833 / 1,141
第十一章 使い魔召喚編
820話 使い魔召喚に必要なもの
しおりを挟む使い魔召喚に必要なものは、知識とか魔力とかそういうのは除いといて、主にモンスターを呼び出すための魔法陣と、モンスターに付ける名前だ。
魔法陣を描き、展開して……そこから、モンスターを召喚する。
まあ私は、そのやり方はやってないから聞いた程度にしかわからない。その場にいた黒竜と契約したんだから。
ちなみに、魔法陣は形式だけ、とラッヘは言っていた。その証拠に、フィルちゃんともふもふの契約時には魔法陣なんて描かれていなかった。
まあ、魔法陣が召喚するためのものだとしたら、その場契約の場合は魔法陣はいあないのかもしれないけどね。
「名前……ですか」
先生の説明を受けて、誰かが言った。
「そうだ。名前を決め、呼ぶことで互いの絆とし、契約を成功させる」
私も、クロガネと契約するときは契約の直前に、名前を決めたものだ。
『ワレガ仕エシ人間、エラン・フィールド。ワレハ……』
『私と共に歩んでくれる黒竜、クロガネ。私は……』
『『あなた(汝)を我がパートナーとして、契約を結ぶことをここに誓う』』
「懐かしいなぁ」
「こらフィールド、呆けない」
おっといけないいけない。当時のことを思い出して懐かしくなっていたよ。
魔大陸での一番印象深い出来事は、間違いなくクロガネとの出会い、契約だろうな。
「名前は、とても重要なものだ。自分の名前、魔術の名前、それらは"言霊"に通ずるものがある。お前たちは直接見たな。
契約に限らず、名前というものはあらゆる場面で重要なものだ」
確かに、言われてみれば……ウーラスト先生は、言葉に魔力を乗せて"言霊"ってのを使っていた。
言葉には力が宿る……つまりはそういうことだ。名前が、一番わかりやすい。
名前は単に、呼びやすいって理由だけじゃないんだな。
今だって、クロガネをクロガネって名付けなかったら「黒竜、黒竜」って呼んでいただろうし。
……味気ないねぇ。
「なるほど、ならしっかり決めないとですね」
「とはいえ、モンスターを召喚し、契約するまで時間をかける者はそうはいない。
召喚から契約までの時間が決まっているわけではないし、そういう決まり事があるわけではないが……そのモンスターの第一印象で、名前をつける者がほとんどだ」
名前を決めるにも、変な名前は決められない。
だから考えたいけど、ほとんどの人はそこにあまり時間をかけないみたいだ。暗黙のルール、ってやつかな。
まあ、自分の使い魔になるモンスターに変な名前をつける人なんて、そうそういないだろうけど。
『言っとくが、名を与えるってのは与えられる側……モンスターにとっては重要な分かれ道だ。気に入らねぇ名前を付けようもんなら、反感を買って体内から爆発するかもな』
……笑うながらラッヘはこう言っていたけど、本当かなぁ。ラッヘってば冗談か本当かわからないときがあるんだよ。
「先生、名前が気に入られなかったら爆発することがあるんですか?」
「いや、そんなのは聞いたことがないが……どこ情報だそれは」
やっぱり冗談だったんじゃんか! ちくしょう!
「ま、私からあれこれ言っておいてなんだが……そう固くなることはない。不思議とな、そのモンスターを見た瞬間……ぱっと名前が浮かんでくるんだ」
脅かすようなことを言ってしまったが、と……みんなを安心させるためか、先生はおそらく自分の体験談を語る。
そのときの表情が、なんだか嬉しそうだった。
ぱっと浮かんでくる、かぁ……そういえば私も、その時になったら自然と浮かんできたんだよな。『クロガネ』って名前が。
「魔法陣、名前……言ってしまえば、使い魔召喚に必要なのはこれだけと言えるな。それに、名前はその場で決めることになるから、事前に準備しておくのは魔法陣だな」
すると先生は魔導の杖を取り出し、先端を光らせた。
「魔法陣を描くの自体は、そう難しくない。だが、半端な知識のまま描けば思わぬ事故に繋がるからな。魔法陣について、召喚当日までにしっかりと学んでおくことだ」
それは、いよいよ使い魔召喚の授業が近づいてきているということでもある。
私は当日は見物だけだけど、なんだかドキドキしてきた。
みんなも、真剣に聞いているな。筋肉男だけは相変わらず手鏡見てるけど。なんだお前、それしかやることないのか。
「使い魔については、みんなも間近で目にする機会があっただろう。ゴルドーラ生徒会長のサラマンドラ……それに魔導大会では、各選手が使い魔を召喚し戦っていた。
使い魔とは共に生活し、多対を共にし、まさに自分の分身とも言える存在だ」
みんなにとって、たくさんの魔導士がいた魔導大会はともかくゴルさんのサラマンドラを見る機会があるなんて思わなかっただろうな。あんな入学間近に。
それもこれも、私が決闘を申し込んだからではあるが。
「なにより、クラスメイトに使い魔保持者がいるのは大きい。他のクラスにもない利点だ。存分に生かすといい」
……先生、私に任せようとしてない? 最低限説明だけしてあとは私に任せようとしてない?
私、わかんないからね? そもそも契約のやり方違うんだから、わかんないからね?
「それで、フィールド、それにフィル。ものは相談だが、お前たちの使い魔を今一度みんなに見せてくれないか」
それから先生は、私とフィルちゃんにそう言ったのだ。
10
あなたにおすすめの小説
異世界でトラック運送屋を始めました! ◆お手紙ひとつからベヒーモスまで、なんでもどこにでも安全に運びます! 多分!◆
八神 凪
ファンタジー
日野 玖虎(ひの ひさとら)は長距離トラック運転手で生計を立てる26歳。
そんな彼の学生時代は荒れており、父の居ない家庭でテンプレのように母親に苦労ばかりかけていたことがあった。
しかし母親が心労と働きづめで倒れてからは真面目になり、高校に通いながらバイトをして家計を助けると誓う。
高校を卒業後は母に償いをするため、自分に出来ることと言えば族時代にならした運転くらいだと長距離トラック運転手として仕事に励む。
確実かつ時間通りに荷物を届け、ミスをしない奇跡の配達員として異名を馳せるようになり、かつての荒れていた玖虎はもうどこにも居なかった。
だがある日、彼が夜の町を走っていると若者が飛び出してきたのだ。
まずいと思いブレーキを踏むが間に合わず、トラックは若者を跳ね飛ばす。
――はずだったが、気づけば見知らぬ森に囲まれた場所に、居た。
先ほどまで住宅街を走っていたはずなのにと困惑する中、備え付けのカーナビが光り出して画面にはとてつもない美人が映し出される。
そして女性は信じられないことを口にする。
ここはあなたの居た世界ではない、と――
かくして、異世界への扉を叩く羽目になった玖虎は気を取り直して異世界で生きていくことを決意。
そして今日も彼はトラックのアクセルを踏むのだった。
転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする
初
ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。
リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。
これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。
異世界でカイゼン
soue kitakaze
ファンタジー
作者:北風 荘右衛(きたかぜ そうえ)
この物語は、よくある「異世界転生」ものです。
ただ
・転生時にチート能力はもらえません
・魔物退治用アイテムももらえません
・そもそも魔物退治はしません
・農業もしません
・でも魔法が当たり前にある世界で、魔物も魔王もいます
そこで主人公はなにをするのか。
改善手法を使った問題解決です。
主人公は現世にて「問題解決のエキスパート」であり、QC手法、IE手法、品質工学、ワークデザイン法、発想法など、問題解決技術に習熟しており、また優れた発想力を持つ人間です。ただそれを正統に評価されていないという鬱屈が溜まっていました。
そんな彼が飛ばされた異世界で、己の才覚ひとつで異世界を渡って行く。そういうお話をギャグを中心に描きます。簡単に言えば。
「人の死なない邪道ファンタジーな、異世界でカイゼンをするギャグ物語」
ということになります。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
濡れ衣を着せられ、パーティーを追放されたおっさん、実は最強スキルの持ち主でした。復讐なんてしません。田舎でのんびりスローライフ。
さら
ファンタジー
長年パーティーを支えてきた中年冒険者ガルドは、討伐失敗の責任と横領の濡れ衣を着せられ、仲間から一方的に追放される。弁明も復讐も選ばず、彼が向かったのは人里離れた辺境の小さな村だった。
荒れた空き家を借り、畑を耕し、村人を手伝いながら始めた静かな生活。しかしガルドは、自覚のないまま最強クラスの力を持っていた。魔物の動きを抑え、村の環境そのものを安定させるその存在は、次第に村にとって欠かせないものとなっていく。
一方、彼を追放した元パーティーは崩壊の道を辿り、真実も勝手に明るみに出ていく。だがガルドは振り返らない。求めるのは名誉でもざまぁでもなく、ただ穏やかな日々だけ。
これは、最強でありながら争わず、静かに居場所を見つけたおっさんの、のんびりスローライフ譚。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~
ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。
休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。
啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。
異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。
これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。
リーマンショックで社会の底辺に落ちたオレが、国王に転生した異世界で、経済の知識を活かして富国強兵する、冒険コメディ
のらねこま(駒田 朗)
ファンタジー
リーマンショックで会社が倒産し、コンビニのバイトでなんとか今まで生きながらえてきた俺。いつものように眠りについた俺が目覚めた場所は異世界だった。俺は中世時代の若き国王アルフレッドとして目が覚めたのだ。ここは斜陽国家のアルカナ王国。産業は衰退し、国家財政は火の車。国外では敵対国家による侵略の危機にさらされ、国内では政権転覆を企む貴族から命を狙われる。
目覚めてすぐに俺の目の前に現れたのは、金髪美少女の妹姫キャサリン。天使のような姿に反して、実はとんでもなく騒がしいS属性の妹だった。やがて脳筋女戦士のレイラ、エルフ、すけべなドワーフも登場。そんな連中とバカ騒ぎしつつも、俺は魔法を習得し、内政を立て直し、徐々に無双国家への道を突き進むのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる