史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第十一章 使い魔召喚編

841話 思いもよらない再会

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「それで、結局こっちでは伝説上の生き物が三体も召喚されたんだよ」

「それは……なんとも、すごいね。いや、すごいの一言で済ませるには惜しいのはわかってるんだけど……」

「それ以外の言葉が、見つかりませんわね」

 お昼の時間、賑わう学食。私とクレアちゃんが学食に向かうと、そこにはタイミングよくナタリアちゃんとノマちゃんがいた。
 二人とも、すでに噂として耳に入っていたみたいだ。いや、二人だけではない。

 今回の使い魔召喚は、過去にも類を見ないほどに珍しいもの尽くしだった、と。
 二人に早速詰められたので、軽く話したわけだ。

「こっちも、なかなか面白いことは起こったけど……」

「そちらには負けますわね。なにより、人間まで召喚されたと言うではないですか」

 人の口にはなんとやら。別に黙っているように言われていたわけではないが、言われていたとしてもきっと話はすぐに広まっていただろう。
 それほどのことが、起こったのだから。

「そっちも、誰か伝説上の生き物とか、人間を召喚したってことはないの?」

「ないね」

「ありませんわね」

「……それにしても、食堂かなりにぎわってない?」

 クレアちゃんの言うように、確かにいつもよりも人が多い気がする。

 食堂を利用する人はまちまちだけど、そう言う日もあるとは思う。
 だけど、その理由はおそらく……

「みんな、使い魔のことを話したくて仕方ないんだろうね」

 ナタリアちゃんが言う。他のクラス、学年の人と話せる場と言うのは貴重だ。
 だからこういう場で、みんな交流を深めていく。

 だけど、この食堂内に使い魔の姿はない。使い魔は基本、食堂内で召喚することはない。
 禁止されているわけではないけど、これはまあマナーだね。食堂だけのことじゃない。

「で、で、二人の使い魔は!?」

「まあまあ、食べながらゆっくり話すから……」

「そうそう! 落ち着いて落ち着いて!」

「あはは、そうだ…………ね?」

 食い気味になる私を落ち着かせるナタリアちゃん。そしてもう一つの声に、私はとりあえず落ち着く。
 そして、改めて食堂のメニューを……と考えようとした時、聞こえた声の違和感に気付く。

 今の、ノマちゃんじゃないよな。クレアちゃんでもない。ていうか、なんか聞いたことがある。
 私はそっと、声の聞こえた方向……下を向いて……

「……」

「……」

 ……彼と、目が合った。

「パピリィイイイイイイイイ!!?」

「エランちゃああああああああ!!」

「えっ、なになに!?」

 いきなり大声を上げた私と、声の主……小さなうさぎの姿に、近くにいたクレアちゃんは肩を震わせる。驚かせてしまった。

「って、ダメじゃないかパピリ。勝手に出てきちゃ」

「ごめんね!」

 しゃがみ、ナタリアちゃんは彼の頭を撫でる。
 白いふわふわの体毛に包まれた、耳の長い生き物。赤い瞳がくりくりしていて、非常に愛くるしいそのモンスターは……二足歩行で、喋っている。

 ……しゃべっている。

「え、この子がナタリアちゃんの? かわいい」

 その愛くるしい姿に、クレアちゃんもまたしゃがみその姿を目に収める。
 その気持ちはわかる。私もそうしたい気持ちはあったし。まあ、あの時それどころじゃないことばかりだったけど。

 それから少しして、クレアちゃんはパチパチと目を閉じ開きする。

「……え、ちょっと待って。今この子……この、モンスター……しゃべらなかった?」

「あれ……エランくん、今パピリの名前呼ばなかった? なんで知ってるの?」

「……え? ですわ」

 みんなの視線があちこと回り……最終的に私に、集まる。
 その視線を受け、私は……なにから説明し、なにから説明してもらうべきか考える。

 とりあえず、とりあえずだ……

「……パピリ、なんだよね?」

「そうだよ! ひさしぶりエランちゃん!」

 ……私の疑問に素直に元気に答えるモンスター……間違いない、パピリだ。
 もしかして姿形や声がそっっっくりな同姓同名かとも思ったけど、このテンションとなにより私のことを知っているんだ。

 同一人物だ……いや、人物じゃないけど。

「えぇと……前、話したじゃん? 魔大陸から帰ってくる時、しゃべるモンスターの村に立ち寄ったって。その時友達になったのが……」

「パピリだよ!」

 ピッ、と元気よく手を上げるパピリ。
 元気なのはいいことだけど、この子は自分のことで私が頭を悩ませていることに気づいているのだろうか。

「ピィー……」

 ……わかってなさそうだな。

「あぁ、確かそんな話を……じゃあ、この子が話せるのは……
 てっきり、ナタリアちゃんの使い魔だからそういう特別なことができるのかと」

「確かに、それも考えましたけど……召喚されたときから、その子はしゃべってましたわよ」

「さすがにボクでもそこまではできないと思うけどな」

 ナタリアちゃんの魔力なら、しゃべれないモンスターもしゃべることができるようになるんじゃないか。そんなことを思ったけど、召喚されたときにはもうしゃべっていた。
 契約したときではなく、召喚したときだ。

 それは、そのモンスターが元々しゃべれていたってことだ。

「じゃあ、エランくんがパピリの名前を知ってたのも……」

「うん。というか、名前はパピリでオッケーだったんだ」

「まあ、召喚して逐一『パピリだよ!』って主張されたら、他に名前を付けるわけにもいかないよ」

 苦笑いを浮かべるナタリアちゃん。その光景はすぐに想像できる。

 まさか、あのとき出会ったモンスターとこんなところで再会するとは……いやまったく、思いもしなかったよ。
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