史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第十一章 使い魔召喚編

896話 苦手な人物

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 エランさんを尾行している変態を発見。
 そりゃエランさんは尾行したくなるくらいかわいらしいですけど、許せません!

 というわけで、突撃です!

「ちょっ、いきなり!? ルリーちゃんっておとなしめの子だって聞いてたんだけど、どのへんが!?」

 後ろからマヒルさんの声が聞こえるけど、今は構っている余裕はありません。

 そっと素早く、同時にエランさんを見失わないように注意を払って……
 赤毛のその人の肩を、掴んだ。

「あなた、そこでなにをしているんですか!」

「!」

 その人物は、いきなり声をかけられたためかビクッと肩を震わせた。
 こうして肩にだけだけど触れた感じ、結構鍛えている感じの人だ。

 その人は、ゆっくりと振り向いた。

「いや、これは別に、あいつの様子が気になってみていたとかじゃ……」

「え?」

 振り向いたその人物のバツの悪そうな表情を見て、私はつい声を漏らしていた。
 なぜなら、その人の顔には見覚えがあったから……というか、ありすぎるからだ。

「ん?」

 その人も、私の顔を見てから声を漏らした。
 その人もきっと、私には見覚えがあるからだ。

「お前は……確か、エランとよく一緒にいる……」

「る、ルリーです。こんなところで奇遇ですね……だ、ダルマス、様」

 振り向いたその人……イザリ・ダルマスは私を見るなりエランさんの名前を口にした。
 それだけ私がエランと一緒にいるのだということが周知されているのだとわかると、嬉しかったり恥ずかしかったりだけど……

 素直に喜べないのは、この男が目の前にいることが原因だ。

「ルリーちゃーん、いきなりそんな話しかけたら迷惑……って、もしかして知り合い?」

 追いかけてきたマヒルさんが、私とこの人の顔を見比べて聞く。
 明らかに初対面同士ではない反応だし、そう思うのも当然だ。

「知り合いというか……え、エランさんと同じ組の……」

「え、じゃあこの人も魔導学園の生徒なんだー」

「……確か、使い魔召喚で召喚されたという……」

 うぁあああ、待って待って。なんでこの人がこんなところにいるの!
 私この人のこと苦手なんだよ……


『帰れ! ここはお前なんかの来るとこじゃねえよ!』

『喋んな、この薄汚いエルフ風情が!』


 ……嫌でも思い出してしまう、入学試験前の出来事。

 つい油断してフードが脱げて、ダークエルフの姿が露わになってしまった。そしてそのタイミングで、この人たちがやって来たのだ。
 おかげで、エルフ族の私は口汚い言葉をかけられることになった。

 今でこそ学園内にはウーラスト先生のようなエルフもいるから、こういったいじめはないんだろうけど……というか、一番の理由は私がダークエルフだからだし。
 エルフ族にいい印象を持っていない人から、悪感情を向けられて怖かった。

「どうもー、マヒルって言います」

 ……やっぱりマヒルさんがいてよかった。私一人だったら、どうしていたかわからない。

 幸いなのは、私が入学試験前のエルフ族だとバレていないってことだ。
 エランさんのように、私を私として認識している人にはこの魔導具も効き目がないけど、ただのエルフ族としてしか見ていなかったこの人には、効き目は抜群だ。

 とはいえ、あのときの恐怖が拭われたわけじゃない。アレのおかげでエランさんと知り合えたと言っても過言ではないから、まったくの嫌な思い出ってわけでもないんだけど……

「それで、ダルマさんはなにをしてたんですか?」

「ダルマス、だ。会ったころのエランみたいな呼び方をしやがって。
 ……別に、あそこでエランを見かけたから気になっただけだ」

「気になった。ほほーう?」

「……なんだ」

 一刻も早くここから離れたいけど……どうやらこの人も、エランさんを尾行もとい観察していたみたいだ。
 この人が、エランさんにバレたときのほうが、面倒になる気がするしなぁ。

 それにしてもマヒルさん、ほぼ初対面だろうによくそんなぐいぐい話しかけられるな。私がエルフ族だってバラさないといいけど。
 ……ま、意外と口は固いとヨルさんは言っていたけど。

「じゃあ、どうせなら一緒に尾行しません?」

「!?」

「!!」

 えっ、いや……いやいや、なに言ってんのマヒルさん!?
 一緒にって……え、この人と!? やだよ!

 そりゃ、最近のこの人は以前と少し変わった……とは聞く。平民を見下し気味だったのが対等に扱うようになったとか、近寄りがたかったけど柔らかくなったとか。
 だからといって、私がされたことは……忘れられない。

 本能的に、恐怖があるのだ。もしまた、あんなことがあったらどうしようって。

「いやでもマヒルさん、それは迷惑だと思いますよ?」

「えー、どうせ同じ人を尾行するなら固まってたほうがよくない? バラバラだと相手に見つかるリスクも上がるよ?」

 ぬっ……それは正論、なのかもしれないけど。

 うぅっ……うぅううう……!

「俺は構わんが……そっちの子は、悩んでいるようだぞ」

「……大丈夫、です」

 これはエランさんの調査をするために仕方のないことこれはエランさんの調査をするために仕方のないことこれはエランさんの調査をするために仕方のないこと……

 それに、いつまでも恐怖に囚われていちゃあだめだ。怖いことがあってもエランさんが助けてくれる、そんなのに甘えてちゃだめだ!
 私は私の中の恐怖に、打ち勝つ!

「……よろしく……お願い、しま、す……」

「……なんかすごい睨まれているような気がするんだが」

「シャイなんですよー」

「しゃい?」
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