気持ちよくて」

「気持ちはわかりますが。
 えっと、ありましたわよ。これですわよね」

 ノマちゃんは、透明な包みに入れたものを手のひらに乗せ、私に見せる。
 そこにあったのは、指輪だ。私が探していた指輪に、間違いはない。

 赤い石も、ちゃんとハマっている。
 指輪というより、この赤い石が『賢者の石』なのだ。これさえあればオーケーだ。

「それにしても、いったいどこで手に入れたものですの? このようなきれいな宝石、なかなかお目にかかれるものではありませんわよ」

「へっ……えっ、と……ろ、露店で安く売ってて?」

「どうして疑問形ですの」

 言えない……これは本当は国宝と呼ばれる魔導具で、魔獣騒ぎの褒美としてザラハドーラ国王にもらったものだ、なんて。
 あぁいや、いえないわけじゃない。なるべく、言わないほうがいいだけだ。

 この件はあまり口外しないように言ってたし。あの場にいたゴルさんや先生だって、人に言いふらしたりはしてないだろう。
 ノマちゃんになら話してもいい気もするけど……今となっては死者との約束。簡単に破るわけにはいかない。

「まあともかく、これは返してもらうよー」

「えぇ。フィールドさんのだとわかれば、持っていきませんでしたのに」

 私は指輪を受け取り、包みから取り出して左手の薬指にハメる。
 うんうん、こうして見るとなかなか似合っているんじゃないかな?

「どうかなノマちゃん、大人の女って感じ?」

「えぇ、素敵ですわ」

 パチパチ、と拍手をしてくれるノマちゃんに、私はまんざらでもない。
 指には指輪、そして首には師匠からもらったネックレス。
 ふふん、大人の女ァ。

 あんまりアクセサリー類には興味なかったけど、意外と悪くないものかもしれない。
 今度ルリーちゃんたちとそういうお店行ってみようかな。

「それにしても……」

「うん、なに?」

「左手の薬ゆ……いえ、なんでもありませんわ」

 ノマちゃんは、私が指輪をハメた場所をまじまじと見ている。
 もしかしてノマちゃんもハメてみたいのだろうか。でも、もしも変なことになったら怖いからなぁ。

 魔力を込めなければ大丈夫だとは思うけどね。

「それじゃ、そろそろ帰るよ。もう暗くなってきたしね」

「ですわね。いっぱいお話できて楽しかったですわ!」

「私も!」

 お買い物中、ノマちゃんとはたくさん話ができた。
 そのほとんどが、私がどこへ転移してどうやって帰ってきたか……だったけどね。
 今度クロガネを見たいと、目を輝かせていた。

 さて、城から出た私は、暗くなりつつある空を見た。
 まずは、学園に戻って……それからリーメイとヨルと合流しよう。結局この時間まで待たせてしまったルリーちゃんとラッへのところにも、戻らないといけないし。

 ここから学園まで徒歩かぁ……買い物で歩き回ったから、さすがに足が疲れちゃったよぉ。

「あ、そうだ」

 せっかくだし、この『賢者の石』を使ってみよう。
 石に向けて、魔力を集中。すると、赤い石は輝きを持ち始めて、光る。それだけじゃない……自分の中の魔力が、大きく揺らめいている感じ。

 試してみるのは、疲労回復。
 ただの魔法じゃあ回復系統のものは使えないけど、これを使えば……あら不思議。足の疲労が取れたじゃない。

 それと、身体強化。いつもの自分の魔力とどれくらい違いがあるか、走って試してみよう。

「よーい……どん!」

 私は腰を落とし、一気に踏み込んで走る。
 いつもの自分の魔力以上の魔力が、身体中に流れている。それに、魔力を増やせばそれだけ疲労も大きくなるのに……そんなことは、まったくない。

 つまり、いつもと同じ分の魔力を使っているのに魔力はいつもより膨大で、疲れもしない。
 これはすごいや!

「あはははははは!」

 思わず走りながら笑っていると、あっという間に目的地……魔導学園につく。
 すると、さっき来たときとは様子が違っていた。

 校門付近に、たくさんの生徒がいるのだ。

「どうしたんだろ」

「エランくん!」

 身体強化を解除し、トコトコと歩く私に、人混みの中から出てきたナタリアちゃんが駆け寄ってくる。
 どうしたんだろう。

「どうしたの、ナタリアちゃん」

「どうしたの、じゃない! いきなりあんなドラゴンと一緒に飛び去っていって、他の生徒を落ち着かせるの大変だったんだぞ!」

 今まで見たことがないくらいの慌てよう……
 そういえば、ここから王城に行くためにクロガネを召喚して……そのクロガネに驚いた生徒たちが寮から出てきているところで、ナタリアちゃんに任せて行っちゃったんだっけ。

 ぐわんぐわんと肩を揺らされ、私は、ナタリアちゃんからの抗議を受けていた。
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