史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

文字の大きさ
896 / 1,141
第十一章 使い魔召喚編

883話 ちょっと怖いよ!

しおりを挟む


 ラッへとの手合わせが終わり、私は寮への道を歩いていた。

「いやぁー、久しぶりにあんなに身体動かしたかもなー」

『あの娘、記憶は失ってもその身に宿った技術までは失われていないようだな』

 クロガネも、魔大陸で以前のラッへの活躍は見ている。その動きはクロガネから見ても、衰えてはいないということだ。
 魔力も、動きも。彼女がこれまでに得た技術すべてが、記憶と共に失われたはずがない。

 もっとも、記憶がなくなったってことは魔力の扱い方や身体の動かし方も忘れてしまったたということ。それをこうまで使いこなしているのは、ラッへのセンスによるものだろう。

「そういえば、ラッへの使い魔どんな子なのか聞きそびれちゃったな」

 手合わせは、魔術も使い魔も禁止ということで行なった。だからラッへの使い魔も見る機会はなかったけど。
 どんな使い魔なのか聞いておけばよかったな。

 ま、いずれ見る機会もあるでしょう。

『ま、どんな使い魔であっても我には敵わんだろうがな』

「あっははは、クロガネも言うねぇ」

『む、そうか。契約者の口調が移ったかもしれん』

「!?」

 手合わせを終えて、ラッへは先に帰っていった。一緒に帰ろうとも言ったんだけど、もう少し一人で残るみたいだ。
 私とやったことで、なにか感じ取るものがあったみたいだ。それを忘れないうちに反復させたいのだろう。

 そういう熱心なところ、多分記憶失う前からなんだろうなぁ。

「そういえばクロガネ、私が髪白くなってたときってどんな感じなの?」

 使い魔契約で繋がっているクロガネ。クロガネなら、私が変になっている時の状態のことをわかっているはずだ。
 魔導大会のときはまだクロガネいなかったしね。契約してしばらく経った今なら。

 それを聞いて、頭の中のクロガネはうーむと考える様子だ。

『……とても、気分が良さそうだったな』

「それはわかる」

 テンションがハイになっていたんだから、気分が良くなってるってのは私にもわかる。
 繋がっているクロガネだからこそわかることはないだろうか。

『そうだな……正直、よくわからんのだ。使い魔契約とはそもそもお互いの精神が安定している時に、繋がりも安定する。
 だが、あの時の契約者は……精神的に不安定で、繋がりも通常時とは異なっていた』

 精神が不安定……って、まるでお酒に酔ってしまっているみたいな感じだ。

 まあ、そういうことならクロガネもよくわかんないか。一つ言えるのは、精神は不安定なのに私の意識ははっきりしてることかな。
 あの時自分がなにをしたか、よく覚えてるもん。

 それでも、その時は自分が自分でないような気もしている。テンションがハイになって、自分でも思わぬことをやってしまうって言うか。

「魔力がめちゃくちゃ放出する……ってことは、ラッへみたいに時間制限ありきなんだろうけど」

 まあ、自分の魔力が他の子より結構あるってのは、私も薄々気づいてるけど。
 なら持続時間も長いんだろう。あの状態になる詳細もよくわかんないけど、元に戻る方法もわかんないもんなぁ。

 これまでの経験から言うと、多分強い魔力を受けた時にあの状態になるっぽいけど……

「フィールドさぁーん!」

「ん?」

 ブツブツと考え事をしている私の耳に、陽気な声が届いた。これは誰のものか、考えなくったってわかる。
 振り返ると、そこには彼女がいた。

「ノマちゃん!」

「今帰りですの? では一緒に行きましょう」

 手を振る彼女が、私の隣へと並ぶ。
 ノマちゃんが近くにいると、一気に場が明るくなる感じがするよな。

「この時間まで、なにをしてましたの?」

「ラッへとちょっと手合わせをねー」

「まあ、ラッへさんと? それはうらやましいですわね」

 うらやましい、とはそれはどちらに対してだろう。
 私と手合わせをしたことがうらやましいのか、それともラッへと手合わせをしたことがうらやましいのか。

 ……クラスで試合した時に思ったけど、ノマちゃんってわりと好戦的な部分あるよなぁ。

「それで、先ほど難しいお顔をされていたみたいですけど」

「あー」

 あちゃー、さっきの見られてたのか。ノマちゃん目がいいなぁ。

 まあ、別にあのことは隠しているわけじゃないし。というか魔導大会のときに大多数の人に見られてるし。
 私は軽く、ラッへとの手合わせであったことを説明する。

「……っていうことがあってさ」

「そうでしたの。また髪が白く」

 この状態に対して、みんなは特になにも言ってこない。それどころじゃなかった状態だったし、あれから時間も経ってるから忘れてるのかもしれないけど。

「それは気になりますわよね」

「そうそう。髪の色が変わるなんて……まあ、私には自分の髪見えないんだけど。
 魔力がバチバチになるのだって……悪いことではないのか」

 あれ、あの状態って私にとって困ったことではないのでは?
 ちょっとハイテンションになるくらいで、他に変なことがあるわけでもないし。

「でも原因がわからないというのは不気味ですわよ。あの時のフィールドさん、若干我を忘れているようにも見えましたし」

「……そうなの?」

「もしかしたら、変身を繰り返していたらそのうち自分が自分でなくなっちゃう、なんてことがあるかもしれませんわよ」

 ふふふー、とからかうように言うノマちゃん。
 ちょっと信憑性がある怖いこと言うのやめてよ!
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界でトラック運送屋を始めました! ◆お手紙ひとつからベヒーモスまで、なんでもどこにでも安全に運びます! 多分!◆

八神 凪
ファンタジー
   日野 玖虎(ひの ひさとら)は長距離トラック運転手で生計を立てる26歳。    そんな彼の学生時代は荒れており、父の居ない家庭でテンプレのように母親に苦労ばかりかけていたことがあった。  しかし母親が心労と働きづめで倒れてからは真面目になり、高校に通いながらバイトをして家計を助けると誓う。  高校を卒業後は母に償いをするため、自分に出来ることと言えば族時代にならした運転くらいだと長距離トラック運転手として仕事に励む。    確実かつ時間通りに荷物を届け、ミスをしない奇跡の配達員として異名を馳せるようになり、かつての荒れていた玖虎はもうどこにも居なかった。  だがある日、彼が夜の町を走っていると若者が飛び出してきたのだ。  まずいと思いブレーキを踏むが間に合わず、トラックは若者を跳ね飛ばす。  ――はずだったが、気づけば見知らぬ森に囲まれた場所に、居た。  先ほどまで住宅街を走っていたはずなのにと困惑する中、備え付けのカーナビが光り出して画面にはとてつもない美人が映し出される。    そして女性は信じられないことを口にする。  ここはあなたの居た世界ではない、と――  かくして、異世界への扉を叩く羽目になった玖虎は気を取り直して異世界で生きていくことを決意。  そして今日も彼はトラックのアクセルを踏むのだった。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

異世界でカイゼン

soue kitakaze
ファンタジー
作者:北風 荘右衛(きたかぜ そうえ)  この物語は、よくある「異世界転生」ものです。  ただ ・転生時にチート能力はもらえません ・魔物退治用アイテムももらえません ・そもそも魔物退治はしません ・農業もしません ・でも魔法が当たり前にある世界で、魔物も魔王もいます  そこで主人公はなにをするのか。  改善手法を使った問題解決です。  主人公は現世にて「問題解決のエキスパート」であり、QC手法、IE手法、品質工学、ワークデザイン法、発想法など、問題解決技術に習熟しており、また優れた発想力を持つ人間です。ただそれを正統に評価されていないという鬱屈が溜まっていました。  そんな彼が飛ばされた異世界で、己の才覚ひとつで異世界を渡って行く。そういうお話をギャグを中心に描きます。簡単に言えば。 「人の死なない邪道ファンタジーな、異世界でカイゼンをするギャグ物語」 ということになります。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

濡れ衣を着せられ、パーティーを追放されたおっさん、実は最強スキルの持ち主でした。復讐なんてしません。田舎でのんびりスローライフ。

さら
ファンタジー
長年パーティーを支えてきた中年冒険者ガルドは、討伐失敗の責任と横領の濡れ衣を着せられ、仲間から一方的に追放される。弁明も復讐も選ばず、彼が向かったのは人里離れた辺境の小さな村だった。 荒れた空き家を借り、畑を耕し、村人を手伝いながら始めた静かな生活。しかしガルドは、自覚のないまま最強クラスの力を持っていた。魔物の動きを抑え、村の環境そのものを安定させるその存在は、次第に村にとって欠かせないものとなっていく。 一方、彼を追放した元パーティーは崩壊の道を辿り、真実も勝手に明るみに出ていく。だがガルドは振り返らない。求めるのは名誉でもざまぁでもなく、ただ穏やかな日々だけ。 これは、最強でありながら争わず、静かに居場所を見つけたおっさんの、のんびりスローライフ譚。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~

ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。 休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。 啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。 異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。 これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。

リーマンショックで社会の底辺に落ちたオレが、国王に転生した異世界で、経済の知識を活かして富国強兵する、冒険コメディ

のらねこま(駒田 朗)
ファンタジー
 リーマンショックで会社が倒産し、コンビニのバイトでなんとか今まで生きながらえてきた俺。いつものように眠りについた俺が目覚めた場所は異世界だった。俺は中世時代の若き国王アルフレッドとして目が覚めたのだ。ここは斜陽国家のアルカナ王国。産業は衰退し、国家財政は火の車。国外では敵対国家による侵略の危機にさらされ、国内では政権転覆を企む貴族から命を狙われる。  目覚めてすぐに俺の目の前に現れたのは、金髪美少女の妹姫キャサリン。天使のような姿に反して、実はとんでもなく騒がしいS属性の妹だった。やがて脳筋女戦士のレイラ、エルフ、すけべなドワーフも登場。そんな連中とバカ騒ぎしつつも、俺は魔法を習得し、内政を立て直し、徐々に無双国家への道を突き進むのだった。

処理中です...