史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第九章 対立編

654話 使い魔にしたらどうかな

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「ぴぃぴぃ」

「はは、すっかり元気になったねぇ」

 私の足下で、毛玉魔物が小さく鳴く。
 赤くつぶらな瞳で私を見上げてくるその姿は、なんだかいじらしい。

「エランくんに懐いているようだなね。自分を助けてくれた相手だと、理解してるんだろう」

 そんな毛玉魔物を見つめながら、ナタリアちゃんが呟いた。
 毛玉魔物を保護した日から数日が経ち、学園再開の目途はまだ正確には経っていないけど、確実に準備は進んでいるとのこと。

 今日は、ナタリアちゃんと学園内を歩いている。
 魔導大会の事件の騒ぎでも、学園自体にはほとんど被害はなかったのだという。

 ただ、学園が休校となったこの際に、学園のセキュリティとかを見直すことにしたのだという。
 学園の警備は固い。そう思われていたけど、実際には魔獣が出現したり、"魔死者"hが出たり……心配される面もあった。

 その警備を見直すのも、学園再開が遅れている理由の一つだ。

「こうして校内歩いてると、いつも通りな感じがするけどね」

「まあ、そうだね。ところで、今更だけどなんでその子を連れて来たんだい?」

「だって、部屋に一人……いや一匹にしておくのも寂しいだろうし」

 復旧作業のときには、すやすやと寝ているときを見計らって外に出ていた。
 でも、こうして起きている時は、一緒に連れて歩くようにしている。

 学園内に魔物が出たことは、先生からそういいた報せが生徒に伝えられた。
 みんな、動揺したようだけど私が面倒を見ていることを知ってからは、安心したようだった。どうしてだろう?

「こんな見た目だし、わりかし人気なんだよねこの子」

 毛玉魔物を、抱き上げる。こうして抱きしめると、ふわふわして気持ちいいんだ。
 すれ違う生徒が、この子を見てかわいいとか言っているのを聞くと、なんだか胸があたたかくなる。

 中には警戒した目を向ける子もいるけど、それでもあからさまに嫌そうな顔はしていない。

「隣にエランくんがいれば、安心だろうしね」

「ん?」

「ところで……その子、この先どうするんだい?」

 ナタリアちゃんの疑問に、私は足を止めて考える。
 この子をどうするか……か。そうだよねぇ、どうしよう。

 怪我自体は、最初の回復魔術でたいぶ治った。それから、部屋でおとなしくしていることで、もう完治したと言ってもいい。
 つまり、この子を置いておく理由は、もうないわけで。

「かといって、野に放つって言うのもねぇ……」

 この子がモンスターなら、それも考えた。でもこの子は、魔物だ。
 いくらおとなしいとは言っても、魔物とモンスターとじゃ大きな違いがある。

 魔物は凶暴な生き物だし、聞いた話だと自分より体の大きな生き物も食べることがあるとか。
 魔物が人間を襲うというのも、これに似た話だろうし……この子がそんなことをするとは、思えないけど。

 でも、この子がその辺りのモンスターを襲ったりなんかしたら。そう考えると、無責任に放り出すことはできない。

「それに、魔物である以上、いつ魔獣になっていしまうかわからないしね」

 ナタリアちゃんの言う通りだ。魔物は、魔石を吸収すれば魔獣になる。
 魔物の状態でおとなしかったとしても、魔獣だとそうはいかないだろう。

 おとなしい魔獣なんて、見たことがないし。

「うーん、どうしようか」

「なにも考えずに魔物を治したってとこが、エランくんらしいよね」

「それどういう意味?」

「褒めてるんだよ」

 笑いながら、ナタリアちゃんが言った。
 そうか、今のは褒めている……のか?

 確かに、この子を助ける時……私はその後のことは考えてなかったもんなぁ。
 助けてどうするのか。ずっと面倒を見るわけにもいかないのに。

「いっそ、その子も使い魔にしてしまう、というのはどうだ?」

「へ?」

 それは、思ってもいない言葉だった。
 使い魔……魔物を使い魔。考えたこともなかった。

 だって、そもそも魔物を使い魔にしたなんて話、聞いたことがないし。

「その子もエランくんに懐いているし……エランくんはクロガネと契約しているとはいえ、使い魔は一体だけではないという制約はないだろう」

 使い魔は一体しかいてはいけない……そんな決まりはない。
 師匠のようにたくさんのモンスターを使い魔にしていたし、仮契約の使い魔を一定期間で変えていく……なんて方法もある。

 魔物を使い魔にしないのだって、いくら契約を結んだとはいえ魔物を使い魔にするのは危ないから……という理由からだろうし。
 私なら、魔物も制御できる。そう思ってのことだろう。

 その信頼は、嬉しいけど……

「いや、私はちょっと無理かな。いや、この子が嫌とか言うんじゃなくてね」

「それは、どうして?」

「だって、私もうクロガネと……ドラゴンと、契約してるんだよ? 他の子が入り込む魔力よちはないよ」

 そう、私にはもうクロガネがいる。ドラゴンとの契約は……いやそもそも使い魔契約自体が初めてだけど、契約ってのは結構魔力を消費するのだ。
 契約してしまえば、術者と使い魔の魔力は共有される。だけど、使い魔を召喚するときだけは、自前の魔力が必要だ。

 クロガネを召喚したあとに、他のモンスター、魔物と契約し……そして召喚するような真似は、私にはできない。

「だから、私にはもう他の子は……って、ナタリアちゃん固まってどうしたの?」

「え? あ、あぁ……エランくんって、魔力の限界値とかあったんだな、と」

「あるよ! 人を無尽蔵な魔力製造機みたいな目で見てたの!?」

 ナタリアちゃんが固まっていると思ったら、なんだかとんでもないことを考えられていた。
 私だって魔力の限界はあるんだからね!?

 そもそも、自分で言うのもなんだけど、ドラゴンと契約出来る人自体、そんなに多くないと思うの。
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