史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第十一章 使い魔召喚編

891話 迷っちゃった

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 サライアちゃんと友達になったおかげだろうか。これからサライアちゃんの家には、招待状なしでも行けるようになった。
 いちいち招待状を貰ってから……って言うのも手間だからね。同じ学園ならまだしも、通っている所も違うんだし。

 サライアちゃんにセーリンちゃん。学園の外で仲良くなった二人。まあセーリンちゃんの場合は、私を敵視してるけど。
 私をっていうか、あれがお年頃ってやつなのかな。

「……と、そんなことを考えていたわけだけど……」

 今私は、家の廊下を歩いていた。目的地はトイレだ。
 私はお手洗いのため、部屋を出てから廊下を歩いているのだ。場所を聞いたので、すぐにたどり着けると思ったんだけど。

 いや、違うんだよ。別に迷ったなんてわけじゃないんだよ? そもそも家の中で迷うなんて意味わかんないし、いくら家が広いとは言ったって……ねぇ?

「……迷った」

 だめだ、どれだけ取り繕っても迷ってしまったという事実は変わらない。現実を受け入れるしかないのか。

 ……学園でも初日あたりには迷ってしまったし、私ってもしかして方向音痴なのかなぁ。
 いや、こういう広い場所なのが問題だと思うのだよ私は。

「うぅ……」

 あぁ、どうしよ。さっきまではトイレ行きたいな……程度の気持ちだったのに、今はトイレ行きたい……! って感じの気持ちになっている。

 どうしてトイレって、もうすぐでできる……ってタイミングで盛り上がってくるんだろう。
 やっぱり油断しちゃうのが悪いのかな。気を緩めた瞬間これだもんな。

「……やばいやばいやばい」

 私は内股になり、キョロキョロと辺りを回す。
 広い廊下に、扉がたくさんある。家の中になんでこんなに扉があるんだよって物申したくなる!

 って、言ってる場合じゃないな。人様の家でおしっこ漏らしちゃうとかちょっとシャレにならない。
 最悪、魔法を使えば証拠隠滅はできるだろう。でも、そういう問題じゃない。たとえ私以外の誰も知らなくても、友達の家で漏らしたっていう私の記憶は消えない。

「ええと、ええと……」

 とりあえず手当たり次第に、扉を開けていく。
 トイレだから廊下の端っこなのかもしれないけど、こうして順番に開けていったほうが確実だ。

 そんなわけで、バンバンバン……と扉を横並びに開けていくこと五つ目。ようやくトイレを見つけたので、私はその中へと入る。

「……ふぃ~」

 用を足して、スッキリした私はトイレから出る。いやあ、スッキリスッキリ。
 危うく、初めて訪ねた友達の家の廊下でやらかすっていう大失態をしてしまうところだったよ。

 さてさて、と。後はサライアちゃんたちが待つ、さっきの部屋に戻るだけ……

「……どこだっけなぁ」

 来た道を戻ればいい……んだけど。トイレ我慢により集中力を欠いていた私は……いや、逆にトイレ我慢に集中力を持っていかれていた私は。
 どんな道を通ってここに来たのか、いまいち覚えていないのだ。

 困ったなぁ。トイレに行って迷ったとか恥ずかしすぎるぞ。

「適当に歩いてたら着くかなぁ。最悪、壁を壊して後で修復するか?」

「そんなことをしたら迷子以上の大問題だと思うんだよねぇ」

「そうだよねぇ。とはいえ、壁壊す時も音を消したりとかさ、誰にも気づかれないようにやってしまえば……え?」

 ぶつぶつと独り言を言っていた私は、突然聞こえた声に驚き振り向く。
 するとそこには、私と同い年くらいの男の子が立っていた。

 私から見て、髪の右側が赤色、左側が青色だ。そして瞳の色は、髪とは逆……右側が青色で、左側が赤色になっている。
 初めて見るタイプの人だ……カラフル、というよりも先に綺麗だという気持ちが湧いてくる。

「えっと……キミは?」

「ヨークリア・パルシュタン。一応この家の長男……ってことになってるかな」

「わぉ」

 目の前にいる男の子は、この家の長男なのか。ってことは、サライアちゃんのお兄さんか弟さん?
 いずれにしても……あんまり、似てないな。

 そんな私の疑問を読み取ったかのように、彼は笑いながら答える。

「僕は養子だから、この家の本当の子じゃないんだ」

「……そうなんだ」

 養子、か。元々この家の子じゃないから、サライアちゃんたちとも似ていない。
 こんな家に養子に引き取られるくらいだ、ぱっと見ボーっとしてるけど、優秀な子なのかもしれない。

 ……養子かぁ。ナタリアちゃんと同じなのか。

「それで、迷っちゃったの? サライアのお友達ちゃん?」

「それは、あはは。あ、エラン・フィールド、です」

 もうここまでバレているのなら、誤魔化す意味はない。そう思って、私は素直にうなずいた。

「わかるよ、この家広いもんね。僕も来たばかりの頃は、よく迷ってたっけ」

 周囲を見回しながら、懐かしむように言う。やっぱりそうなんだ。

「せっかくだから、案内するよ。客間まで行けばいいんどね?」

「うん、多分」

 正直な話、さっきまで自分がどんな部屋にいたのかもよくはわかってないんだけど、一応お客さんとして通されたんだから客間のはずだ。
 そんなわけで、彼に案内を頼むとする。

 先に行く彼の背中を追い、背中に並んだ。
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