史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第十章 魔導学園学園祭編

721話 イメージする種族はもちろん

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 いろんな種族の姿に変身できるというコンセプト。それが「ラルフ」クラスの出し物だ。
 そこでルリーちゃんは、ダークエルフに変身している……という設定で、素顔を晒している。

 いくらそういうコンセプトの教室とはいえ、周りは偽物のダークエルフと見ているとはいえ……ダークエルフとしての素顔を晒すのは、簡単なことではなかったはずだ。
 それでもルリーちゃんは、変わりたいからと……一歩前に、踏み出した。

「でも、よく周りがなにも言わなかったわね」

 私が感動している横で、クレアちゃんが呟いた。
 確かに、世の中から嫌われているダークエルフに変身するなんて……それが魔法による変身だとしても、周りがいい顔をしてくれるかわからない。

 ヨルみたいに、エルフ族に理解ある人ばかりなら別だけど……
 ……って、そういう人ばかりなら正体を隠して生活する必要すらないよね。

「実は、それはどうなんだっていう声もあったんですけど……」

 困ったように笑うルリーちゃん。やっぱり、危惧したことは起こっていたようだ。
 そりゃそうだろう。クレアちゃんでさえあの態度だったんだ……ダークエルフという種族という時点で、いろいろと思う人はいる。

 それでも、最終的にはこうしてダークエルフの姿をさらすことが出来ている。

「こうしたことができたのも、ヨルさんのおかげなんです」

「ヨル?」

 ルリーちゃんは、この姿を見せることが出来たのはヨルのおかげだと言う。
 チラッとヨルを見る。

「おかげってか、俺はただエルフの姿をするからってみんなに言っただけさ」

 ふむ……つまり、ヨルがエルフの姿をするって積極的に言ったことで、みんなの気持ちを落ち着かせた……ということか。
 エルフ自体なら、師匠やウーラスト先生のおかげでみんな関心は出てきている。

 でも、やっぱりダークエルフというのはまた難しい問題だとは思うけど。

「なんというか、いつもルリーが窮屈そうにしているなとは思ってたんだ。で、この機会にうんと羽を伸ばせないか考えて……
 本当にダークエルフになるんじゃなく、ダークエルフの姿になるだけだって押し通したわけよ!」

 親指を立て、得意げに笑うヨル。
 正直、そこまで聞いてもまだ完全に納得できるほど、みんなを説得できたとは思えない。けど……

 ……もしかしてヨルって、私が思っている以上にクラスメイトからの信頼が厚いのか?
 そのヨルが、エルフやダークエルフについてみんなを説得したから、受け入れられたのか?

「ヨル……私、あんたのこと誤解してたかもしれない」

「おう、どうした急に」

「ヨルは、意味不明なことばかり言う変態ストーカー野郎だと思ってたけど……ちゃんと、クラスのみんなの信頼をもらってたんだね」

「ひどい評価だな!?」

 ヨルに関しては、初対面の頃からいいイメージがない。
 学園での様子や、魔導大会での活躍からとんでもない魔力を持っていることは知っていたけど……初対面の印象からあんまり認めようとしていなかった。

 でも、クラスメイトのためにこんなことをしてくれるなんて。ルリーちゃんのために、少しでも気晴らしをさせてあげようと。

「変態ストーカーだって評価は変わらないけど、見直したよ」

「本当に見直してるのかねぇ?」

 ともあれ、この教室の出し物は興味深いし、みんな楽しんでいる。
 クラスの人も、お客さんも。

「ねえねえ、どんな種族にもなれるんだよね!」

「一応はな。けど、翼のある種族になっても飛べないし、鱗の硬い種族になっても皮膚が固くなるわけじゃない。あくまで、姿が変わるだけだ」

 まあ飛べたとしても教室の仲じゃ無理だけど……とヨルは笑う、
 ふむ、変わるのは姿だけか。別の種族になっても、その特性までは受け継がれないと。

 それでも、面白いコンセプトだけど。

「エランは、なにかなりたい種族はあるのか?」

「私は……」

「あぁ、言わなくていいよ。なりたい種族を頭に思い浮かべれば、自然となれるから」

 ヨルの説明を受け、私は頭の中になりたい種族をイメージする。
 頭の中にイメージってことは、つまり自分が姿を知っている種族にしかなれないってことだ。だから"一応"なんだな。

 私がなってみたい種族。そんなのは、決まっている。
 ヨルと被っちゃうのが複雑だけど……ま、関係ないよね。

「えいっ」

「おぉ」

 なんとなく、声をあげて気合いを入れる。
 すると私を見ていたヨルが、声を漏らした。クレアちゃんとルリーちゃんも、じっと私を見ていた。

 これは……ちゃんとできた、のだろうか?

「ま、自分じゃどんな様子かわからないよな」

「エランさん、鏡です」

 自分じゃ自分の顔を見ることはできない。
 ルリーちゃんから手鏡を差し出され、「ありがと」とそれを受け取る。

 そして、鏡の中を覗き込む。

「おぉ!」

 鏡に映った自分の顔は、イメージした通りのものだった。
 金色の紙、緑色の瞳、そして尖った耳。間違いなく、エルフだ。

 私がイメージしたのは、もちろんエルフの姿。理由は、わざわざ言わなくてもわかるよね。

「わあ、きれいですエランさん!」

「ふふん、そうでしょうそうでしょう」

「どこからその自信が出てくるのよ」

 私にとって、エルフは特別だ。なんてったってエルフとは十年一緒に暮らしていたんだから。
 一番身近な種族と言えるのが、エルフだ。

 それにしても……自分がエルフになったら、こんな感じなのかぁ。
 これはちょっと……いや、かなりイケてるんじゃないかな?
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