史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第十章 魔導学園学園祭編

798話 性悪ってやつ

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「ゴルさん?」

 振り向き、足を止めたゴルさんの名前を呼ぶ。どうしたんだろうか。

 なにかを考えるように足を止めていたゴルさんは、私の声に反応して私を見た。
 それから、確認するように口を開く。

「サライア……それは、サライア・パルシュタンのことか?」

「うん、そうだよ」

 さすがに本名までは覚えられなかったけど、聞いた感じそれで正解だ。

 私はうなずくと、ゴルさんは「そうか」とつぶやき腕を組む。
 また何事か考えているようだけど。

「サライアちゃんがどうかしたの?」

 ゴルさんが立ち止まる直前の会話、そして確認した名前。ゴルさんがなにを気にしているのかは、明白だ。
 だから私は、聞いた。

「……お前は。仮にも相手はそれなりに大きな家柄だぞ」

「だって本人からこう呼んでいいって言われたし」

「お前の場合本人が許可しなくても呼ぶだろうが」

 だけど私の言葉に納得はしたのか、またもうなずいた。

「いや、まさか彼女が来ていると思わなくてな……少し驚いた」

「ほぉ?」

 ゴルさんが驚いた、とは。そんなことめったに口にしないのに。
 それだけ、サライアちゃんの行動が予想外だったと?

 でも……別に不思議じゃなくない?

「コーロランの婚約者なら、婚約者の学園祭に来たいっていうのは普通じゃない?」

「……彼女が、そのような純粋な心の持ち主ならば、なにも問題はない」

 婚約者がいる学園祭に来る……恋人と一緒に回りたい。それはきっと普通のこと。私にはわからないけど。
 それは、その通りだとゴルさんもうなずく。だけど、なにか妙なことを言った。

「それ、どういう……?」

「…………」

 話すべきか悩んでいるのだろう。腕を組んだままゴルさんは、天井を見上げ黙っていた。
 こんなゴルさんを見ることができるのも、新鮮だ。

 だけどやがて、決めたのか私を見て……

「サライア・パルシュタン……彼女はな、すこぶる性格が悪い。お前にもわかりやすいように言うなら、腹黒というものだ」

 声をひそめて、言ったのだった。

 ……彼女は、腹黒だと。

「はら、ぐろ……」

 それを私は、復唱する。腹黒ってことはあれでしょ、性格が悪くて……性格が悪いってことは、腹黒ってことでしょ。

 それが、サライアちゃんの本性?
 いやいやまさかぁ。

「さっき二人で話していたけど、全然いい子だったよ?」

 教室で話した感じ、サライアちゃんは普通にいい子だった。性格が悪いだなんてそんな。

 だけどゴルさんは、ため息を漏らして首を振る。

「詳細は、おいそれ人に話すものではないから伏せるとしても……彼女とコーロランの仲が良くないのは、それが関係している」

 声をひそめたまま、ゴルさんは話す。
 以前コロニアちゃんも言っていた、コーロランと婚約者は仲が良くない。それをゴルさんも知っていたのだ。
 妹が知ってるなら、兄もそりゃ気づいてるか。

 そして、二人の仲が良くないのは腹黒サライアちゃんのせいだと……ゴルさんは続ける。

「……まさか」

 そんなバカな、とは思う。話した感じいい子だったし。

 でも、ゴルさんがそんな冗談を言うとは思えない。そもそも誰かを悪く言うことはあっても、それは事実として残っているものだ。自分の憶測や、嘘や冗談なんかで人を貶めるようなことは言わない。

「ふむ……」

 それに、コーロランの教室で会ったときの、コーロランの反応。あれはなんだか、妙に思えた。
 婚約者が側にいるのに、あまりに無反応だった。お互い。

 だけど、サライアちゃんが腹黒で、その被害にあっているのがコーロランなら……説明は、つくか。

「でも、それが本当ならさ。なんで婚約したままなの? 性格が悪いってゴルさんも知ってて、コーロラン本人が被害を受けてるなら、婚約解消ってのできるんじゃない?」

「彼女の本性を知るのはごくわずかだ。それに、彼女は自身の性格を良く見せるのがうまい……お前だって、すぐには信じられなかっただろう。というか、今だって信じきれていないだろう」

「むぅ」

 ゴルさんの言うことは、もっともだ。
 確かに、サライアちゃんが腹黒だなんて思えない。こうしてゴルさんの話を聞いた後も、ゴルさんが事実を言っているとわかっていても。

 それはさっき、サライアちゃん本人と話したのが原因だろう。
 彼女がまさか性格が悪いだなんて、そんなことは思えない。きっと周りの人も、そんな風に思ってるってことだろう。

「それに、パルシュタン家の人間を確証もなしに悪く言ったとあれば、どんなことになるか」

「王族だし別に気にしなくていいんじゃない?」

「王族だって、なにを言ってもしてもいいわけじゃない。節度はある」

 王族ってのも思ったより立場は強くないんだなぁ。
 いや、強いからこそ間違ったことをしちゃった場合、これまで積み上げてきた実績とか信頼が崩れやすいのか。多分。

 というか、ゴルさんにここまで言わせるって……サライアちゃんどんだけ性格悪いんだよ。
 ちょっと性格悪いくらいなら、かわいいもんだと思うのに。

「そっかー。コーロランとサライアちゃんが、ゴルさんとリリアーナ先輩みたいにラブラブじゃない理由はそれなんだね」

「……なにを言っているんだお前は」

 相性のいい婚約もあれば、相性の悪い婚約もある。婚約ってのも、複雑なんだなぁ。
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