906 / 1,141
第十一章 使い魔召喚編
893話 デートのお誘い
しおりを挟む初対面の男の子にデートに誘われてしまった。これって……これって……
これってどういう意味だと思う? クロガネ。
『我が知るわけがなかろう』
頭の中で話を聞いていたクロガネに、今のやり取りを聞く。
だけどクロガネの答えはあっさりしたものだった。まあ、私だっていきなり同じようなこと聞かれたら困るけどさぁ。
もうちょっと考えてくれてもよくない? 冷たいなぁ。
『人間の求愛行動など、我には理解の及ばぬことだ』
ふむ……冷たいって言うより、スケールが違いすぎてアドバイスのしようがないって感じか。
確かにクロガネ恋愛得意じゃなさそうだもんね。
『怒るぞ?』
ごめんごめん、冗談だって。
確かに竜から見てみれば、人間のデートがどうのとかいまいちピンとこないだろうしね。
……って、別に求愛行動ってわけじゃないと思うけど……
『我の知識の中で話を進めて良いのならば、異性を共に選び逢引に誘うのは、相手のことを異性として好いているからではないのか?』
「あいっ……」
「? どうかした?」
「や、な、なんでもない、です」
く、クロガネ……逢引なんて、そんな言い方するから思わず口に出ちゃいそうだったじゃんか。
クロガネの声は私にしか聞こえないから、私だけ喋ってたら変な子だと思われちゃう。
……まあ、クロガネの言い方はともかくとして……異性をデートに誘うなんて、少なくともなんとも思ってない相手にはしないことだよなぁ。
でも、私たち会ったばかりだしぃ……!
『人間の世界には、一目惚れという言葉があるのだろう? それではないのか?』
とてもそんな雰囲気には見えなかったけども。
「それで、さっきの答えだけど」
「ひゃひ!」
クロガネとの会話に夢中になっていたせいか、急に話しかけられて肩が跳ねてしまう。
へ、変な声出た……
「僕と出かけてくれる?」
さっきは驚きすぎて、私が答えを出せずにいた。だから、もう一度私の答えを聞くのだ。
なんだろう、喉の奥が渇く。さっき紅茶飲んだのにな。
こんなの、ただのお出かけだ。私が変に意識しすぎ……だってのに、クロガネが変なこと言うからぁ!
『責任転換はよくないぞ』
悪かったよぉ! でもちょっと黙ってて!
「どうかな? イヤならそれで……」
「い、イヤじゃない!」
私は反射的に答えていた。ええいままよ!
「ふぅ……うん、お出かけ、いいよ。一緒に行こう」
「! 本当、よかった」
そうだ、デートだってのは私が勝手に思ってしまっただけのことだ。
ただ男の子と二人で出かけるだけ。それ以上の意味はない。
だっていうのに……嬉しそうに笑うその顔を見ると胸の奥がきゅんとしちゃうのは、なんだろう。
「さ、着いたよ」
そうして話をしているうちに、目的の部屋の前まで着いたようだ。
ここからトイレに行っただけなのに、迷った挙句にこんなことになるなんて。
私はその扉に手を掛け、開く。
「あら、遅かったですわね」
すると、部屋の中にて優雅に座るサライアちゃんが出迎えてくれた。
「ごめんね、ちょっと迷っちゃって」
「嘘だ! きっとおっきいのしてて時間かかっちゃったのごまかしてるだけなんだ!」
「爺」
「そいや!」
ペチン!
「いひゃあああ!」
……まだあの子お尻丸出しなのか。いい加減冷えるぞ。
それとも、紅茶置いていたからほんのりあったかいんだろうか。あと叩かれすぎて痛みが熱さに変わっているとか。
どっちでもいいけど、なんだこの光景。
「相変わらず賑やかだね」
「ヨークお兄様!」
部屋に入ってきた彼を見て、セーリンちゃんが嬉しそうに目を輝かせる。
お兄さんがやって来て嬉しいのはわかるけど、この姿お兄さんに見られて恥ずかしくないのだろうか。それともいつもの光景なのか。
「ヨークリア、エランを案内してくれたのですね」
「うん、サライア。かわいい友人じゃないか」
……っ、またこの人は、恥ずかしげもなくかわいいだなんて。しかも、サライアちゃんたちもいる前で!
それにしても、この人は養子とはいえ、兄妹仲は悪くないみたいだな。
仲良きことは美しいかなってね。
「サライア、彼女との用事が終わったら、教えてよ」
「? あら、どうしてです?」
「この後彼女と出かける約束をしてさ」
「……」
なんでもないように言う彼の言葉に、一瞬の沈黙。
それから「えーっ」と声を上げるのはセーリンちゃんだ。
「ど、どうして!? まさかあなた、ヨークお兄様にまで手を出してたの!?」
おいなんだよ人聞きが悪いな。まで、ってなんだまでとは。
「そんなに驚かないでよセーリン。僕から誘ったんだ」
「なっ、どうして!?」
「そんなの、彼女が魅力的だからに決まってるじゃない」
……どうしてだろう。私のことを話しているのに、私はここにいたくない。すごい恥ずかしい。穴があったら入りたいってやつかも。
あれだけやかましかったセーリンちゃんも口をあんぐり開けている。そりゃそうだろうね。
そこでパンッ、と手を叩いた音が響いた。
「それでしたら、私のことはどうか気にせず。今からお二人で行ってきてはどうでしょう!」
名案だ、と言わんばかりの言葉。不思議と目がキラキラしているように見える。
やっぱり女の子って、こういう話好きなんだろうなぁ……って、え?
えぇえええ……!?
10
あなたにおすすめの小説
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
追放したんでしょ?楽しく暮らしてるのでほっといて
だましだまし
ファンタジー
私たちの未来の王子妃を影なり日向なりと支える為に存在している。
敬愛する侯爵令嬢ディボラ様の為に切磋琢磨し、鼓舞し合い、己を磨いてきた。
決して追放に備えていた訳では無いのよ?
わけありな教え子達が巣立ったので、一人で冒険者やってみた
名無しの夜
ファンタジー
教え子達から突然別れを切り出されたグロウは一人で冒険者として活動してみることに。移動の最中、賊に襲われている令嬢を助けてみれば、令嬢は別れたばかりの教え子にそっくりだった。一方、グロウと別れた教え子三人はとある事情から母国に帰ることに。しかし故郷では恐るべき悪魔が三人を待ち構えていた。
濡れ衣を着せられ、パーティーを追放されたおっさん、実は最強スキルの持ち主でした。復讐なんてしません。田舎でのんびりスローライフ。
さら
ファンタジー
長年パーティーを支えてきた中年冒険者ガルドは、討伐失敗の責任と横領の濡れ衣を着せられ、仲間から一方的に追放される。弁明も復讐も選ばず、彼が向かったのは人里離れた辺境の小さな村だった。
荒れた空き家を借り、畑を耕し、村人を手伝いながら始めた静かな生活。しかしガルドは、自覚のないまま最強クラスの力を持っていた。魔物の動きを抑え、村の環境そのものを安定させるその存在は、次第に村にとって欠かせないものとなっていく。
一方、彼を追放した元パーティーは崩壊の道を辿り、真実も勝手に明るみに出ていく。だがガルドは振り返らない。求めるのは名誉でもざまぁでもなく、ただ穏やかな日々だけ。
これは、最強でありながら争わず、静かに居場所を見つけたおっさんの、のんびりスローライフ譚。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる