史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第十章 魔導学園学園祭編

765話 なかなか恋路は難しい

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 ……結局、その日のうちにヒーダさんはリーフェルさんを見つけることはできなかった。

「見つからなかった……」

 学園祭終わりギリギリまで捜し回っていたようだけど、残念ながらお目当ての人物とは会えなかった。
 何人か似た人は見つけたらしいけど、あくまで似ているだけだ。

 そもそもぼんやりとした印象しか伝えてないので、見つけられないのも仕方ない気もする。

「ま、名前がわかっただけでも一歩前進じゃねえか。それに、向こうもお前のこと覚えてるっていうし、そのうち会えるだろ」

「……なんでそんな根拠もないことを自信満々に言えるんだよ」

「別にぃ? ガルデに続いてお前までいい思いしようってのがムカつくとか、見つからなくてザマァねえなとか、思ってないからよ」

「こいつ……」

 どうやら、ケルさん的にはガルデさんに続いてヒーダさんにも春が来そうなのがムカつくらしい。
 なので、抜け駆けされなくて喜んでいる。

 ……って言っても、本気でムカついているわけじゃなさそうだけどな。
 もし二人が会えて、そっからいい感じになったら……応援してくれそうな気はする。

「はぁー、どっかにいい女いねえかなぁ」

「ごめんなさい。ケルさんはいい人だと思うけど、私は……」

「別にエランちゃんを指したわけじゃねえよ!?」

 そんなこんなでやり取りをしながらも、やがて二人は帰っていった。
 私も仕事をしながらちょいちょい話していたけど、やっぱ知り合いと話してるのは楽しいよね。

 もちろん、話したことがない人と話すのも、それはそれで楽しいんだけど。

「お疲れ様ぁ」

 次第に人も減り……学園祭三日目が終わりを告げる。
 ふぅ、と一息ついて、私はうんと伸びをした。

 やー、今日は人は少ないときはあったとはいえ、忙しかったなぁ。でも、充実してた。
 みんなも、やっぱりいい顔してる。

「あ、ダルマス」

「ん……」

 クラスメイトがそれぞれ戻ってくる。出番だった人たちは着替えていたり、自由時間はそれぞれの時間を満喫したり。
 そんな中で、ダルマスの姿を見つけたので声をかけた。

「ね、どうだった私が作ったデザートは!」

 私が気になっていたのは、私が作っていたデザートの感想だ。
 もちろん、自分でおいしいものができたという自覚はある。それに、見た目だって。

 だけど、それが人の口に合うかは……残念ながら、わからない。

 私は料理が得意とは言え、これまで作る相手は師匠一人だけだった。私の味付けは自然と、師匠好みのものになっていたはずだ。
 デザートはまた別かもしれないけど……

 ともかく、ちゃんと口に合ったのかどうか、だ。

「あー……まあ、うまかった、ぞ」

「なによー、歯切れ悪いわねー」

 ダルマスはなぜか私の目を見ず、しかも曖昧な感想を告げる。
 ダルマスのことだ、まずかったらまずい、うまかったらうまいってはっきり言いそうなものだけど……

 なんか、しっかりしないなー。

「言っておくけど、ダルマスに初めて作ったんだからね。ちゃんと感想言ってくれないと、わかんないじゃん」

「! 俺が初めて……?」

「そ」

 私は普通の料理担当なんだし、要望がなければデザートを作ることはない。
 まあめいど喫茶の練習で、デザートの作り方をみんなに教えたりはしたけど……あくまでも練習だ。

 学園祭でデザートを披露したのは、ダルマスが初めてだ。

「……すごく、うまかった。甘さも、ちょうどかったし……俺は 、好きな味だ」

「お」

 このままごまかされるのかな……なんて思っていたけど、ダルマスはちゃんと感想を口にしてくれた。
 なぁんだ、やればできるじゃん。

 なるほど、ダルマス好みってことは、同年代の男の子はほとんど好きって解釈してもいいだろう。
 これからまた披露することがあるかもしれないし、しっかりと覚えておこう。

 ……あ、そうだ。

「でさ、キリアちゃんはどうだった?」

「……? どう、とは?」

 私が作ったデザートを持っていったキリアちゃん。私はその後の様子を見れなかったけど……
 ちゃんと、お話して距離を縮めることができたのかな。

「いやほら、なんかお話したとか……こう、なんか……あれじゃん!」

「わかるか」

 ああもう、キリアちゃんがダルマスを好きってことを、まさかダルマス本人には言えないしなぁ。
 まあダルマスじゃなくても言えないけど。

 どうしても、抽象的な言葉になってしまう。

「話と言ってもな。デザートを持ってきてくれた礼を言ったくらいだ」

「それだけ!? 他には!?」

「他って言われてもな……
 デザートを食って、そのときなぜか視線を感じたから感想でも求められてるのかと思って……うまいと言って。それくらいだ」

 当時のことを思い出しているダルマス。
 キリアちゃんは、自分からなにか話しかけたわけじゃないのか……せめて私のデザートがいい橋渡しになればと思ったんだけど。

 とはいえ、仕方ないか。

「ただ、感想はお前に直接話して欲しい……とも言われたな」

「直接?」

 ふむ? 確かに、キリアちゃんからダルマスが私のデザートをどう言っていたか、聞いてはないけど。
 直接の方が気持ちが伝わるっちゃあそうなんだけど。

 やっぱり私が隣にいたほうがよかったかなぁ。いやでも、それじゃあ根本的な解決にはならないし。
 性格な部分も、すぐ直せるわけじゃないしなぁ。

 キリアちゃんの恋路は、なかなか難しいのかもしれない。
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