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第十一章 使い魔召喚編
883話 ちょっと怖いよ!
しおりを挟むラッへとの手合わせが終わり、私は寮への道を歩いていた。
「いやぁー、久しぶりにあんなに身体動かしたかもなー」
『あの娘、記憶は失ってもその身に宿った技術までは失われていないようだな』
クロガネも、魔大陸で以前のラッへの活躍は見ている。その動きはクロガネから見ても、衰えてはいないということだ。
魔力も、動きも。彼女がこれまでに得た技術すべてが、記憶と共に失われたはずがない。
もっとも、記憶がなくなったってことは魔力の扱い方や身体の動かし方も忘れてしまったたということ。それをこうまで使いこなしているのは、ラッへのセンスによるものだろう。
「そういえば、ラッへの使い魔どんな子なのか聞きそびれちゃったな」
手合わせは、魔術も使い魔も禁止ということで行なった。だからラッへの使い魔も見る機会はなかったけど。
どんな使い魔なのか聞いておけばよかったな。
ま、いずれ見る機会もあるでしょう。
『ま、どんな使い魔であっても我には敵わんだろうがな』
「あっははは、クロガネも言うねぇ」
『む、そうか。契約者の口調が移ったかもしれん』
「!?」
手合わせを終えて、ラッへは先に帰っていった。一緒に帰ろうとも言ったんだけど、もう少し一人で残るみたいだ。
私とやったことで、なにか感じ取るものがあったみたいだ。それを忘れないうちに反復させたいのだろう。
そういう熱心なところ、多分記憶失う前からなんだろうなぁ。
「そういえばクロガネ、私が髪白くなってたときってどんな感じなの?」
使い魔契約で繋がっているクロガネ。クロガネなら、私が変になっている時の状態のことをわかっているはずだ。
魔導大会のときはまだクロガネいなかったしね。契約してしばらく経った今なら。
それを聞いて、頭の中のクロガネはうーむと考える様子だ。
『……とても、気分が良さそうだったな』
「それはわかる」
テンションがハイになっていたんだから、気分が良くなってるってのは私にもわかる。
繋がっているクロガネだからこそわかることはないだろうか。
『そうだな……正直、よくわからんのだ。使い魔契約とはそもそもお互いの精神が安定している時に、繋がりも安定する。
だが、あの時の契約者は……精神的に不安定で、繋がりも通常時とは異なっていた』
精神が不安定……って、まるでお酒に酔ってしまっているみたいな感じだ。
まあ、そういうことならクロガネもよくわかんないか。一つ言えるのは、精神は不安定なのに私の意識ははっきりしてることかな。
あの時自分がなにをしたか、よく覚えてるもん。
それでも、その時は自分が自分でないような気もしている。テンションがハイになって、自分でも思わぬことをやってしまうって言うか。
「魔力がめちゃくちゃ放出する……ってことは、ラッへみたいに時間制限ありきなんだろうけど」
まあ、自分の魔力が他の子より結構あるってのは、私も薄々気づいてるけど。
なら持続時間も長いんだろう。あの状態になる詳細もよくわかんないけど、元に戻る方法もわかんないもんなぁ。
これまでの経験から言うと、多分強い魔力を受けた時にあの状態になるっぽいけど……
「フィールドさぁーん!」
「ん?」
ブツブツと考え事をしている私の耳に、陽気な声が届いた。これは誰のものか、考えなくったってわかる。
振り返ると、そこには彼女がいた。
「ノマちゃん!」
「今帰りですの? では一緒に行きましょう」
手を振る彼女が、私の隣へと並ぶ。
ノマちゃんが近くにいると、一気に場が明るくなる感じがするよな。
「この時間まで、なにをしてましたの?」
「ラッへとちょっと手合わせをねー」
「まあ、ラッへさんと? それはうらやましいですわね」
うらやましい、とはそれはどちらに対してだろう。
私と手合わせをしたことがうらやましいのか、それともラッへと手合わせをしたことがうらやましいのか。
……クラスで試合した時に思ったけど、ノマちゃんってわりと好戦的な部分あるよなぁ。
「それで、先ほど難しいお顔をされていたみたいですけど」
「あー」
あちゃー、さっきの見られてたのか。ノマちゃん目がいいなぁ。
まあ、別にあのことは隠しているわけじゃないし。というか魔導大会のときに大多数の人に見られてるし。
私は軽く、ラッへとの手合わせであったことを説明する。
「……っていうことがあってさ」
「そうでしたの。また髪が白く」
この状態に対して、みんなは特になにも言ってこない。それどころじゃなかった状態だったし、あれから時間も経ってるから忘れてるのかもしれないけど。
「それは気になりますわよね」
「そうそう。髪の色が変わるなんて……まあ、私には自分の髪見えないんだけど。
魔力がバチバチになるのだって……悪いことではないのか」
あれ、あの状態って私にとって困ったことではないのでは?
ちょっとハイテンションになるくらいで、他に変なことがあるわけでもないし。
「でも原因がわからないというのは不気味ですわよ。あの時のフィールドさん、若干我を忘れているようにも見えましたし」
「……そうなの?」
「もしかしたら、変身を繰り返していたらそのうち自分が自分でなくなっちゃう、なんてことがあるかもしれませんわよ」
ふふふー、とからかうように言うノマちゃん。
ちょっと信憑性がある怖いこと言うのやめてよ!
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