史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第十章 魔導学園学園祭編

803話 おめでとうの気持ち

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 屋上に集合……それは、私だけに届いたメッセージじゃない。
 シルフィ先輩にも届いたってことは、タメリア先輩やメメメリ先輩にも届いている。だって、生徒会メンバー宛だから。

 それを確認した私は、自然とシルフィ先輩に首を向けていた。
 ふと先輩と目が合う。

「……ゴルドーラ様からの呼び出しだ。すぐに行くぞ」

「りょーかい」

 私と目が合ったことにシルフィ先輩は若干顔をしかめるものの、ゴルさんからのメッセージとなれば当然無視はできない。
 メンバーに含まれている私に声をかけ、目的地の屋上へと足を向ける。

 私たちもその後ろに、ついていく……


 ――――――


「お、もうみんな揃ってる」

「よー、来たな二人とも」

 屋上に行くと、そこにはすでにみんないた。
 呼び出した本人のゴルさん、ゴルさんと一緒に居たリリアーナ先輩。そしてタメリア先輩に、メメメリ先輩。

 三年生組は揃っている。そこに私とシルフィ先輩、そして……

「……一人多くない?」

「えへへー、どもどモー」

 そして、私の隣にはリーメイがいた。

 生徒会メンバーでもない彼女がここについてきた理由。それはまあ、言ってしまえば単純なもので……

「おぉ、なんだよシルフィ。その子と手なんかつないじゃってさ」

「! こ、これは……」

 目ざといタメリア先輩は、それにいち早く気づく。
 シルフィ先輩が、リーメイと手をつないでいることに。

 それに対して当然シルフィ先輩は慌てるものの、手をつないだままのリーメイはにこにこだ。

「リーメイは、先輩と離れたくないって言って。ここまで来ちゃいました」

「お、お前……!」

「ソー! 今日一日はシルフィはリーのなノ!」

「……!」

 リーメイがここまで着いてきた理由が、これだ。今日はリーメイとシルフィ先輩とで二人で学園祭を回っていた。
 今日一日回る約束。だからまだ一緒にいる、と。

 リーメイ的には約束に律儀なだけなのか、それともシルフィ先輩を気に入っているのかはわからないけど。

「へー、ほー、ふーん」

 タメリア先輩は実に楽しそうだ。メメメリ先輩も、まるで孫を見るみたいな表情をしている。
 どちらもリーメイがこの場にいることはだめとは言わないみたいだ。

 そしてそれは、ゴルさんも……

「も、申し訳ありませんゴルドーラ様。もしリーメイがこの場にいないほうがいいと言うなら……」

「いや、構わない」

 それは同じく、リーメイがここにいても問題はないみたいだ。

「そもそもお前たちをここに呼んだのは、そう大層な理由ではない。先ほどの放送、見てくれていただろう?」

「そりゃもう。あんなすげーの見せられるとはね」

「ゴルっちの愛の告白、しかとこの目に焼き付けたぞ」

「ふ、二人とも!」

 恥ずかしそうにしているリリアーナ先輩だけど、まんざらでもなさそうだ。
 あんな婚姻宣言……放送越しとは言え、全国民に向けた公開告白も同じだ。

 二人が婚約者関係にあることはみんな知っていることだけど、それでも実際にあんな風になっちゃったら……恥ずかしいのと嬉しいのでいっぱいなのだろう。

「おめでと、リリアーナ先輩」

「! エランちゃん……」

 だから私は、リリアーナ先輩に向けておめでとうの気持ちを伝えた。
 私にはわからない気持ちだけど、大好きな人と結ばれる……それはきっと、幸せなことで。祝われるべきことなんだから。

「……ありがとう」

 するとリリアーナ先輩は、少し驚いた表情になったあと、柔らかく笑った。
 いつも見せる笑顔も素敵だけど……今の笑顔は、似ているようで全然違う。

 今まで見たどれよりも、きれいだった。

「お前たちには、すでにリリアーナとの婚姻の件は伝えた。だが、いつみなに発表するかは、言っていなかったな」

「あぁ。まさか、学園祭の最終日にとは……言ってくれれば俺らもいろいろ協力できたのにさー」

「お前は顔に出てしまうから無理じゃろう」

「なにおう」

「……せっかくなら、お前たちにも新鮮な気持ちで聞いてもらおうと思ってな」

 ゴルさんなりのサプライズ……ってところか。意外と茶目っ気あるんだよなぁ。

 ……ついさっきまで、あんな大々的な放送をして。
 屋上から見下ろしたみんなの反応は、ここからでもわかるくらいに盛り上がっている。

「みんな喜んでくれてるんだね、二人の結婚を」

「……あぁ、のようだな。ありがたいことだ」

 相変わらず表情は大きく変わらないけど……ゴルさんも、嬉しそうだな。

「それにしても、ゴルと結婚したらリリアーナは妃……王妃様かぁ。もうこれまでみたいに気安くできないなぁ」

「そんなにかしこまらないでも大丈夫ですよ。私は私ですから」

「そういうわけにもいかんじゃろう」

 喜ばしいことだけど、変わってしまうものもある。

 ゴルさんが国王に、リリアーナ先輩がその妻になれば、もうこれもでのように気安く話しかけるなんてことはできなくなるんだ。
 ただ卒業するだけとは違う……相手は、王族のてっぺんだ。

 それは少しだけ、寂しいかもしれない。

「そういえばゴルドーラ先輩は、この発表はご自分とリリアーナ先輩だけで決めていたのですか?」

「いや、俺個人だけのことならともかく、国の大事に関わることだ。一部の城の者には、ある程度前もって伝えてある」

 ……まあ、本当に誰にも話さず結婚発表なんてしちゃったら、そりゃもう大慌てだもんね。
 ジャスミルおじいちゃんとか偉い立場の人は知っていたんだろう。

 多分、アルミルおじいちゃんも。学園祭に来てもまったくそんな素振り見せていなかったし、うまく秘密にしていたもんだ。
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