史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第十章 魔導学園学園祭編

766話 恋愛相談ですの

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「恋愛相談、ですの?」

「んまあ、そんな感じ」

 その日の晩。部屋で私は、ノマちゃんにとあることを聞いていた。

「まっ。まさか、フィールドさんにもついに気になる殿方ができましたの!?」

「できましたの!?」

「いや、私の話じゃなくてね。というか、フィルちゃんはマネしないの」

 私の正面にはノマちゃんが座り、その隣にはフィルちゃんが座っている。
 意味は分かっていないんだろうけど、フィルちゃんはなぜかノリノリでノマちゃんをマネしている。

 ま、いいけど。

「なぁんだ、フィールドさんの話かと期待しましたのに」

「しましたのに」

「……いや、別に私のことだとして、そこまで期待するもんでもなくない?」

「なにをいっしゃいますか!」

 ノマちゃんはぐっと身を乗り出した。

「これまで、フィールドさんには色恋の話なんてちっともないではないですか。なので、そういった話があればどうしたって興味が湧きますわ」

 ふむ、そんなもんかね。

 私の周りでも、色恋関係って言ったらキリアちゃんくらいのもんだけど……
 もしかしたら、私が興味ないだけで、他のみんなもそういう話しているのかもしれない。

「ま、いいですわ。それで、具体的な話は?」

「あ、そうそう」

 ともかく、私がノマちゃんに恋愛相談(多分)を持ち掛けたのには、理由がある。

 私はキリアちゃんの力になってあげたいけど、私自身に恋愛の経験がないから……アドバイスとか、できない。
 だから、今絶賛恋愛中のノマちゃんに、話を聞いてもらおうと思ったのだ。

「ええとね……友達の話なんだけど」

「なるほど。よろしいですわ、友達の話と前置きするのは、そのほとんどが自分の話であることへのカモフラージュと決まっています。そんな変に隠さないでいいんですのよ」

「いや本当に友達の話!」

 コホン、と私は咳ばらいをして、気を取り直す。

「友達が、クラスの男の子を好きになったんだよ。でも、その子は消極的な性格だから、なかなか話しかけることもできなくて」

「ふむふむ」

「なんとか話せても、当たり障りのない話ですぐに終わっちゃうらしいんだ」

 友達……キリアちゃんの話。
 ただ、本人に確認を取っていない以上、この話が誰のものか……それに誰に恋をしているのか、その辺はぼんやりさせといたほうがいいだろう。

 キリアちゃんだって、自分の知らないところで自分の話を広められるのは嫌だろうし。

「その殿方に、なかなか話しかけられないし、話せても長続きしないと」

「そう。それに、その男の子はわりと人気で、周りにはよく誰かいるの」

「ほぉ。それは、話しかけにくそうですわねぇ」

 私なら、別に誰が相手でも近くに誰がいようと、構わずに話しかけるけど。
 さすがにそういうわけにもいかないのだ。

 私がただ「構わずに話しかけちゃいなよ」と言っても、それはあまり意味がなさそうだし。

「ノマちゃんは、コーロランを相手にどんなことをしてるのか、その参考にさせてもらおうと思って」

 まあ、ノマちゃんに聞いても、ノマちゃんとキリアちゃんの性格は違うのであまり参考にはならないかもしれない。
 それでも、実際に誰かに恋している女の子の意見は、参考になるはずだ。

 多分。

「そうですわね……わたくしも、できることなら話しかけたいのですがなかなかうまくはいかなくて」

「そっか……なんか、意外だな」

「まあ、コーロラン様から話しかけてもらうことも、わりとあるのですが」

「えっ、向こうから?
 ……あー……」

 ノマちゃんは結構、コーロランとの関係は良好みたいだ。
 しかも、向こうから話しかけてもらえるほどに。それはいったいどんな話をしているのか……それを聞こうとして、私は止めた。

 ノマちゃんから、ジト目を向けられたからだ。

「相変わらず、フィールドさんの話ですわ」

 そう、私は以前ノマちゃんから愚痴られた。話しかけられてもらえる頻度は増えたが、その内容が私に関するものばかりなのだと。

 どうにも、「デーモ」クラスとの試合以来……いや、ゴルさんに噛みついて以来、コーロランは私のことを気にしているらしい。
 まあ、王族で生徒会長に決闘を挑む女を見て「おもしれー女」と思ったんだろうけど。

「あれからもう半年くらい経ってるのに。そんなに?」

「それ以降も騒ぎを起こしているから、フィールドさんの話題は尽きませんのよ」

 はぁ、とため息を漏らすノマちゃん。
 なんかごめんね。

「ルームメイトのわたくしに、フィールドさんのことをいろいろ聞いてくるわけですわ。
 わたくしとしても、フィールドさんの話をするのは楽しいので構わないのですが……」

「いやあ、そうなのー?」

「褒めてないですわ」

 ……ま、私はまったく関係ないとはいえ。意中の相手と話が出来たかと思えば、それは別の女の話だったってのは。
 ちょっと、ノマちゃんに悪い気はするかもしれない。

「今のはわたくしのちょっとした愚痴ですけれど……今の話、そのお友達に効果的かもしれませんわよ」

「今のが?」

 ふふん、と得意げに鼻を鳴らしたノマちゃんは、指を一本立てる。

「話が長続きしないんですわよね。ならば、共通の話題で盛り上がればいいのですわ」

「共通の話題?」

「そう。ただあの人と話したい……と思って話しかけても、意中の相手と話せるとなったら用意していた会話内容など、全部吹っ飛んでしまいます。
 ですが、事前に決めた話題が相手との共通のものなら、そうそう忘れませんわ」

「そういうものなの?」

「好きな相手と、同じ話題を共有できる……これは、大きな力になりますわ」

 おぉ……なんというか、説得力があるなぁ。

 確かにキリアちゃんは、とのかく話しかけようって気持ちが強くて、いざ話してもなんの話をすればいいかわからないって言ってたな。
 共通の話題……これならば、相手にとっても興味のある話題を用意することで、話を長続きさせることができるかもしれない。

 ノマちゃんとコーロランの共通の話題は、私だったってことだ。

「あ、だったらさ。私のおかげでコーロランと話せているようなもんだし、あんまり愚痴らなくても……」

「それとこれとは話が別ですわ」

「ですよねー」
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