史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第九章 対立編

657話 もふもふ

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「皆さん、どうしたんで……え、エランさん?」

「本当だ。お久しぶりです」

「ユージアちゃんにシルメィちゃんも」

 私たちが戯れていると、さらに人が集まってくる。
 声をかけてくれたのは、ユージア・ワクニンちゃんにシルメィ・バンテンちゃん。この二人も、お茶会で仲良くなった子たちだ。

 どうやら、私が生徒会に行ったり諸々の理由でお茶会に行けなかったときも、このメンバーは特に仲良くしていたようだ。
 うんうん、仲良きことはいいことだよ。

「なんかすごい久しぶりな気がするよねぇ」

 クラスでいつも会っていたけど、魔導大会の事件で飛ばされちゃってから濃ゆい時間を過ごしてきたからな。
 なんかクラスメイトに会うのもすごい久しぶりな気がするよ。

 二人にひらひらと手を振っていると、その隣でキリアちゃんがおどおどしているのが見えた。
 なにかを、チラチラと見ている。この場にいるのが貴族ばかりで、緊張している……というわけではなさそうだ。

「キリアちゃん?」

「あ、えっと……そのぉ……」

「やっぱり、この子が気になるかい?」

「は、はい」

 言うべきか言わないべきか……と悩んでいた様子のキリアちゃんだったけど、ナタリアちゃんの指摘に観念したようにうなずいた。
 大丈夫だと言っても、やっぱり気になるよなぁ。

 キリアちゃんはただでさえ、魔物に怖い目に遭わされているのに。

「心配しないでよ。この子はナタリアちゃんが使い魔にするから」

「えっ」

「!?」

 なんとか気持ちを軽くすることが出来ないかと、私は笑いながらさっきの話を持ち出す。
 キリアちゃんは当然ながら、そしてナタリアちゃんも驚いた表情を浮かべていた。

「じょ、冗談だよ。そんな顔しないでってば」

 ただ、ナタリアちゃんが今までに見たことがない顔をしていたから、すぐに冗談だと言っておいたけど。

「び、びっくりした……そうですよね、冗談ですよね」

「つかいまー?」

 うーん、ぱっやり魔物を使い魔にって言うのは信じられないようなものなんだな。
 これまでそういう話は聞いたことがないし、好き好んで魔物を使い魔にしようなんて人はいないわけか。

「使い魔って言うのはね、その子と契約して自分の……」

「けいやく?」

「えっと……もっと仲良くなるための約束……みたいな感じかな?」

 ロリアちゃんが、フィルちゃんに説明していた。
 元々平民だという彼女は、貴族と平民両方の視点を持っている。そういうつもりで誘ったのかはわからないけど、カリーナちゃんの目指す社会にはこういう子が必要なんだろうな。

 貴族で平民で……というんは、わりと貴重な存在だと思うし。

「もっと仲良く……なら私、この子とけいやくしたい!」

「……!?」

 そんなことを考えていたもんだから、フィルちゃんからの予想外の言葉に反応が遅れてしまった。
 なにかを飲んでいる最中だったら、思わず吹き出していただろうくらいの衝撃。

 他のみんなも、あんぐりと口を開けてしまっている。

「えぇと、フィルちゃん? 今のはあくまで例えっていうか……」

「うそついたの?」

「嘘ではないけど……」

 契約とは、もっと仲良くなるための約束……まあ、嘘ではないよな。
 私とクロガネだって、使い魔契約を経てもっと仲良くなれたわけだし。

 ただ、フィルちゃんはよく意味がわかっていないんだよな。使い魔契約の。
 魔導士ではないどころか魔法も使えない、幼い子供。私たちでも使い魔契約のやり方はまだ習ってないのに、フィルちゃんがやるなんてのは無理だ。

 まあ私の場合は、その場にいたラッヘが術式をやってくれたわけだけど。


『……別に、召喚魔術ったって、複雑な方法ってわけじゃねえよ』

『んで、互いに契約を結ぶことを同意した上で、この術式……魔法陣サークルに、互いの血を垂らす』

『これより、契約の儀式を行う』


 ははぁ、それすらもなんだか懐かしい。

 本来なら、使い魔召喚をする場合は召喚主が術式を組み立てる必要がある。
 術式を組み上げた人物と相性のいいモンスターが、召喚されることになるから。

 けれど、召喚の段階は飛ばして契約するだけだった私とクロガネ。術式は形式的なものらしいし、誰がやってくれても問題はない。

「えー、私この子ともっと仲良くなりたい! もふもふと一緒がいいー!」

「け、契約しなくても仲良くはなれるから……」

「というか、フィルちゃんにとっては顔に貼りつかれて頭に乗っかられただけなのに、なにがそんなに気に入ったの」

 契約したいしたいと駄々をこねるフィルちゃんだけど、したいと言われてもさすがにどうにかできるもんでもない。
 ここはなんとか宥めて、諦めてもらわないと。

 そう考えていると、毛玉魔物がぴょん、とフィルちゃんの頭から地面に飛び降りた。
 そして「ぴぃ」と鳴きフィルちゃんのことを見上げて……

「あっ……ぃてっ」

「フィルちゃん!?」

 高くジャンプした毛玉魔物が、フィルちゃんの手に……噛みついたのだ。

 こいつ……! おとなしいから、すっかり油断してた! フィルちゃんに噛みつくなんて!
 私はとっさに、魔導の杖に手を伸ばす。けれど、それよりも早く……

「えっ……これ、は……」

 ……青白い光が、フィルちゃんと毛玉魔物を包みこんだ。
 この光、覚えがある。これは……

『……使い魔契約の、光か』
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