史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

文字の大きさ
723 / 1,141
第十章 魔導学園学園祭編

711話 握手

しおりを挟む


 食事を終えて、少し休憩。周りでは、人も落ち着いてきたようだ。
 こうしてお客側から見てみると、クラスのみんながまた違った角度で見えるよね。

 みんな頑張ってて、よきかなよきかな。

「じゃ、そろそろ行こっか」

「はい」

 席を立ち、会計を済ませてから教室を出る。
 いやあ、我ながら考案した料理は好評だった。名前をつけたのはネクちゃんだけど、だいたいのメニューを考えたのは私だ。

 とりあえず今まで作ってきた料理を思い出して挙げたけど、好評なようでなによりだよ。
 作り方を教えるのも、新鮮で楽しかった。師匠は料理しない人だったからな。

「二人は、これからどうするの?」

「私たちは、そろそろ帰ります。充分楽しませてもらったので」

「えー、もう少しいたーい」

 これから帰宅するというペルソナちゃんに、カルくんは膨れて抗議する。まだまだ遊び足りないといった様子だ。
 そんなカルくんの頭を撫でながら……

「今日は人がたくさんいて疲れたでしょ。明日も来るんだから、今日は帰りましょう」

 と、ペルソナちゃんは言い聞かせるように優しく告げた。
 頭を撫でられ、心地よさそうな表情を浮かべるカルくんは、しかし首を振る。

「ま、まだ疲れてなんて……ふぁあ……」

「ほら」

 言い返す最中に、大きなあくびをして大きく口を開けた。はっとして口を閉じるカルくんだけど、もう遅い。
 ちょっと恥ずかしそうだ。

 そりゃ、こんな小さいのに歩きまわってたくさんの人に囲まれてれば疲れるよな。
 それに、一度迷子になってたんだ。その疲れも残っているだろう。

「ね、眠く、なんて……」

「わっ」

 目をこすり、眠くないと訴えるカルくんだけど……その場でよろよろとふらついてしまう。
 それを見たペルソナちゃんは素早く、カルくんの体を支えた。

 そして……数秒としないうちに、カルくんは目を閉じてしまう。それからまた、数秒もしないうちに寝息が聞こえてきた。
 さっきまで張り切って騒いでいた分、その反動で今疲れが一気に襲ってきたのだろう。

「まったく、言った通り」

「運ぶの手伝おうか?」

「いえ、だいじょう……あ、でしたら私の背中にカルを乗せてくれませんか?」

 私の手伝いはいらないから大丈夫だと言おうとしたペルソナちゃんだけど、少し考えるようにしてから私に背中を向け、屈んだ。
 そして、背中にカルくんを乗せてくれと言うのだ。つまり、おぶるのだ。おんぶだ。

 カルくんが起きてるなら、自力で背中にしがみついてもらえるけど……寝てしまったら、一人でその人を背中に乗せるのは難しい。

「了解。よいしょ、と」

 私は言われたとおりに、カルくんを抱き上げて……ペルソナちゃんの背中へとゆっくりと、おぶらせるように乗せる。
 小さな子であるとはいえ、眠って脱力しているからちょっと重いな。

 ま、この程度どうってことないよ私にとってはね。鍛えてますからね!

「ん。……しょ、っと」

 背中にカルくんの重みを感じて、ペルソナちゃんは一緒に腰を上げる。
 小さな体を背負った体も、決して大きいとはいえない……それでも、危なげなく立ち上がった。

 何度も、こうしてカルくんをおぶっているからだろう。慣れたものだ。

「お姉ちゃんしてるんだねぇ」

「えぇ、まあ」

 弟かぁ……いいよね小さい子。妹もいいけど、わんぱくなのはやっぱり弟だろうか。
 私は一人っ子だから、そういうの憧れちゃうよ。いやまあ、自分で言うのもなんだけど小さい子に好かれてはいるし妹みたいに思う子もいるけど。

 ……お姉ちゃんじゃなくてママって呼ばれるんだもんなぁ。

「明日も、来てくれるんだね」

「えぇ、せっかく来たんですから。今日だけだともったないですし」

 カルくんをちょうどいい位置に背負いながら、ペルソナちゃんは答える。
 そりゃ、わざわざ他の国から来たんだもんね。一日しか遊んでいかないなんてもったいない。

 そう考えると、他にも別の国から来てる人はいるんだろうし、その人たちも明日以降も来るのだろう。

「じゃ、明日も会えるかな」

「……かもしれませんね。お互い目立ちますし」

「あはは、そうだね」

 ペルソナちゃんは、自分の黒い髪を触った。

 学園祭なんて大きな行事……他の国からも大勢が来ているというのに、黒髪の人物は全然見かけない。やっぱり、珍しいのだ。
 だから、その特徴の私たちはすぐにお互いを見つけられるだろう。

 それから、私は手を差し出した。

「!」

「また会おうね、の握手!
 ……あ、難しかったかな」

 手を差し出したはいいけど、今になってペルソナちゃんはカルくんを背負っていることに意識が向いた。
 人を背負っていたら、握手なんてできない。

 だけどペルソナちゃんは、ふるふると首を振ってから片手を離し、私の手と繋いで握手をした。

「これくらいなら、問題ないですよ」

「そっか、よかった」

 学園祭というお祭りでできた、友達。友達、って言っていいのかはペルソナちゃん的にもどうなのかはわからないけど……
 とにかく私は、そう思ってる。

 ぎゅっ、と固い握手を交わしてから、私たちは笑顔で別れた。
 手を振るペルソナちゃんに背を向け、私は教室の中へと戻っていった。いやあ、楽しい時間だった!





「またね。…………ニル」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

追放したんでしょ?楽しく暮らしてるのでほっといて

だましだまし
ファンタジー
私たちの未来の王子妃を影なり日向なりと支える為に存在している。 敬愛する侯爵令嬢ディボラ様の為に切磋琢磨し、鼓舞し合い、己を磨いてきた。 決して追放に備えていた訳では無いのよ?

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。 それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない! しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。 ……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。 魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。 木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

平凡な王太子、チート令嬢を妻に迎えて乱世も楽勝です

モモ
ファンタジー
小国リューベック王国の王太子アルベルトの元に隣国にある大国ロアーヌ帝国のピルイン公令嬢アリシアとの縁談話が入る。拒めず、婚姻と言う事になったのであるが、会ってみると彼女はとても聡明であり、絶世の美女でもあった。アルベルトは彼女の力を借りつつ改革を行い、徐々にリューベックは力をつけていく。一方アリシアも女のくせにと言わず自分の提案を拒絶しないアルベルトに少しずつひかれていく。 小説家になろう様で先行公開中 https://ncode.syosetu.com/n0441ky/

わけありな教え子達が巣立ったので、一人で冒険者やってみた

名無しの夜
ファンタジー
教え子達から突然別れを切り出されたグロウは一人で冒険者として活動してみることに。移動の最中、賊に襲われている令嬢を助けてみれば、令嬢は別れたばかりの教え子にそっくりだった。一方、グロウと別れた教え子三人はとある事情から母国に帰ることに。しかし故郷では恐るべき悪魔が三人を待ち構えていた。

処理中です...