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第十一章 使い魔召喚編
897話 デートかないやデートじゃない
しおりを挟む街中でエランさんを見かけ、後を追うことに。マヒルさんも一緒にだ。
その途中で、同じくエランさんを見ていたイザリ・ダルマスを発見。
不本意ながら、一緒に行動することに。
「……」
マヒルさんがいてくれたおかげで助かった。私がなにをしなくても、場を繋いでくれる。
今だって、この男に話しかけたりしている。
……私はとにかく、この空間が居づらくて仕方ない。かといって、私一人だけ飛び出したとしても、見つかったら怖いし。
「ね。、ルリーちゃん」
「え?」
「え、じゃないよもー。私を案内するために、ルリーちゃんが率先して言い出してくれたんだよって話だよ」
いけない、ぼーっとして話を聞いていなかった。
それにしても、私は別に率先なんかしていなかったけど……なんか、話がねじ曲がっている気がする。別にいいけど。
というか、別に私の話なんてしなくてもいいのに。
「そ、それより。あの二人、そっち見よう。ね?」
マヒルさんの口から、私がダークエルフだて明かされることはないと思うけど。それでも、こうして私のことを話されるのはなんだか嫌だ。
なので、私は無理やり話を変える。今追っている二人のことに。
エランさんと、見たこともない男の人のことに。
「ふぅむ、ルリーちゃんはあの男の人に見覚えはないんだよね? ダルマさんは?」
「……確か、パルシュタン家の長男じゃなかったか」
どうやら、ダルマさん……この人は、あの男の人のことを知っているみたいだ。
「パルシュタン?」
「王族であるコーロラン王子の婚約者が、パルシュタン家の長女だ」
「へー、王族の婚約者。じゃあ結構大きな家なんだ」
……そうか、あの人はコーロラン様の婚約者の家の人、なのか。
ダルマス家もかなり有名な貴族らしいし、貴族同士で知っていてもおかしくはない。
それに、あの特徴的な髪の色はなかなか忘れられないだろう。
「そんな人が、どうしてエランさんとデートを?」
「「デートじゃない!」」
マヒルさんの言葉に引っかかり、私はすぐに否定した。これはデートではない、ただ街案内とかそんな感じだ。
そう思って声を出したのだけど……なぜか、声が重なった。
それは、私の他にもう一人声を出した人がいたからで。
「ダルマさん?」
「あぁ、いや……ほら、あいつ男とデートとか言う柄じゃないだろ。ただ……道案内的なことをしているだけだろ」
目をそらし、答える……なんだか、変だ。
その様子を疑問に思ったのは、マヒルさんも同じようだ。
「? ……あー、そういうこと」
するとマヒルさんは、なにか気付いたというようににんまりと笑った。
「そういうこと?」
「ダルマさんてば、エランさんのこと気になってるんでしょー」
「な!」
「!?」
マヒルさんの思いもよらない指摘……それを聞いて、私は目を見開いた。
この男が、エランさんを気になっている……だと!? そんな、そんなことないだろう!
だって……だって、だってさぁ……!
「な、なにを言っている。そんなわけがないだろう」
「ならなんで、尾行してたんです?」
「……パルシュタン家の長男と出歩いているんだ。ただそれが気になっただけのこと」
「ふぅん」
なんだか言い訳みたいに聞こえるけど、私はそれで納得することにする。というか、それ以外に考えたくはない。
そりゃあエランさんは魅力的だけど、そんなこと……
「あ、二人とも手を繋いでる」
「「なんだと!?」」
マヒルさんの言葉に、私たちは揃って首を動かした。
そこには確かに……エランさんと、パルシュタン家の長男さんが手を繋いでいる姿があった。
え、エランさんの手……わ、私だっていつも繋ぎたいの我慢しているのに……!
「ただの道案内で、あんなことするかなー? そもそも外から来た人ならともかく、この国に住んでる人なんでしょ? そんなの必要なくない?」
「……じ、じゃあなんですか。あ、あれは……で、デートだとでもいうんですか……」
「そりゃあ、休日に年頃の男女が出掛けてるとなれば、それはもうデェ……ぐぇえ!?」
「そそ、そんなわけ! そんなわけないじゃないですか! エランさんがでで、デートなんて! あの男っ気のないエランさんがですよ!? しかも、900エピソードもやっといてぽっと出の男とのデートなんて誰も望んでないですよぉおおお!!」
「ぐぇ、く、首……くび、しまって……男っ気ないとか結構しつれ……あと後半なに言ってるかわかんな……」
「おい落ち着け」
だ、だめだー……エランさんがデートしているかもしれない。そう考えただけで、自分が制御できなくなる。
お、落ち着け私……
「ふぅ、ふぅ……」
「けほけほ。エランさんのことでそんんあい取り乱すなんて、本当にエランさんのこと好きなんだね」
「す、すみません」
「いいよいいよ」
とにかく、あの二人がただならぬ関係っぽいのはわかった。このまま追いかけるのも、ちょっと怖い気がするんだけど……
ここでやめる方が、後悔しそうだ。
見た感じ二人は、楽しそうに話をしている。その光景に拳を握り締めつつ、私たちは後を追う。
もしもこれが本当に、本当にデートなんだとしたら……
「エランさんにふさわしいか、私が見極めてやる……」
「あはは、ルリーちゃんお母さんみたい」
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