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第十一章 使い魔召喚編
884話 非公認って怖いね
しおりを挟むああなった結果なにがどうなる可能性がある、ってわからないうちは、あの状態には迂闊にならない方がいい。
……って言うのも、ああなる理由がわかってれば決意できることではあるんだけどねぇ。
残念ながら、なーんもわからない。
「ところでノマちゃんに聞きたいことがあるんだけども」
「あら、なんですの?」
女子寮の、自分たちの部屋に着く。フィルちゃんはまだ帰って来てないみたいだな。
部屋の中に入りつつ、私は聞く。
「ラッヘから、私のファンクラブがどうとか聞いたんだけど」
「まあ!」
ノマちゃんも靴を脱ぎつつ部屋に上がっていく。そこで、パンと手を叩いた。
「そうなんですのよ。ラッヘさんにも、ぜひフィールドさんのファンクラブに入っていただきたいなと」
「……ファンクラブがあるって話は私も知ってたんだけどさ。え、それにノマちゃんも入ってるの?」
「もちろんですわ」
もちろんなのか……いや、ノマちゃんがどんなところに入ろうと、それは個人の自由だとは思うけどさ。
それが、私のファンクラブで……しかもそこに所属しラッヘを誘っているともなれば話は別だ。
「その……え、そもそもなんなのそのファンクラブ」
「フィールドさんについていろいろなことを話し合ったり応援したりグッズを作ったりしているのですわ」
「へぇ、そうなん……!?」
私のファンクラブ。その活動内容……それは、なんとも聞き逃せないものだった。
話をするとか応援とかはまだいいけど、グッズ!? グッズってなに!?
しかも、それを当然のように話すのだからどこから驚けばいいのかわからない。
「はぁ、わたくしにとっても有意義な時間ですわ」
「そう……まあ、ノマちゃんが幸せそうならいいんだけどさ」
ベッドに座り、ノマちゃんは嬉しそうに足をプラプラさせている。
私にとってのお茶会がそうであるように、ノマちゃんにとって私のファンクラブとやらでみんなと話すのが楽しいのなら……個人の自由だし、ね。
「というか、そのファンクラブって誰が作ったのさ」
これまでにも、ファンクラブの存在は聞いて来たけどそれを誰が立ち上げたのかは聞いたことがない。
私の、ってことなら当然入学してからだし……全校生徒に割った詩乃名前が広まったのと言えば、それはやっぱりゴルさんとの決闘だろう。
だからといって、まさかゴルさんが立てたわけでもあるまいし。仮にゴルさんだとしても、彼なら本人に事前に許可を取りそうだ。
非公認のファンクラブってわけだもんな。
「設立者、ですか。そういえば、誰が設立したのかはわかりませんわねぇ」
うーん、と顎に指を当てて考えるノマちゃんは、予想もしなかったことを口にする。
まさか、自分が所属しているファンクラブを誰が立てたのか知らないというのだ。
マジかよ……ここでノマちゃんが設立者を秘密にする理由もないし、そのつもりなら平静すぎる。
「誰が立てたかわからないのか……なにそれ怖い」
自分非公認のファンクラブを、誰か知らない人が立てている。普通に怖い。
「それ、ノマちゃん以外に何人入ってるの?」
「さあ……同級生だけでなく、先輩方も結構いますからね」
「!?」
しかも、たくさんの人がいるらしい。私の知らない人はもちろん、もしかしたら知っている人も。怖い。
……もしかして私の噂が尾ひれはひれで広まっているのって……そのファンクラブも関係していたりして。私のことを知っている人が多いのって、そのファンクラブが原因か?
「安心してください。フィールドさんの良さを下げるような活動はしていませんので」
「そ、そう」
もしかしたらそのせいで余計に話が大きくなっているんじゃないだろうか。まあ、その人たちも悪気あってのことではないんだろうけど。
「フィールドさんと同じ部屋で暮らしているということで、いろいろな方から声をかけられて。わたくし、お友達も多くなりましたの」
「そうなんて。……ねえ、そのファンクラブってさ……私も参加することってできるの?」
「え?」
ここまで友達がのめり込んでいるとなると、ちょっと興味も湧いてくるな。
自分のファンクラブなんて、勝手にやってくれって感じではあったんだけどね。
するとノマちゃんは、むむむ……と考えていく。
「ダメかな?」
「ダメかどうかはわかりませんが……わたくしの一存で答えるのも、よろしくないと思いまして」
ノマちゃんの考えていることも、もっともだ。
ある人のファンクラブということで盛り上がっている所に、とつっぜんそのある人が来たらそりゃみんな驚いちゃうよな。
まあ、この件に関しては……特に悪いことがあるわけでもないし、今のままでいいのかな。
さすがに悪評が出てきたりしたら、なんとかしなきゃだけど。非公認のファンクラブなら、私がなんか言えば聞くでしょう。
「今度、聞いてみますわ」
「うん。ところで、ラッヘを誘ったって言ってたけど……」
「えぇ。少し考えたいとのことでしたわ」
よかったよ、ラッヘが即決するような子じゃなくて。
ただ……記憶を取り戻したラッヘが、私のファンクラブに入っている……なんて知ったらどんな反応をするのかは、気になるところでもあるね。
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