史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

文字の大きさ
855 / 1,141
第十一章 使い魔召喚編

842話 しゃべるうさぎ?

しおりを挟む


「ええと……じゃあ、フィールドさんが以前に行ったしゃべるモンスターたちの住む村。そこに住んでいたのが、この子本人だと」

「そうなるねぇ」

 注文した食事を手に私たちは席に座る。
 話題の中心に居るのは、ナタリアちゃんが召喚し彼女の使い魔となった……パピリのことだ。

 これには私もナタリアちゃんも驚いた。でも、なんで当の張本人が何食わぬ顔で座っているんだ。

「エランちゃんひさしぶり! うれしい!」

「……こういう子だもんなぁ」

 どうやらナタリアちゃんたちのところでも、それなりに騒ぎはあったらしい。
 そのうちの一つが、このパピリの存在だ。

 使い魔となったモンスターとは術者だけが会話することが出来る。けど、それだって実際に喋るわけじゃない。脳内で会話するんだ。
 なのに、このパピリは召喚された次の瞬間には、もうしゃべっていた。

 当然だ。もともとしゃべっていたのだから。

「いやあ、この子がしゃべったとき、エランくんの話を思い出したんだよ。
 でもまさか、話に出てきた本人だとは思わなかったな」

 そういえば、パピリの名前までは言ってなかったもんなぁ。私の話を思い出してくれたのはさすがナタリアちゃんちゃん。
 ま、しゃべるモンスターなんて印象的なこと、一つ覚えてればなかなか忘れはしないか。

 ナタリアちゃんの膝の上にちょこんと乗ったパピリは、ナタリアちゃんのご飯をむしゃむしゃ食べている。

「……いいの? なんかめちゃくちゃ食べられてるわよ」

「あはは。ま、こうなるだろうと思って多めに注文しておいたから」

「魔法陣の中に戻せばいいのに」

「なんか勝手に出てきてしまうみたいですわよ」

 なるほど、だからさっきナタリアちゃんはダメじゃないかって言ってたのか。

 ……言葉を話す上に、勝手に魔法陣から出てくるモンスター。
 なんていう厄介物件。

「ピ! おいしい!」

「お、しゃべるうさぎだ。…………しゃべるうさぎ?」

 突然通りかかったヨルが、パピリを見て足を止めた。

「ピピ!」

「……うさぎ?」

「ピィ!」

「……うさぎってそう鳴くんだっけ」

「ちょっとおにぃ、立ち止まらないで」

 一般通過ヨルは、背中をマヒルちゃんに押されて歩いていく。
 気持ちは、まあわからんでもない。

 その後ろ姿を、ナタリアちゃんとノマちゃんは見つめる。

「もしかして、彼女が……」

「例の……ですの?」

 うなずき、そうだと教える。
 魔法陣から勝手に出てくるパピリと、そもそも魔法陣に入れないマヒルちゃん。食堂の新しい存在に、みんなの視線が集まっている。

「って、なんかいろいろあって混乱してるんだけど……パピリ、ナカヨシ村のみんなは元気?」

「元気だよ!」

 ナカヨシ村、とはパピリのいた村の名前だ。
 なんと安直な名前なんだと思ったけど、住んでいるのがパピリみたいな子ばかりなので……なんとなく納得はできた。

 一度しか行ってないし、また行けるかわからない場所。
 だから、もしかしたらパピリとももう会えないのかな、なんて思ったりもしたんだけど。

「えぇと……じゃあその、どうなってんの。その村から、いきなりこの子が消えたってことでしょ?」

 頭を抱えるクレアちゃん。確かに、パピリが召喚されたってことはそういうことだ。
 パピリに限った話じゃない。これが召喚魔術である以上、どんなモンスターでもどこからか召喚されている。

 だから、元いた場所では、まるでそのモンスターがいきなりいなくなったみたいに見えるはずだ。

「ごはん食べてたら、いきなり身体が光っておどろいた!」

「食事中に召喚されたってことか……じゃあみんな、向こうじゃ大騒ぎかもね」

「そうでもないよ! さっき戻ってみたら、みんな普通だった!」

「……」

 ケロッと話すもんだから、話のペースが掴めない。
 戻ったって、なに。戻れるの? あの距離を? クロガネでもそんなすぐは無理だよ?

 黙ってナタリアちゃんを見た。

「どうやら、魔法陣でこっちとパピリの故郷を行き来できるみたいなんだ」

「……そうなんだ」

 魔法陣の中って、なんか使い魔が住みやすい空間が広がっているのだと思っていたけど……そうでもないんだ。
 いやまあ、その場所から召喚したのなら、その場所に繋がっているのは理屈はわかるんだけど。

 ……ともかく、パピリはみんなと離れ離れにはならずに済んだってことか。

「あ、じゃあその魔法陣通れば、私もナカヨシ村に行けるのかな」

「使い魔専用の魔法陣だから、人間は通れないよ」

「ですよねー」

 いつの間にか私の料理にも手を伸ばしていたパピリの手をパシンと叩き、私も食事を開始する。

 パピリが魔法陣から勝手に出てくることを知らない人は、普通に食堂で使い魔を召喚しているナタリアちゃんにどんな目を向けるだろう。
 まあ、なんか言ってきたらこっちが言い返してやるけどね。

「それにしても、モンスターともこうして普通に意思疎通できるものなのねぇ」

 クレアちゃんが、ふかぶかと言う。
 モンスターと言葉を交わせる。それは、今まであり得なかったことだ。

 使い魔は例外として、モンスターと言葉なんて交わせるはずもない。だから、こうして話せるモンスターの存在と言うのは、あっという間にその存在が広がるだろう。
 ある意味、伝説上の生き物よりもさらに珍しい。

 その珍しいモンスターの住む村があるなんて知ったら、みんなどんな顔するかな。

「ねえ、それおいしい? 人間の食べ物ってモンスターも好きなのかしら」

「のどかわいた!」

「……やっぱり意思疎通できてるか不安なところね」

 話の流れを読まない……それが、パピリだ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

追放したんでしょ?楽しく暮らしてるのでほっといて

だましだまし
ファンタジー
私たちの未来の王子妃を影なり日向なりと支える為に存在している。 敬愛する侯爵令嬢ディボラ様の為に切磋琢磨し、鼓舞し合い、己を磨いてきた。 決して追放に備えていた訳では無いのよ?

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

濡れ衣を着せられ、パーティーを追放されたおっさん、実は最強スキルの持ち主でした。復讐なんてしません。田舎でのんびりスローライフ。

さら
ファンタジー
長年パーティーを支えてきた中年冒険者ガルドは、討伐失敗の責任と横領の濡れ衣を着せられ、仲間から一方的に追放される。弁明も復讐も選ばず、彼が向かったのは人里離れた辺境の小さな村だった。 荒れた空き家を借り、畑を耕し、村人を手伝いながら始めた静かな生活。しかしガルドは、自覚のないまま最強クラスの力を持っていた。魔物の動きを抑え、村の環境そのものを安定させるその存在は、次第に村にとって欠かせないものとなっていく。 一方、彼を追放した元パーティーは崩壊の道を辿り、真実も勝手に明るみに出ていく。だがガルドは振り返らない。求めるのは名誉でもざまぁでもなく、ただ穏やかな日々だけ。 これは、最強でありながら争わず、静かに居場所を見つけたおっさんの、のんびりスローライフ譚。

「宮廷魔術師の娘の癖に無能すぎる」と婚約破棄され親には出来損ないと言われたが、厄介払いと嫁に出された家はいいところだった

今川幸乃
ファンタジー
魔術の名門オールストン公爵家に生まれたレイラは、武門の名門と呼ばれたオーガスト公爵家の跡取りブランドと婚約させられた。 しかしレイラは魔法をうまく使うことも出来ず、ブランドに一方的に婚約破棄されてしまう。 それを聞いた宮廷魔術師の父はブランドではなくレイラに「出来損ないめ」と激怒し、まるで厄介払いのようにレイノルズ侯爵家という微妙な家に嫁に出されてしまう。夫のロルスは魔術には何の興味もなく、最初は仲も微妙だった。 一方ブランドはベラという魔法がうまい令嬢と婚約し、やはり婚約破棄して良かったと思うのだった。 しかしレイラが魔法を全然使えないのはオールストン家で毎日飲まされていた魔力増加薬が体質に合わず、魔力が暴走してしまうせいだった。 加えて毎日毎晩ずっと勉強や訓練をさせられて常に体調が悪かったことも原因だった。 レイノルズ家でのんびり過ごしていたレイラはやがて自分の真の力に気づいていく。

【完結】大魔術師は庶民の味方です2

枇杷水月
ファンタジー
元侯爵令嬢は薬師となり、疫病から民を守った。 『救国の乙女』と持て囃されるが、本人はただ薬師としての職務を全うしただけだと、称賛を受け入れようとはしなかった。 結婚祝いにと、国王陛下から贈られた旅行を利用して、薬師ミュリエルと恋人のフィンは、双方の家族をバカンスに招待し、婚約式を計画。 顔合わせも無事に遂行し、結婚を許された2人は幸せの絶頂にいた。 しかし、幸せな2人を妬むかのように暗雲が漂う。襲いかかる魔の手から家族を守るため、2人は戦いに挑む。

処理中です...