史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第九章 対立編

604話 舞台上の二人

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「ふぅ……なんかすごい緊張してきた」

「な、なんでエランさんがそんなに緊張しているんですか」

 あれから三十分が経とうとしている。私の胸は、ドキドキで張り裂けそうだった。
 だって、仕方ないだろう。あと少しで、ルリーちゃんとクレアちゃんの決闘が始まるんだ。

 ただ見ているだけの私よりも、ルリーちゃんのほうがよっぽど緊張しているはず……
 そう思っていたけど、なんかいつも通りに見える?

「ルリーちゃんは、緊張してないの?」

「してますけど……エランさんを見ていたら、不思議と落ち着いてきたと言いますか」

「あぁ……」

 それはつまり、あれだな……自分よりも取り乱している人を見ると、逆に落ち着くってやつだ。
 そのおかげでルリーちゃんが落ち着きを取り戻せたなら、よかったけど。

「さて、そろそろ行こうか」

「うん。……あれ、ジルさんは?」

 先生の言葉にうなずき、立ち上がる。すると、妙に人の気配が少ないことに気づく。
 ここにいるのは、私とルリーちゃん、そして先生だ。クレアちゃんは先に出ていったし、ナタリアちゃんはそれを追いかけた。

 いつの間に、ジルさんもいなくなったんだろう。

「そろそろ時間だから、アティーアちゃんのほうに行ったよ。舞台までの道を教えにね」

「なるほど」

 ここにいないのは、クレアちゃんを決闘の舞台まで案内するためか。
 舞台自体はここから見えていても、どうやってあそこまで行くのかわからない。

 ってことは、ここに残っている先生は私たちを案内してくれるってことだろう。

「ささ、行こ行こー」

「なんで先生はそんな呑気な感じなの」

 小屋を出て、先生の案内に従って歩いていく。
 小屋以外はなにもない空間だと思っていたけど、いつの間にか視線の先には一つの扉があった。
 ……扉?

 周りにはなにもないのに、ポツンと扉だけが立っている。
 それを疑問に感じているのは、私とルリーちゃんだけだ。先生は当たり前のように扉に手を伸ばし、ドアノブを回していく。

 ガチャ……と扉が開き、中へと足を踏み入れる。
 するとその先にあったのは……

「わ……」

「ど、どうなってるんですか?」

 ここは……舞台上だ。舞台の上に、私たちは立っている。
 でも、どうして……位置関係的に、私たちさっきまであっちにいたよね?

 それが扉一枚くぐっただけで、なんでこんな距離を移動しているの?

「ま、ここは空間そのものが違うからな。なにも不思議なことじゃあない。ここは"そういうところ"だから」

 ……ここはジルさんが作った空間だから、なんでもあり……ってことか。
 普段ならありえないようなことでも、この場所であれば関係はない。

 じゃあ……正面に見えている、もう一つの扉は……

「あ……」

 私たちが今くぐってきたことは別の、もう一つの扉。ここから私たちが出てきたことを考えれば、あそこから出てくるのは……
 と考えていた時。扉が、開く。

 すると出てきたのは……やっぱり、ジルさん。そしてナタリアちゃんに……クレアちゃんだ。

「く、クレア……さん」

「……」

 ついに、二人が同じ舞台に立った。
 私はなんて声をかけたらいいのか、わからなかった。開いた口が閉じて、また開いて……の繰り返し。

「じゃ、オレオレたちは行こうか」

「え」

「あとは、二人の時間」

「わっ……ちょっ」

 呆然としているうちに手を取られ、先生に引っ張られる。
 自然と足が動き、扉をくぐる先生かな続いて私も、扉をくぐる。

 最後に、対するルリーちゃんとクレアちゃんの姿を目に収めて……その直後、またも私の前の景色は変わった。

「! ここ……は?」

 扉をくぐってきたのだから、ここはさっきいた場所……のはずだ。
 でも、違う。ここは始めに扉をくぐった場所じゃない。

「どうどう、驚いたでしょ」

「えっと……?」

「一度くぐった扉を戻って、別の場所に移動していることに困惑しているね。けれど、さっきも言ったけど……ここは"そういうところ"だ。
 ちなみにここは、観客席みたいなところかな」

 先生が指さした先には、遠くにルリーちゃんとクレアちゃんがいるのが見える。
 ここは、舞台に用意された観客席か。さっき扉をくぐって、また別の場所に来た。

 ということは、同じく扉をくぐったナタリアちゃんたちは……

「エランくん」

「! ナタリアちゃん」

 予想したように、ナタリアちゃんもまた同じ場所に移動していた。
 不思議な扉だけど、そういうものだと割り切るしかない。

 それにしても……これで、正真正銘舞台上にはあの二人だけか。

「そういえばナタリアちゃんは、クレアちゃんを追いかけてなんの話をしていたの?」

「話をした、ってほどでもないかな。こっちから一方的に話しかけて。
 ただ、ルリーくんのことを知っているのかって聞かれたから、うんと答えたよ。そしたら……「そう」とだけ」

 ……ナタリアちゃんでも、今のクレアちゃんの心を開くのは無理か。
 話しかけても無駄なら……あとはもう、魔導で示すしかない。今それができるのは、ルリーちゃんだけだ。

 がんばれ、ルリーちゃん……この国を去らなくてもいいように。
 ううん……クレアちゃんと、ちゃんと話ができるように!
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