史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第八章 王国帰還編

561話 黒幕は誰

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「ところで吸血鬼ヴァンパイアって、どんな種族なの? 血とか吸うの? 日の光とか平気なの?」

 これまで謎に包まれていたシルフィ先輩が、獣人の吸血鬼だと知ったことで、私は興味津々だった。
 珍しい種族には、グイグイいっちゃう。
 まあ元々、この国に来るまでは師匠以外との関わりはほとんどなかったからなにもかもが物珍しかったんだけど。

 私の勢いに、シルフィ先輩はちょっと押され気味だ。

「めちゃくちゃグイグイ来る……なんの情報だそれは。
 日の光がダメなら、この快晴の空の下病院に来れないだろう」

「いやあ、日傘とか」

「はっ」

 鼻で笑われたよ。
 まあ、これまで普通に外で歩いてたから、日の光に弱いってのは勝手なイメージなんだろうけど。

 それにしても、こうして見ていると普通の人間のようだ。獣人ってそもそもそうではあるけども。
 ただ、せっかくなんて吸血鬼ですって証拠が見たい。

「それで、さっきから言ってる洗脳って単語だが……
 国中が、あの男が国王であることに疑問を持たないように洗脳されている、と?」

「お、さすが理解が早い」

 そういえば国の人たちが洗脳されているとか、まだ言っていなかったな。
 ただ、国王が変わり周りがそれを受け入れている……その疑問があっただけだ。

 考えてみれば、国王が変わったのに誰一人として声を上げないのはおかしいもんな。
 ザラハドーラ国王の死は事故のようなもので、その息子であるゴルさんが継ぐのが必然とはいえ……それに声を上げる人だって、いるだろう。

 それこそ若すぎるとか、否定的な声だって。ベルザ家とは関係ない人間ならなおさらだ。
 でも、否定の声はない。隠れて言っている様子もない。

「それで病室内でも、洗脳できる魔術がどうとか言っていたのか。
 こんな状況でなければ、そんな魔術があるはずないと一蹴していたところだ」

「あははは」

 ただでさえ現実味のない話だ。おまけに、シルフィ先輩は私を好いてはいない。
 そんな私がなにを言ったところで、聞く耳は持たないだろう。普段なら。

 こんな状況だからこそシルフィ先輩と、初めてまともに話ができた……ってのも、なんだか複雑な気分だけど。

「ここにいる三人以外に、洗脳を受けていない人物を探すことが必要かもな。
 何事も数だ。人数がいれば、できることの幅も広がる」

 先輩の言うように、何事も人数は必要かもな。
 とはいえ、ノマちゃんは王城にいるから一緒に行動することは難しいし、筋肉男は……協力してくれる気がしない。

 やっぱり、ここにいるメンバープラスラッへ、リーメイ、あとヨルってことになるのか。

「ま、洗脳している黒幕がわかれば、そいつを殴って終わりにできるだろうがな」

「あはは、乱暴な考え方だなー」

「……」

「え、なにさその目は」

 先輩の目はまるで「お前が言うな」と言っているかのようだった。
 ルリーちゃんからも似た視線を感じた。

「黒幕かぁ」

「俺は国王……もしくはその娘が怪しいと思っている」

「レーレちゃんが?」

「……レーレちゃん?」

 黒幕はレイド国王かレーレちゃん。リーメイの見解と同じことを言うなぁと思っていたら、訝しむような視線を向けられた。
 あぁ、私がレーレちゃんと名前呼びしたからびっくりしているのか。

「昨日王城へ行った時に、国王とレーレちゃんに会ったの。ちょっと仲良くなってね」

「……帰ってくるなり未知の相手と仲良く……
 呆れを通り越して、もはや尊敬する」

 おぉ、あのシルフィ先輩が私を尊敬だなんて! 悪い気はしないな!
 なんとなく鼻が高くなった気分だ。えっへん!

 素直に褒められている気がしないのは気のせいだろうか。

「それで、会った印象はどうだ?」

「うーん、お話した感じ悪い人って感じはしなかったな。優しかったし。ただ、帰り道にリーメイから私も洗脳されかかってたって教えてもらったから、近い距離にいた国王かレーレちゃんが怪しいんじゃないかって話にはなったんだけど……あ、洗脳はリーメイに解いてもらったんだけどね。そういう話だと、やっぱり怪しいのは二人のどちらかに……
 ……頭抱えてどうしたの?」

「いや、なんというか……いろいろ整理が追いつかん。
 お前も洗脳されかかってた? 解いてもらった? そもそもリーメイって誰だ」

 私の話を理解できないというように、頭を振っていた。
 さすがのシルフィ先輩も、すべてを理解するにはいろいろ情報が多すぎたようだ。

 なので、私がこの国に帰ってきてからのことをざっと説明する。魔大陸でのことも含めたら長くなるからね。
 帰ってくる途中に仲良くなったリーメイのことも含めて。

「なにをどうしたら、そんなめちゃくちゃな生活を送ることができるんだ」

 なんかすごく疲れた顔をしていた。なぜ。

「生活って、魔大陸から帰ってきただけの道のりだよ」

「別に今回のことだけを指しているわけじゃない」

 頭を抱えてしまった。なんだよぅ、それじゃまるで私が、しょっちゅう騒ぎを起こしているトラブルメーカーみたいじゃないか。
 ……違うよね?

「まあ、なんでもいいが。その人魚とやらがいれば、事態は大きく変わりそうだな」

「うん。でも、みんなを洗脳している黒幕が悪いことを考えてるなら、リーメイの力が知られたらリーメイが狙われるかもしれない」

「慎重に、ということですね」

 リーメイは今は、学園に行っているはずだ。
 どうせ私たちもこのあと学園に行くつもりだったし、シルフィ先輩も連れて行くか。
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