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第十章 魔導学園学園祭編
746話 楽しかった二日目
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「はぁー、終わったぁ」
私は、自分の部屋に戻りいの一番にベッドにダイブする。
うぅん、いつ寝てもやっぱりふかふかだなぁ。
今日は、クラスでの手伝いはなかった。けど、代わりに明日は頑張らないとな。
結局、みんなに任せきりだったし。
「あー……でも、明日は生徒会のお仕事だったか」
さすがに、丸一日生徒会の仕事をするわけではないけど……
一日クラスを手伝うくらいでいたけど、それも難しいなぁ。
ってことは、明日は生徒会のお仕事とクラスの手伝いで、先輩たちのクラスはその次の日かな……
「聞きましたわよ。あのアルミル様と一緒にご飯を食べたんですって?」
ベッドの上でゴロゴロしている私を見て、ノマちゃんが言う。
どうやらお昼に、私がアルミルおじいちゃんとご飯を食べていたってことが噂になっているようだ。
校舎に入ってからは、変装をしていたんだったけど……あの時点では、そのまんまだったからなぁ。そのまんまアルミルおじいちゃんだったからなぁ。
「うん、おごってもらっちゃった」
「……アルミルさんとご飯どころか、おごってもらうってどういう状況ですの」
結局、あのあと……おじいちゃんを「オウガ」クラスに案内してから、おじいちゃんと話す機会はなかった。
午後の講演は予定通り行なわれ、そのあとにはすぐ帰っちゃったからだ。
なので、きちんと孫とお話しできたのか……私には、わからなかった。
……ナタリアちゃん本人から話を聞くまでは。
『聞いたよ、エランくん。おじいさまを案内してくれたんだってね。おかげで、いろいろ話が出来た。
ありがとう』
学園祭二日目終了時、私のところに来たナタリアちゃんがそう言ったのだ。
その状況は、私には見ることはできなかったけど……ナタリアちゃんの、嬉しそうな表情を見るにきっと、二人でちゃんとお話が出来たんだろう。
見たかったけど、さすがに踏み込めないよねぇ。
「んふふふ……」
「フィールドさん、帰ってきてからご機嫌ですわねぇ」
「ママ、ごきげんですわねぇ」
あー、ノマちゃんにフィルちゃんにナタリアちゃんとアルミルおじいちゃんのことは……さすがに、言えないなぁ。
クレアちゃんの前ではうっかり口を滑らせたけど、あんまり人に話していい内容じゃないだろうし。
ノマちゃんはともかく、絶対フィルちゃんは口が軽い。というか、秘密という意味をわかってくれるかがわからない。
「ほら……みんなのクラス回って、楽しんだからさ」
「なるほど。確かに、皆さんのクラスの出し物、どれも楽しめましたわ」
ノマちゃんは素直だなぁ。
膝にフィルちゃんを乗せて頭を撫でている姿は、まるでお母さんだ。本人にそんなことを言ったら、そんな年ではないと怒られそうだけど。
ノマちゃんもまた、昨日今日と他のクラスを回ったみたいだ。
「特に、カルメンタールさんのクラスの異空迷路……あれは素晴らしかったですわ」
「わかる」
ほう、ノマちゃんも異空迷路がお気に入りなのか。
やっぱりいいよねぇ、あれ。今度ナタリアちゃんに、やり方とか聞いてみようかな。
異空間と繋げられるほどの魔力、またそれを維持できる力も必要だ。
さすが、魔導のエキスパートアルミルおじいちゃんに見出された逸材だ。しかも、"魔眼"の力プラス今日までの訓練でその時より遥かに魔力は上昇している。
……クラスの出し物、といえば……
「ノマちゃん、あの人は大丈夫だったの?」
「あの人?」
「ええと……あの、高飛車なさ……」
今日、ノマちゃんの「デーモ」クラスにやってきた人だ。
なんとなく、ノマちゃんの前でその人のことを話題に出していいか悩んだところがあるけど……
やっぱり、気になる。
「もしかして、サライア・パルシュタン様のことですの?」
「そ、そうそう」
高飛車な、で伝わるあたり、ノマちゃんもそう思っていたんだろうか。
ともかく、今名前が挙がったその人だ。
ただ高飛車なだけならまだしも、その人はコーロランの婚約者だというのだ。
で、そのコーロランに片想いしているのがノマちゃん。相手が王子だろうと、婚約していようと、想いは止められないのだと言う。
結局、私たちが先に教室出ちゃったから、そのあとなにがあったのかは知らない。
「大丈夫……あぁ、もしかして、わたくしのことを気にしておられるんですの?」
「まあ、そうなるかな」
「なんの問題もありませんわ。コーロラン様に婚約者がいることはわかりきっていましたし、外部にも開放される学園祭ならばその方が訪れる可能性も、考えてなかったわけではないですから」
「そ、そうなんだ」
てっきり、婚約者登場に心境の変化があったかと思った。
いや、あったにはあったんだろう。ただ、なんか以前より燃えているように見える。
もしかして、恋敵の出現に気持ちが燃え上がった?
「あの……一応確認するんだけど、その婚約者さんに宣戦布告とかしてないよね。「コーロラン様はわたくしが奪いますわ!」みたいな」
「ほほほ、まさか。エランさんじゃあるまいし、そんなことはしませんわよ」
「あはは、そうだよね、私じゃあるまいし……うん?」
そもそも、婚約者さんは恋敵の存在すら知らないだろう。
なにかあるわけもない、か。
なにかあるんだとしたら……私の方だよね。
「……どうしよ、これ」
懐から取り出したのは、一枚の紙……それも、ご丁寧に封筒に入れられた。
それは、招待状だ。誰の?
もちろん、婚約者さんサライア・パルシュタンのものだ。
私は、あの人に招待状を渡されて……遊びに来て、と言われたんだよな。
寮の誰かの部屋に遊びに行くのとは、わけが違う。家への、招待状……か。
初めて会った人に、お家に招待されるなんて。なんだかすごく、ドキドキする。
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