史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第九章 対立編

658話 前代未聞の使い魔契約

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 使い魔契約の光……クロガネの言うように、これはその光によく似ている。
 私とクロガネが契約し、その際青白い光に包みこまれた。

 そして、私がそう思っただけならともかく、クロガネがそう言う以上これは本当に、使い魔契約の光なんだろう。

「な、なにが起こってますの?」

「この光は?」

 その光景に、カリーナちゃんはたちは困惑した様子だ。
 彼女たちは、使い魔契約についての知識はあっても、その儀式を見るのは初めてだろう。わからないのも無理はない。

 だから私は、まずみんなを落ち着かせる。

「みんな、落ち着いて。これは、変なものじゃないから」

「そ、そうなんですか?」

「うん、これは使い魔契約の儀式で起こる光だよ」

「使い魔契約の? ……なんでこの場で?」

 うん、そうだよね。なんでこんなところでって、そりゃ疑問に思うよね。
 答えてあげたいけど、私にだってその理由はわからない。

 なにもしていないのに契約なんて、そんなことあるはずない。
 そんなことがあれば、この世は契約で溢れてしまっている。

「ふぁ」

 光が、消える。二人を包み込んでいた光が出ていたのは、数秒程度だ。
 その中から出てきたフィルちゃんは、毛玉魔物を抱きかかえていた。

「フィルちゃん、大丈夫?」

「え、うん」

 きょとんとした様子で、フィルちゃんはうなずいた。
 当然だけど見た感じ傷はないし、体調が悪くなったなんてこともなさそうだ。

 見たところ、フィルちゃんにも毛玉魔物にも変わった様子はない。
 でも、わかる。二人の間に、魔力による繋がりが出来ているのを。

「なんだって、こんなことに」

 フィルちゃんを心配するみんなが側に寄る中で、ナタリアちゃんは深刻そうにつぶやいた。
 いきなり起こった、使い魔契約。私だって、ラッヘに教えてもらってやったことを……魔法も使えないフィルちゃんが、なぜ?

 契約に必要なのは、お互いの血と……名前だって、ラッへは言ってた。

「もしかして……」

 さっき、毛玉魔物がフィルちゃんの指に噛みついたのは……まさか、フィルちゃんの指から血を流させるため?
 偶然だとも思うけど……ずっとおとなしかったのがいきなり、飛びかかったのも気になる。

 それに、指先を噛み切る程度だったのも。
 もし本気で襲うつもりなら、あの大きさでもフィルちゃんの指一本くらいならかみちぎれたはずだ。

 まあそんなことをしてたら、おとなしかったとか関係なく消し炭にしていたけど。

「自分の血は、簡単に流せるだろうし……」

 自分の血こそ、それこそ適当に体を傷つければいいだろう。
 ただ、ここで二人の血を流せたとしても、もう一つ必要な名前はどうだろう。毛玉魔物には、まだ名前もついていないはずだし。

 ……いや、待てよ……? 名前って……まさか……


『えー、私この子ともっと仲良くなりたい! もふもふと一緒がいいー!』


 ……さっき、フィルちゃんが騒いでいたあの言葉。
 まさかとは思うけど、あの言葉が……『もふもふ』が名前認定されちゃってる!?


『……別に、召喚魔術ったって、複雑な方法ってわけじゃねえよ』


「確かに……確かに、そう言っていたけどさ……!」

「?」

 いや、複雑じゃないにしたって、限度があるだろう。
 それになんだ、この偶然に偶然が重なった出来事! こんなことある!?

 使い魔契約の魔法陣サークルさえもないし……
 いや、魔法陣は形式だけだってラッヘも言ってたけどさぁ。必要すらないなんて。じゃああれはなんだったの!?

『確かに驚きの展開だな。とはいえ、双方にその気がなければ契約は成されん。
 一連の流れは偶然だったとしても、互いに契約しても構わないという思いがあってこそだ』

「なるほど……」

 お互いに、契約を結んでも良いと……そう思っていた。
 契約したいと言っていたフィルちゃんはもちろんのこと、あの毛玉魔物も。

 でないと、わざわざあんな動きはしないか。

『いや、偶然などではなく……必然というものかもしれんな』

「?」

 それにしたって……なんで魔法も使えないフィルちゃんが、使い魔契約なんてできたんだろう?
 まあ、魔導についてなんてまだまだわからないことは多いし、こういうこともある……のかな。

 なんにしても、契約が完了してしまった以上、いくた騒いでも私たちにはどうしようもないわけで。
 使い魔との契約を切ることもできるけど、それだって本人にしかできないことだ。

「ねえねえ、さっきの光はなんだったの?」

「あれは……フィルちゃんがその毛玉魔物と、使い魔の契約を結んだってことだよ」

「えっ、本当! やったー、よろしくねもふもふ!」

 自分の身になにが起こったのかを知ると、フィルちゃんは腕に抱きしめた毛玉魔物……もふもふをさらにぎゅっと抱きしめた。
 もふもふって、やっぱり本当に名前だったのか。

 前代未聞の、魔物との使い魔契約……しかも契約したのは、魔法も使えない女の子。
 人間は誰しも、魔力を持っている。だから誰でも、魔導士になれる素質を秘めている。

 とはいえ……

「わー、あははは!」

 まさか、師匠に拾われた私と同じくらいの子が、魔物と契約してしまうなんて。
 それも、おそらくは魔物の方から、契約に踏み切った。

 まだフィルちゃんのこともよくわかってないのに、いろんな謎が積み重なっていく気分だ。
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