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第十章 魔導学園学園祭編
727話 三択問題
しおりを挟むさてさてと。巨大迷路を進んでいくと、そこには分かれ道。そして、看板が立っていて……そこには、問題が書かれている。
この問題の答えによって、右か左のどちらに進むかを決める。
今までの問題は、正しく正解して進んできたはずだ。
だからこそ、次の問題に到達したんだし。
で、次の問題は……
『ある日どこからともなく出現するダンジョン。この世界でダンジョンを一番初めに発見した人物の名前を答えよ。
アンサンズ・プレデーション 右へ
ギリジアン・ドーマル 真ん中へ
セシルバ・キンペルトリア 左へ』
「なんか急にこれまでの問題より難易度上がったんだけど!」
「……三択、か」
問題の内容は、ダンジョンに関係するもの。
ダンジョンか……一回行ったことはあるけど、そこで"魔死者"を発見して。それ以来、行ってないな。
ダンジョンってのは、ある日突然出現すると聞いた。その仕組みは今もよくわかっていないとも。
ダンジョンが出現するのは、決まって人の多い場所か、その付近ということだ。
そう、ダンジョンについて聞いたことはある。
だけど、ダンジョンの第一発見者なんて……さっきの問題と違って、聞いたことがない。
「でも、クレアちゃんならすぐにわかるんじゃ……」
「ダンジョンが発見されたのなんて、何百年も昔のことよ。この三人の名前、聞いたことがある程度で、誰がダンジョンを発見したかなんて」
「ま、マジか」
どうやらクレアちゃんでも、この問題には手こずってしまうようだ。
クレアちゃんが知ってる名前ってことは、この三人はかなり有名な人なんだろう。
というか、ダンジョンを発見したなんて偉業を成し遂げたんだから、偽物の正解もそれなりの有名人を持ってこないと騙せないだろう。
ただ、この三人がどう有名だったのかは、今はどうでもいい。
大切なのは、誰がダンジョンを発見したかだ。
「うーん……」
「ちなみにエランちゃんは、誰がダンジョンを作ったか……」
「知らない! なんならこの三人がなにした人かも知らない! 初めて聞いた名前!」
「……でしょうね」
そもそもダンジョンが最初に発見されたのが何百年も前なら、今を生きている私たちに発見主なんてわかるはずもない。
歴史の本でも読まない限りは。
この問題を用意したナタリアちゃんたちは、昨日からのために問題となるものを探して、調べたのだろう。
しかも、このクラスにはナタリアちゃんにコロニアちゃんと、頭の良さそうな子が集まっている。元々知っていた可能性だってある。
「うーーーん……」
「……考えていても仕方ないわ。私は名前を聞いたことがあるかないか程度……エランちゃんに至っては、聞いたことすらないんだから」
「そうだね……」
考えればわかる問題ならば、考えればわかる。でもこの問題は……考えてもわからない。
これがわかる人は、よほど歴史の本を読みこんでいる人だけだろう。
私もクレアちゃんも、違う。そして、わからない以上……いつまでも悩んでいるのは、時間の無駄だ。
悩んで答えが出るならいいけど、そうじゃない。
可能性があるなら、クレアちゃんが思い出してくれることだけど……その望みも、薄いだろうし。
「当てずっぽうでも、ここで悩み続けるよりは進んだ方がいいでしょうね」
「かもね」
勘で進むのは、危険が伴う。でも、いくら考えてもwざからないのなら、勘で進むしかない。
問題は……
「この問題だけ三択なのが、腹立つわね」
そう、三択であること。
この問題が二択であれば、直感に進むとしても正解の確率は二分の一だ。
けれど、三択となったら……正解は三分の一。一つ間違えても反対が正解とわかる二択と違い、二連続で間違える可能性がある。
そうなれば、大幅な時間のロスだ。
「しょうがないよ。とにかく、進もう」
「まったく」
三択であることに苦々しい表情を浮かべつつも、クレアちゃんはうなずく。
それから、私は自分の直感を信じて……真ん中を進むことにした。
真ん中の名前は、ギリジアン・ドーマル。
全然知らない人だけど、信じてるぜ!
願いを込めて、進む。
そして、曲がり道を発見したためそれを曲がると……
「……行き止まりね」
「くぅう!」
目の前には、大きな壁が立ちふさがっていた。
先を見ることはできない……この先には行けない。行き止まりだ。
「ぐぐ……」
「壊したら失格だからね、エランちゃん」
「わかってるよぉ!」
行き場のない感情を振り払い、私たちは走ってさっきの分かれ道まで戻る。
くそう、こうなったら今度は右だ! アンサンズ・プレデーション信じてるぜ!
私たちは、道を曲がる。走る。走って、走って、その先は……
「……行き止まりね」
「ぬぉおお!」
先ほどと同じく、目の前には大きな壁が立ちふさがっていた。行き止まりだ。
私は壁をぶん殴る。もちろん壊すためではない、ストレス解消のためだ。
まさか、二連続で外れを引いてしまうとは。
「怒ってる暇ないわよ。残る道は一つ、急いで戻らないと」
「わかって……ん?」
とにかく、時間が惜しい。なんで、さっさと戻らないといけない。
そう思って、来た道を帰ろうと踵を返そうとした瞬間……ゴゴゴ、と音が、いや地鳴りが響く。
これは……地面の下からか? そんなことを考えるより先に、地鳴りの中心の地面が盛り上がる。
そして、地面の下から姿を現したのだ。
「ゴォオオ……」
「ご、ゴーレム……!」
驚愕するクレアちゃん。
そう、目の前に現れたのはゴーレムだ。
大きい……だけど、コーロランのゴーレムほどの大きさはない。
これは、コロニアちゃんか。
「なるほど、これが罠ってわけか。
……いいよ、二連続間違いの鬱憤を晴らしてやる」
ゴーレムの巨体を見上げ……私は、魔導の杖を引き抜いた。
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