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第十一章 使い魔召喚編
843話 ドヤ顔猫
しおりを挟むまさか、しゃべるモンスターが召喚されるなんて思わなかったな。
って、パピリたちと以前に会っていなければ、もっと驚いていたんだろうけどね。
「それにしても、しゃべるモンスターにカーバンクル……みなさん、すごいモンスターを召喚したんですのねぇ」
優雅にお茶を飲みながら、ノマちゃんが言う。
ナタリアちゃんもルリーちゃんも照れたように笑っているけれど、クレアちゃんはぶすっとした表情を浮かべている。
「私は珍しくもなんともないけどね……」
「もー、まだそんなこと言ってー」
変に拗ねちゃって。まったくクレアちゃんったら。
クレアちゃんの頭をなでなでしながら、私はノマちゃんを見た。
「そういえばノマちゃんは、どんなモンスターを召喚したの?」
「わたくし? わたくしはたいしたことはありませんのよ」
きょとんとしながらも、ノマちゃんは杖を取り出し軽く振る。
座ったまま杖を振る……たったそれだけのことが、こうも様になっているなんて。
そうして、浮かび上がった魔法陣から飛び出してきた影は、ノマちゃんの膝の上へと飛び乗った。
「にゃぉ」
「わ、かわいい」
紫色の毛並みを持つ、小さなモンスター。ぎょろっと大きな青い瞳が特徴的な、どこか気品を感じさせる。
これは……
「妖精猫ですわ」
「へぇ、聞いたことあるね」
紹介されたのは、どこにでもいそうでありながらどこにもはいないだろうなと思える妖精猫。
なんかドヤ顔して座っているけど、人慣れしているのかおどおどした様子はない。
気品を感じるって点では、なるほどノマちゃんとそっくりだ。
「確か、人語をしゃべり二本足で歩く……とか説明されてたような気がするけど」
「えぇ。ですのでしゃべるとしたらこちらかなと思ったのですが、実際に会ってみないとわからないものですわ」
そうか、この子も言葉を話せる……という種族なのか。
でも、どうやらそれはお話の中だけのことのようだ。
こうして見ていると、突然しゃべりだしてもおかしくない雰囲気は出ている気がするけど。噂は、あくまで噂ってことだね。
「これは、部屋の中が賑やかになりそうだ」
自分の部屋の中では、もちろん使い魔と遊ぶ人もいるだろう。
今までは、フィルちゃんがもふもふと遊んでいたけど……そこに、きっとこの子も加わる。
まぁー、なかなか賑やかな毎夜になりそうだね。
「どんな使い魔でも、みんな全力で愛することに変わりはないよ。クレアくんだってそうだろう?」
「……まあ、そうだけど」
パピリの頭を撫でながら、ナタリアちゃんは言う。
そのパピリは気持ちよさそうに目を細めて「ピィー」と鳴いている。本当にマイペースだ。
……ナタリアちゃんとパピリの似ている所ってどこだろう。このペアが一番謎かもしれない。
「せっかくだし、パピリもクロガネに会わせてあげたいけど……」
とはいえ、さすがにここじゃあ無理だしなぁ。
また時間を作って、だな。
「おいしい!」
「……こうして普通にモンスターがしゃべってるの見ると、なんかすごく変な気持ちになるわね」
「食べる!?」
「いらない」
クレアちゃんの言わんとすることはわかる。
普段と違ったことが、別の場所では常識だったりする。それって、なんかすごいよね。
もし他に、ナカヨシ村からパピリ以外のモンスターを召喚した子がいれば、他にもしゃべるモンスターの話が出ているだろう。
そうなっていないってことは、パピリ以外の子はいないってことだ。
「ここのごはん、おいしい!」
「そう、それはよかったよ」
パピリに、なんでしゃべれるのって聞いても……逆に変な顔をされた。
パピリにとってはしゃべるのが普通だし、私がそう聞いたことが不思議だったんだ。
いやあ、世界は広いよねえ。
「それにしても、フィールドさんも大変ですわねぇ」
「私?」
「一年生唯一の生徒会員として、報告することがいっぱいあるのでしょう?」
ノマちゃんの言う通りだ。私は一年生で一人だけの生徒会のメンバー……報告することはたっくさんある。
もちろん、先生たちの口からも軽く報告は言っているだろう。
だけど、私がいるのだから詳細は私に任せるはずだ。
「でもまあ、私が居なかった方のクラスは私にはわかりようがないんだし、全クラス伝えることを思えば楽だよ……多分」
「急に自信がなくなったわね」
「まあ、こんなにいろいろ起こって、なにをちゃんと伝えられるのかって疑問はあるしね」
「エランちゃん! がんばれ!」
「絶対意味わかってなくて応援してるよこのうさぎ!」
とりあえず、生徒一人一人が召喚したモンスター、契約した使い魔はちゃんと資料に残され、生徒会他に回されるらしい。
ただ、書面上じゃわからないことを、私に聞かれるだろうなってだけで。
なにを聞かれるのか……検討する項目がありすぎて、逆にわからない。
「ま、とりあえずがんばるよ……」
「普通に考えれば、これだけの使い魔がいっぺんに召喚されるなんてむしろ喜ばれそうなものだけどね」
「普通ならね」
さすがに前例のないことが多すぎる。伝説上の生き物複数に人間にしゃべるモンスター召喚って。盛りだくさんすぎるだろ!
そして、こういうのってだいたい……後々面倒なことが待っているんだよ。私は詳しいんだ。
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