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第十章 魔導学園学園祭編
712話 みんないい顔してる
しおりを挟む「一日目終了~」
学園祭の一日目が終わり、ほっと一息。みんなもやりきった感があるのか、いい笑顔を浮かべている。
この状態があと四日続くのか……あんまりはしゃぎすぎて倒れないようにしないとな。
「今日だけでもなかなかの売り上げでしたね。やっぱりこの衣装が良かったのでしょうか」
「料理もおいしかったですし」
「私、接客褒められました」
みんな、それぞれ感想を言い合っている。
最初は、貴族が接客なんてという声もあったけど、やってよかった。みんないい顔してるよ!
私も、みんなでなにかやるのがすごく楽しい!
「お疲れ様、エランちゃん」
「クレアちゃん、お疲れ」
目が合ったクレアちゃんと、お互いに手を合わせる。パンッ、と小気味いい音が響いた。
「なんだかんだうまくいったようでよかったわね」
「いやあ、みんなあんなに接客がうまくなったの、クレアちゃんの指導あってこそだよ」
「そ、そんなことないわよ」
みんなもちろん接客なんてしたことがない子ばかりだったけど、それでも形になったのはクレアちゃんのおかげだ。
クレアちゃんが接客担当のリーダーとして、みんなに教えた。
クレアちゃん自身は、自分がなにか教えるなんてと遠慮気味だったけど。
「そんなことあるって。みんなちょいちょいお礼言ってたじゃん」
「う、ん……」
みんな、接客の上達が自分でもわかったのだろう。クレアちゃんにお礼を言ったりしていた。
今日も、接客がうまくいったり褒められたことを、嬉しそうにクレアちゃんに報告する場面も見た。
そのときのクレアちゃんは、まんざらでもなさそうだった。
「け、けど別に、私だけのおかげでもないでしょ。みんなが頑張ったからだし……料理は、エランちゃんが」
「まあねぇ」
料理を作るのは私が教えた。経験のある子や、この機会に料理をやってみたい子……そういった子たちに。
みんな思いのほか手際がよくて、私が教えることはすぐに覚えていった。さすがだね。
おかげで、料理も結構いい形のものを出すことが出来た。
「とはいっても、学園祭はまだ続くんだから。あんまり喜びすぎて気を抜かないようにしないと」
「わかってるわよ」
「へへ。でもま、明日は一緒に回るから楽しみだよ」
今日は一人でいろいろ回ったけど、クレアちゃんとは明日一緒に回る約束をしている。
友達と一緒にお祭り、考えただけでもワクワクするよ。
他のクラスの子だと、予定を合わせづらいからねぇ。タイミングよく会うことができればいいんだけど。
「回ると言えば……エランちゃん、今日見たことない女の子と歩いてたみたいだけど。……黒髪の」
ふと、クレアちゃんが思い出したように言う。
今日、私が一緒に歩いていた人物について。
黒髪の、と言えばそれは一人しかいない。
「ペルソナちゃんのこと、かな」
「ペルソナ……」
名前を聞いて、ふんふんとクレアちゃんはうなずいた。どうやら結構、話題になっていたみたいだ。
まあ、黒髪二人が揃って歩いてたら注目も浴びるか。
「なんか、すごい仲良さそうに歩いてたって聞いたけど……知り合い?」
「ううん、学園祭で初めて会ったんだよ」
「……エランちゃんのそういうとこ、見習ったほうがいいのかしらねぇ」
「?」
仲良さそうに歩いてたか……いやあ、なんか照れますなぁ。
「誰とでも仲良く……って言うのかしら。会ったばかりの人とすごく仲良くなるじゃない」
「そうかな」
「そうよ。私のときもグイグイきたし……ルリーのときだって……」
うーん……そんなに私グイグイしてただろうか。
確かに、仲良くなりたいなって思っていたから積極的に話しかけはしたけど。
その結果として仲良くなれてるんだから、私としては嬉しいな。
「もしかして、嫌だった?」
「……嫌だったらああして付き合ってないわよ」
私の疑問に、クレアちゃんは少し顔を赤くして答える。かわいい。
初めて会った日もその次の日からも、なんだかんだ言って付き合ってくれたもんな。街の案内とか。
この国に来てから……いや、人生で初めてできた友達だし、クレアちゃんはやっぱり特別だ。危うく関係に亀裂が入りそうなときもあったけど、今はこうして仲良くできている。
「ふふ」
「な、なによその笑みは」
「なんでもなーい」
「お前らー、お疲れさん」
二人で和やかに話していると、教室に先生が入ってきた。
サテラン先生……だけか。ウーラスト先生の姿は見えない。
みんなわいわいしていたけど、先生に視線が集まった。
「初めての学園祭にしては、なかなか盛り上がっていたじゃないか。それに、それぞれ楽しめたみたいだな」
先生もどこか満足そうだ。普段堅物そうな先生だけど、こういう行事はやっぱり楽しいんだろうか。
「明日も変わらずに、気張っていけよ」
「そういえば先生、明日はサプライズでゲストが来るって書いてますけど、誰なんです?」
クラスメイトの一人が手を上げ、聞いた。
パンフレットを見ると、確かに二日目の明日には正体はわからないけどゲストが来るようになっている。
お祭りだし、学園外から誰か呼ぶのはわからないでもないけど。
「それは当日……いや、その時間までの秘密ってやつだ」
先生は口元に指先を立て、秘密だと告げた。焦らすなぁ……まあ、楽しみがあるってのはいいことだよね。
つまり先生は知ってるんだろう。あと多分、生徒会のみんなも知ってそうだ。なんてったって生徒会だし。
……私は知らないけど。
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