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第十章 魔導学園学園祭編
764話 美人だったからね
しおりを挟むガルデさんとフェルニンさんの関係を、羨ましそうにしている二人。
三人の日常を知らないけど、冒険者だし出会いがないんだろうな。
ガルデさんとフェルニンさんは昔馴染みだって言ってた気がするし、そういった例外を除けば出会いがない。
……だけども、だ。
「ヒーダさんヒーダさん」
「ん? どしたいエランちゃん」
「春、来てるかもしれませんぜ」
「え?」
出会いという点なら、少なくともヒーダさんにはあるということを。
以前、ヒーダさんがお腹を貫かれるほどの重傷を負った時、それを助けてくれたのが名も顔もわからない魔導士。
女性という以外に手がかりはない……のだけれど。
その魔導士と、私は会ったのだ。
「ヒーダさんの怪我を治してくれた人いたじゃん、私会ったんだよ」
「……え、マジか?」
一瞬、きょとんとした表情を浮かべたヒーダさんだけど……それはすぐに、驚きのものへと変わる。
冒険者にとって怪我は日常茶飯事だろうけど、私がそれを知っているとなると限られてくる。
それに、わざわざ治療してくれたという人。
自分がお腹に穴を空けた怪我だ、忘れるはずもない。もちろん、それを治してくれた人も。
「そ、そうなのか! いつ、どこで!?」
「さっき、学園内で」
「マジかよぉ!」
そう、本当にさっきだ。午前中のことだもん。
「じゃあ、学園祭に来てたってことか! 今もいるかな!?」
「そこまではわかんないかなぁ」
「そうかぁ……改めて礼をしたかったんだが」
「改めてって、礼を言ったのは俺だけどな」
「言うな」
その魔導士と入れ違いになったかもしれない。ヒーダさんは、がしがしと頭を掻いた。
そんなヒーダさんを、ケルさんがからかう。
治療のとき、側にいたのがケルさんだ。気を失ったままのヒーダさんに代わり、お礼を言ったのだという。
「言葉のあやだろ。俺からちゃんと、あの時の礼をだなぁ」
「ヒーダさんたちが来てるってわかってたら、待ってもらってればよかったね」
「エランちゃんのせいじゃねーって」
ヒーダさん本人としては、直接お礼を言いたいだろう。
命に関わる重傷を治してもらったんだ。そのとき気絶してて、お礼どころか顔も名前も知らないままとか私なら気が気じゃない。
まあ、お礼ももちろんだけど……
「めっちゃ美人だったよ、その人」
「! ほ、ほぉ?」
私の言葉に、ヒーダさんの肩が跳ねた。
美人、って言葉に反応したね。
「そうそう、もうめーっちゃ美人。すごかったよー」
「そ、そんなにか!?」
「うん。もしかしたら、これが縁でお近づきになれたりするかもよ」
「えぇー、そ、そうかなぁー?」
多少大げさに言ってはいるものの……美人なのは事実だ。嘘は言っていない。
ちょっと影がある感じだったけど、そこがまたいいっていうか。
「で、その人の名前は!?」
「リーフェルさん」
「そっかぁ、リーフェル、かぁ」
「いや、リーフェルサンだろ」
「からかうな!」
仲いいなぁ、この二人。
ともかく、顔も名前も知らなかった相手の名前を知れたことは、大きな前進なはずだ。多分。
まあそれはそれとして、問題は一つある。
「いい名前じゃんか、素敵だ」
「リーフェルさんも、ヒーダさんのことは覚えてるみたいだったよ」
「ホントか!」
なんせ、私のお友達を治した……ってことで交流を持てたくらいだ。
リーフェルさん的には、ヒーダさんたちは私の友達に見えたようだ。
……実際、私と冒険者トリオの関係ってなんだろうな。友達、でいいのかな。
最初は、『ペチュニア』で顔を合わせるだけの、気のいいおっちゃんって感じだったけど。
「で、で、その人の連絡先とかわかんないのか!?」
「あー、ごめん。そういったことは聞いてないや」
リーフェルさんに関する問題……それは、名前以外の情報がないってことだ。
旅をしてた……みたいなことは言ってたけど、それだけ。今住んでいる場所とか、聞いていない。
そもそも、この国のどこかに住んでいるのかも、わからない。
「なぁんだ……そうなのか」
あからさまにがっかりするヒーダさん。
命の恩人へのお礼を逃したこと。そして私が美人美人言ってた美人に会えなかったこと。
これらが、ヒーダさんをがっかりさせてしまったようだ。
うーん……あんな大げさに言った私にも責任の一端があるような気がする。
「まあ、もしかしたらまだ学園祭回ってるかもしれないし……希望は捨てないほうがいいよ」
私がリーフェルさんと別れたのはあくまで、校舎を出たところでだ。
そこからどこに行ったのかまでは、わからない。
あんなことがあったから帰ったかもしれないし、逆にあんなことで帰るのは癪だからと残っているかもしれない。
「そ、そうか……そうだよな! よし、ちょっくら探してくる!」
私の言葉に元気をもらったのかは知らないが、ヒーダさんは張り切った様子で立ち上がる。
すごい切り替えだ……これがお礼と下心が半々になった結果か。
そのまま教室から出ていこうとして……ヒーダさんは、振り返った。
「そのリーフェルさんって、どんな見た目なんだ?」
特徴を知らずに探せないよな、そりゃ。
「髪は銀色で、肌は白いの。で、とっても美人。
スタイルよくて、服は……どっかのお嬢様みたいな服着てたね。ふりふりだったよ。あと帽子被ってた」
「わかった!」
……私から焚き付けておいてなんだけど、なんともふわっとした説明だなぁ。
でもヒーダさんは、私に「ありがとう」とお礼を言ってから、教室を出ていってしまった。
うーん……ちゃんと見つけられるかな。
「ま、なんとかなんだろ」
「……そうだね」
私の心を読んだかのようなケルさんの言葉に、私は小さくうなずいた。
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