史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第十一章 使い魔召喚編

893話 デートのお誘い

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 初対面の男の子にデートに誘われてしまった。これって……これって……

 これってどういう意味だと思う? クロガネ。

『我が知るわけがなかろう』

 頭の中で話を聞いていたクロガネに、今のやり取りを聞く。
 だけどクロガネの答えはあっさりしたものだった。まあ、私だっていきなり同じようなこと聞かれたら困るけどさぁ。

 もうちょっと考えてくれてもよくない? 冷たいなぁ。

『人間の求愛行動など、我には理解の及ばぬことだ』

 ふむ……冷たいって言うより、スケールが違いすぎてアドバイスのしようがないって感じか。
 確かにクロガネ恋愛得意じゃなさそうだもんね。

『怒るぞ?』

 ごめんごめん、冗談だって。
 確かに竜から見てみれば、人間のデートがどうのとかいまいちピンとこないだろうしね。

 ……って、別に求愛行動ってわけじゃないと思うけど……

『我の知識の中で話を進めて良いのならば、異性を共に選び逢引に誘うのは、相手のことを異性として好いているからではないのか?』

「あいっ……」

「? どうかした?」

「や、な、なんでもない、です」

 く、クロガネ……逢引なんて、そんな言い方するから思わず口に出ちゃいそうだったじゃんか。
 クロガネの声は私にしか聞こえないから、私だけ喋ってたら変な子だと思われちゃう。

 ……まあ、クロガネの言い方はともかくとして……異性をデートに誘うなんて、少なくともなんとも思ってない相手にはしないことだよなぁ。

 でも、私たち会ったばかりだしぃ……!

『人間の世界には、一目惚れという言葉があるのだろう? それではないのか?』

 とてもそんな雰囲気には見えなかったけども。

「それで、さっきの答えだけど」

「ひゃひ!」

 クロガネとの会話に夢中になっていたせいか、急に話しかけられて肩が跳ねてしまう。
 へ、変な声出た……

「僕と出かけてくれる?」

 さっきは驚きすぎて、私が答えを出せずにいた。だから、もう一度私の答えを聞くのだ。

 なんだろう、喉の奥が渇く。さっき紅茶飲んだのにな。
 こんなの、ただのお出かけだ。私が変に意識しすぎ……だってのに、クロガネが変なこと言うからぁ!

『責任転換はよくないぞ』

 悪かったよぉ! でもちょっと黙ってて!

「どうかな? イヤならそれで……」

「い、イヤじゃない!」

 私は反射的に答えていた。ええいままよ!

「ふぅ……うん、お出かけ、いいよ。一緒に行こう」

「! 本当、よかった」

 そうだ、デートだってのは私が勝手に思ってしまっただけのことだ。
 ただ男の子と二人で出かけるだけ。それ以上の意味はない。

 だっていうのに……嬉しそうに笑うその顔を見ると胸の奥がきゅんとしちゃうのは、なんだろう。

「さ、着いたよ」

 そうして話をしているうちに、目的の部屋の前まで着いたようだ。
 ここからトイレに行っただけなのに、迷った挙句にこんなことになるなんて。

 私はその扉に手を掛け、開く。

「あら、遅かったですわね」

 すると、部屋の中にて優雅に座るサライアちゃんが出迎えてくれた。

「ごめんね、ちょっと迷っちゃって」

「嘘だ! きっとおっきいのしてて時間かかっちゃったのごまかしてるだけなんだ!」

「爺」

「そいや!」


 ペチン!


「いひゃあああ!」

 ……まだあの子お尻丸出しなのか。いい加減冷えるぞ。
 それとも、紅茶置いていたからほんのりあったかいんだろうか。あと叩かれすぎて痛みが熱さに変わっているとか。

 どっちでもいいけど、なんだこの光景。

「相変わらず賑やかだね」

「ヨークお兄様!」

 部屋に入ってきた彼を見て、セーリンちゃんが嬉しそうに目を輝かせる。
 お兄さんがやって来て嬉しいのはわかるけど、この姿お兄さんに見られて恥ずかしくないのだろうか。それともいつもの光景なのか。

「ヨークリア、エランを案内してくれたのですね」

「うん、サライア。かわいい友人じゃないか」

 ……っ、またこの人は、恥ずかしげもなくかわいいだなんて。しかも、サライアちゃんたちもいる前で!

 それにしても、この人は養子とはいえ、兄妹仲は悪くないみたいだな。
 仲良きことは美しいかなってね。

「サライア、彼女との用事が終わったら、教えてよ」

「? あら、どうしてです?」

「この後彼女と出かける約束をしてさ」

「……」

 なんでもないように言う彼の言葉に、一瞬の沈黙。
 それから「えーっ」と声を上げるのはセーリンちゃんだ。

「ど、どうして!? まさかあなた、ヨークお兄様にまで手を出してたの!?」

 おいなんだよ人聞きが悪いな。まで、ってなんだまでとは。

「そんなに驚かないでよセーリン。僕から誘ったんだ」

「なっ、どうして!?」

「そんなの、彼女が魅力的だからに決まってるじゃない」

 ……どうしてだろう。私のことを話しているのに、私はここにいたくない。すごい恥ずかしい。穴があったら入りたいってやつかも。

 あれだけやかましかったセーリンちゃんも口をあんぐり開けている。そりゃそうだろうね。
 そこでパンッ、と手を叩いた音が響いた。

「それでしたら、私のことはどうか気にせず。今からお二人で行ってきてはどうでしょう!」

 名案だ、と言わんばかりの言葉。不思議と目がキラキラしているように見える。
 やっぱり女の子って、こういう話好きなんだろうなぁ……って、え?

 えぇえええ……!?
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