史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第十一章 使い魔召喚編

892話 不思議な男の子

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 サライアちゃんの家で迷子になってしまった私は、ヨークリア・パルシュタンくんの案内に従って後ろを着いていっていた。
 彼はサライアちゃんのお兄さんか弟か。いずれにしろ、この家の長男だ。

 そんな彼は養子で、この家の本当の子ではないらしい。

 ……ま、そんなことはどうだっていいんだろう。血が繋がっていなくったって、親兄弟みたいに思えることはある。
 少なくとも私は、血は繋がっていなくても師匠は師匠の他に親のようなものだとも思っている。頼りない親だけどね。

「まさか噂のエランさんと、こんなところで会えるなんて。感激だね……」

「噂……あはは、どんな噂なのやら」

 前を歩く彼は、振り向きどこか楽しそうに笑う。
 赤色と青色と、左右それぞれ違う瞳が私を見ている。この国にはいろんな瞳の色の人がいるけど、彼みたいなものは初めてだ。

 私が言うのもなんだけど、こんな目立つ人すぐにわかりそうなものだけどな。髪の色も違うし。

「サライアからも聞いてるよ。学園祭で、面白い子に会ったって」

「……サライアちゃん、私のこと面白い子って言ってたんだ」

「サライアが自分から招待状を渡すなんて、相当気に入ったんだと思うよ」

 確かに、クレアちゃんも驚いてたもんなぁ。私が招待状を貰ったこと。
 貴族のお家っていうのは、そういうのもあるのかとなかなか大変だと感じたのだ。

「ならありがたいですけどね。私も、今日来れてよかったですし」

「ふふ。僕も、キミに会えて良かったよ」

 ピタ、と足を止めて、彼は私へと振り向いた。それに伴い、私も足を止める。
 多分もう少しで目的地だろうと言うのに、彼は足を止め、私をじっと見ていた。

 今までに見たことない瞳に見つめられて、なんだかドキドキしてしまう。その瞳はとてもきれいで、つい見入ってしまう。

「えぇと……それは、どうも?」

「うん……本当、噂に聞いていた通り。いや、それ以上にきれいな黒髪だ」

 彼は手を伸ばして、その手は……私の髪をすくい、そして撫でた。
 人に髪を触られるのは、初めてではない。それこそノマちゃんやフィルちゃんには毎日のように触られいじられている。

 けれど、男の子に触られたのは初めてだ。
 なんだろう、不思議な気持ち。手のぬくもりとか、大きさとか、そんなものが全然違う。

「それに、とっても可愛らしい女の子だしね」

「へっ」

 それは、予想もしていない言葉だった。だって、そうだろう。

 私の噂について話す内容なんて、誰もがとんでもエピソードばかりだった。
 魔導学園でやらかしたこととか。魔獣との戦いに、ゴルさんとの決闘に、まさに学園の狂犬としての噂が広まっている。
 しかも尾ひれがついている。

 だから、こうして……可愛いなんて、直接言われるっていうのは、その……

「あ、あぁー……そ、それはどうもー。そ、そりゃあ私は、かわいいけども?」

「自覚しているのは、いいことだと思うよ」

「あぅ」

 な、なんだろう……調子狂うなぁ。

 いや、今までこういったこと言われたことなかったから……ちょっと、こう……狂っちゃうんだよ。
 ルリーちゃんくらいだもん、私が自画自賛して全肯定してくれるの。なのに、男の子に褒められるのは……

「ぬぐぐ……」

「わっ」

 このままじゃなんか変な感じになっちゃいそうなので、男の子の胸を押して少し距離を取る。

 くぅ……どうしたんだ私。ただ、周りの男の子とはちょっと雰囲気が違う男の子に、かわいいって言われただけじゃないか。
 そういえば、男の子にかわいいって言われたのは初めてな気が……

 って、うがぁー! そうじゃなくて!

「は、早くっ、サライアちゃんたちのところに戻ろうよ」

「ふふ、そうだね」

 彼はにこりと笑って、私に背を向けて再び歩き出した。
 私は続いて歩き出すけど、なんだか胸の中がもやもやしていた。

 うぅ、なんか……彼の目を見てから、胸の奥のあたりが変な感じする。なんだろうこれ。

「エランさん、今日ってこの後予定はあるの?」

「へ? いや、特には……サライアちゃんたちと話し終えたら、帰るつもりはだけど」

 前を歩く彼は、なぜか私のこの後の予定を聞いてくる。
 その意味がわからない私は、とりあえず正直に答える。今日はここに来るって決めてただけで、その後のことは決めていない。

 すると彼は、今度は足を止めずに進めたまま……言葉を続ける。

「なら、ここでの用事が終わった後……僕と出かけないかい?」

「へぇ?」

 続く言葉に、またも私は間の抜けた声を出してしまう。

 いやいやいや……それって、さ。
 男の子にお出かけに誘われるなんて……これってもしかして……

「で、デートのお誘い……?」

「キミと二人きりで、出かけたい。だめかな」

 な、な、なっ……かなんなんだ、この人は!?
 会ったばかりの私にかわいいって言ってきたり……で、デートを申し込んできたり!

 さっきから表情も声色も変わらない。もしかして、からかわれているだけなのか?
 そんな事を思った私は、少し警戒してしまったのかもしれない。

「! ごめんね、いきなり変なことを言って。でも、今言った言葉に嘘はない……キミと、二人で街を見て回りたいんだ」

「はぅっ」

 え、これってマジ……? 夢じゃないの?
 ま、まさか初対面の男の子に、デートに誘われるなんて……!?
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