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第十一章 使い魔召喚編
889話 もっと仲良くしたい
しおりを挟む「こ、コーロランがサライアちゃんを好きじゃない?」
「えぇ」
サライアちゃんの言葉に、私は驚いた。まさかそんな直接的な感じに言ってくるとは思わなかったからだ。
困りましたわ……といった感じに、ほっぺに手を当てている。
なんだろう、いちいち仕草がえっちなんだよなこの子。
「でも、好きじゃないなんて……」
「あぁ、正確には苦手に思われている、でしょうか。私を嫌っているのは、どうやら身内のお二人のようで」
身内のお二人って……もしかしなくても、コロニアちゃんとゴルさんだろう。
二人が、サライアちゃんを嫌っている?
コロニアちゃんは、コーロランと婚約者の仲が良くない。ゴルさんは、サライアちゃんに渋い顔を向けていた。これは私が見聞きした確かな情報だけど。
「それ、なにかの間違いなんじゃない?」
「いえ、そんなことはありませんわ」
うぅむ……あの二人に限って、そんなことはないと思うけどなぁ。
そりゃ、人間だし嫌いな人の一人や二人いるだろう。でもコーロランの兄妹が、揃って弟兄の婚約者を嫌うなんてことがあるだろうか。
サライアちゃんが人間的にどうしようもない人なら、そういうこともあるかもしれないけど。
私に無茶苦茶な転校を勧めてきたりはしたけど、まあそんなのはちょっとしたジョークで片付けられる。人間性を疑うほどじゃない。
もしあの二人が本当にサライアちゃんを嫌っているなら、私にはわからない……身内にしかわからない問題点があるのだろうか。
「私、もっと二人と仲良くしたいんです。だって、婚約者の御兄妹ですもの」
「そりゃあ、ね」
婚約者、つまりいずれは結婚するってことだ。まあ、婚約って要は親同士が決めた結婚ってことらしいから、いずれは結婚、となるかはわからないけど。
ともかく、そんな相手の身内とギクシャクシたままなのが嫌なのは、まあわかる。
私にはそういう相手どころか好きな相手すらいないけど、やっぱり相手の身内と仲良くはしたいもんね。
「そこで、エランさんにお願いがありまして」
「私に? お願い?」
「えぇ。なんでもエランさんは、あのゴルドーラ様に決闘を申し込み、後に生徒会に入ったと聞きます。それも、ゴルドーラ様に誘われる形で」
「あー……まあ、そういう約束だったし?」
学園の外にまで広まっている話だ、別に隠す必要はない……
……いや、学園の外にまでこの話も広まってんの? 私、王族に喧嘩売ったあぶねー奴みたいになってるんじゃないのか。
まあ、それは一旦置いておこう。ゴルさんに誘われて生徒会に入ったことまで知られてんのか。
それとも、それも含めてサライアちゃんだから知り得た情報なのだろうか。ま、どっちでもいいけど。
「約束?」
「決闘で、互いに賭けた結果……というやつ」
決闘では、互いに相手に要求するものを賭ける。私はゴルさんのコーロランへの謝罪、ゴルさんは私を自分のものにする、だ。
結果としてゴルさんの勝ちになり、私はゴルさんのものになった……という形で、生徒会に入った。
ゴルさんが私を生徒会に入れたのは、決闘の結果ありきってことだよ。
「ですが、並の者なら生徒会の職務には耐えられないと聞きます。それをエランさんは、今日までやり遂げてきた」
「ゴルさん……先輩たちが優秀だから、私に仕事が回ってこないだけだよ」
「そうでしょうか」
そうそう、みんな優秀なんだから。私のやる仕事なんて簡単なわけだよ。
「……ともかく、生徒会でゴルドーラ様と懇意にしているのは事実ですね」
「あくまで先輩後輩としてね?」
「当然です、なにを確認しているのかしら」
いや、だって言い方一つで危ない感じになっちゃうじゃん。リリアーナ先輩に聞かれたらと思うとゾッとするじゃん。
まあ、二人はみんなの前で正式に結婚することを宣言したんだから、別の女の子と仲が良いからって嫉妬はしないと思うけど。
「それに、ゴルドーラ様との決闘の準備にあたり、コロニア様と特訓を行ったとか。以降、お二人は仲良しに」
「そこまで知ってるのはおかしくない!? 学園内のプライベートなことだよ!?」
「たまたまですわ。ゴルドーラ様との決闘に向けて、コロニア様のゴーレムを相手に鍛錬を積んだのですよね」
「怖い怖い怖い!」
コロニアちゃんとの特訓なんて、私とコロニアちゃんとコーロランしか知らないよ! 他に見ていた子はいるかも知れないけど、そこからサライアちゃんに伝わるなんて考えにくいし。
本当にこの子、どこから情報を得ているんだよ。
「そういうわけで、コーロラン様の身内と仲良しなエランさんにお願いしたいのです」
「そういうわけで!?」
まあ、私がゴルさんやコロニアちゃんと仲良しなのは事実だし。そのため私に白羽の矢を立ててくれたのなら、応えたいなとは思う。
サライアちゃんてば、もしかしてこれが目的だったんだろうか。私に家の招待状を渡して、私からここに来るように誘導して……話を切り出す。
普通に話してくれてもいい気もするけど、まあ、話題が話題だけに人目につくところじゃ話せない……か。
それに、王族とこんな接点のある人もなかなかいないしね。……自分で言うのもなんだけど。
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