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第十一章 使い魔召喚編
882話 聞き逃せないんだけど!?
しおりを挟む私も、私がどうなっているのか知りたい気持ちはある。だって自分のことだし。
でも、調べてみても特にわかったことはないしなぁ。私の身の回り、わかんないことだらけじゃね?
まあ、ほっといても別に命に関わることでもないんだから、いっか。
「私のことより、ラッヘのことも気になるよ。あの人数増やすやつどうやったのさ」
話はラッへのことに。
限界魔力により魔力を限界まで引き上げた状態。身体強化の上位互換と言っても良いそれは、ラッへの数を五人まで増やした。
分身や残像ならわかるけど、力は半減してないしちゃんと実体もある。自分とまったく同じ力で、数を増やすなんて。
「あれは、別に特別なことじゃないよ。ただ気合いで、『てやーっ』ってやったらできたの」
「てやー……」
なんのこともないように答えるなぁ。自分がどれだけすごいことをしたのかわかっていないのか。
それとも、限界魔力を使っていたから簡単にできるもんなのか? あの魔法がすごいってことなのか?
あれは分身魔法に近く、けれど力は半減しない。そういう考えでいいみたいだ。
「はーっ、試したいことはちゃんと試せたけど、まだまだだなぁ」
壁にもたれ、ラッへは言う。
記憶を失う前から使えていた限界魔力。元々それを使う才能はあったけど、記憶を失っても魔力センスは健在だ。
ただ、使えたには違いないけどまだまだ自分の満足いく使い方はできていないみたいだ。
「いいじゃない、手合わせって本来そういうものでもあるし。私でよければ、いつでも付き合うよ」
「本当!?」
「まあ、時間があるときならね」
私だって、ラッへみたいに魔力の高い子と手合わせするのは自分のためになる。
それに、魔術や使い魔禁止、というのもいい。なんでもありも悪くないけど、縛りプレイだからこそ試されるものもある。
「まあ、ラッへのクラスにはノマちゃんやコーロラン、それにカゲくんもいるし、私以外ともガンガン手合わせしてみたらいいんじゃないかな」
私を頼ってくれるのは嬉しいけど、せっかく同じクラスにもいろんな子がいるんだ。私ばっかりとやるのは損だろう。
コーロランとは試合をした中だから実力は知っているし、ノマちゃんとは毎日顔を合わす。というか住んでいる。実力は知っている。
二人とも、ラッへの手合わせ相手には充分な相手だと思う。
「それに、ノマちゃん自身力が上がってるみたいだし……」
そう……"魔死事件"の一件で唯一の生き残りとなったノマちゃんはレジーに"魔人"と呼ばれる存在になった。
マーチさんが調べた結果、魔人ってのは人が人のまま魔の力を手に入れた存在ということ。純粋な人間でも、魔族でもないということ。人と魔獣の姿両方に変化してしまう可能性があること……それらがわかった。
現状、ノマちゃんの身体に異変はない。以前と違うところがあると言えば、以前より大幅に魔力が上がったこと。
「ノマちゃん……いつもですわですわって言ってて賑やかだよねー」
……楽しそうに笑っているラッへの様子を見るだけで、ノマちゃんが普段教室でどんな過ごし方をしているのかわかるようだ。
本人は、自分が何者かもわからない存在になって不安ではないのか。気になるけど……私からそれを切り出すのも、ちょっと難しいんだよな。
だって、話題が話題だけに突っ込みにくいじゃん。
「でも、いい人だよね。なんにもわからない私に、よく声をかけてくれるんだ」
「! そうなの?」
どうやら、教室で一番よく声をかけてくれるのはノマちゃんらしい。それはラッへがエルフで珍しいから……という好奇心じゃない。
ノマちゃんはそういう偏見は持たない子だと思うから。
記憶喪失だから、というのはもちろんあるだろう。でもそれ以上に、転校してきた形になったラッへを放ってはおけないのだろう。あれで世話焼きな面もあるからな、ノマちゃんは。
「それによく、エランちゃんの話で盛り上がったりもする」
「私の?」
あー……まあ、私とラッへの顔がそっくりなことを疑問に持たない人はほとんどいないだろうし、それも当然か。とはいえ、ほとんどの人は他人の空似で深く追求しない。
私自身、ラッへと顔が似ている理由はわからないんだ。
でも、ノマちゃん的には……顔が似ているのが気になるってより、私と顔が似てるから私と共通の話題で話しやすいのかもしれない。
実際、ラッへも私を知ってるわけだし。ノマちゃんとしてはルームメイトで友達として。ラッへとしては魔大陸を旅した友達として。
「いっつも面白いことやって、一緒にいて飽きないんだって!」
「それは褒められてるのかなぁ?」
なんとなく、想像がつくけど。ただ、私としては私がノマちゃんにそういった印象を抱いてるんだけどな。
「そうそう。エランちゃんファンクラブにも誘われちゃってるんだよね」
「へーそうなん……え、ちょっと待って。ファンクラブ?」
聞き逃せない言葉が出てきた。いや、言葉自体は知っていたんだけど。
私にファンクラブがあるとかないとか、そういう話を聞いたことはある。あるけど、それ以上気にしたことはなかった。
でも、いよいよ身近なものになっている気がする。というか、その口振り……まるでノマちゃんがファンクラブに入っているみたいではないか。
「いやー、ホント面白いよねこの学園」
「いや、ファンクラブについての詳細を教えてほしいんだけど!?」
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