史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第十一章 使い魔召喚編

906話 悩んでいる少女

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 とりあえず、中庭のベンチでキリアちゃんと隣り合って座る。

 キリアちゃんは、ダルマスのことが好きで……私もダルマスのことを好きではないのかと最近考えているらしい。
 そんなことあるはずないって言っても、その疑念はなかなか晴れないみたいで。確かに私が一番仲が良いのはダルマスかもしれないけどさ。

 ノマちゃん曰く、好きな人に好きな人が居るかもしれないとか、好きな人を好きな人が居るかもしれないとか考えるだけでもやもやしちゃうのだとか。

「前も言ったけど、私はダルマスのことはなんとも思ってないから。ね?」

「は、はい……」

 キリアちゃんの想いを知っているのは、私だけ。その私がダルマスを好きかもしれないなんて、そんな疑惑キリアちゃんにとっては嫌だろうな。
 私だってそんなことでキリアちゃんとぎくしゃくしたくないし。

「わかってます、エランさんの言うことを信じていないじゃないんです。
 ……でも、エランさんに恋人がいるのなら、心配することはないですよね」

「噂よりも私の言葉を信じてほしいもんだけどねぇ」

 そりゃ、キリアちゃん的には私に恋人が居るって思ってた方が心配はないのかもしれないけど……
 さすがに、そういう嘘は信じてほしくないし。

 なのであの噂は嘘であると説明する。

「そう、なんですか。でも、エランさんってとてもモテそうですし……パルシュタン様でなくても、恋人の一人や二人はいそうですけどね」

「えぇー? えへへそうかなぁ……てか、二人もいたらまずいでしょーよー」

 まったくキリアちゃんってば正直者なんだからー。そういうとこ大好きだよ。

 キリアちゃんの頭に手を置いてなでなでしてあげると、「な、なんですか」と恥ずかしそうにしながらも抵抗はしない。
 おー、めんこいのー。

「えへへへ……わぁ!?」

「ん?」

 しばらくその時間を楽しんでいたのだけど、急にキリアちゃんの足下が光り始める。そして展開されるのは、魔法陣だ。
 カッと光ったかと思えば、魔法陣の中からなにかが飛び出してくる。

 それは鳥……いや……

「あぁ、ベル! またぁ!」

 飛び出してきたのは……キリアちゃんの使い魔のフクロウだ。
 確か、勝手に出て来たり飛びまわったりして苦労しているんだっけ。

 その証拠に、今出てきたわけだし。

「すみません、この子ったら……」

「元気があっていいじゃん……とは、呑気に言えないかなぁ」

 さすがにキリアちゃんも困っているようだし、何日もこの様子じゃ元気、の一言で済ませるわけにもいかないだろう。
 勝手に魔法陣から出てきて飛び回る、か……なんか、もふもふみたいだな。

 まあもふもふの場合は、フィルちゃんが幼いことが関係しているのかあんまり困った様子はないけど。
 ……フィルちゃんが気にしなさすぎとも言えるね。

「その子、ベルって名前なの?」

「はい。元気なのは良いことだって私も思っていたし、あんまり遠くへ行かないのはいいんですけど……」

 使い魔なのだから、たとえどこに行っても魔法陣の中に戻せる。それに、視界を共有すればまず見逃すことはない。
 それでも、目の届かないところに行くと心配だよね。

 ただ元気なだけなら微笑ましいけど、キリアちゃんも関与してない形で出てくるから困りものだ。
 たとえば食事中や、入浴中。就寝中に飛び出してきてルームメイトに迷惑をかけてしまったこともあるのだとか。

「それは……なんとも」

「ルームメイトの方は、気にしなくていいと笑ってくれていたんですけど」

 どうやらキリアちゃんのルームメイトは優しい子みたいだ。
 でも、その優しさにいつまでも甘えていられない……と。まあ寝ている途中に何度も起こされたらさすがにイライラしてきちゃうかもしれないし。

「私、魔導士としての力が足りないんでしょうか」

 しゅん、と落ち込むキリアちゃん。

「そんなこと……」

「いえ、私調べたんです。契約したばかりの使い魔が術者の意思に反して行動するのは、術者のことを認めていないから。
 それってつまり、私に魔導士としての力が足りないってことじゃないですか?」

 ……キリアちゃんはキリアちゃんなりに、調べていたのか。
 魔導士としての力……かぁ。

 自分と相性のいいモンスターが召喚されること、それと使い魔契約を結ぶこと、そして使い魔と意思を通わせること……これらは一貫しているようだけど、実は全然違う。
 相性のいいモンスターだから契約のチャンスが生まれ、そして自分と心を通わせる。徐々にステップアップして信頼関係を築いていくわけで、召喚したからはい成功、となるわけではない。

「他の皆さん、私よりも立派な方々ばかりで……」

 いかん、キリアちゃんが自信を無くしてしまっている。確かに、キリアちゃん以外みんな使い魔とうまくいっていたし……

 ……いや、そういやいたなぁ一人。使い魔が自分のことを話してくれなくて、真の姿も見せてくれない子が。

「ぃよし、キリアちゃん任せて!」

 私は、その場で勢いよく立ち上がる。

「え?」

「明日、私とキリアちゃん、それともう一人呼んで使い魔会議をしよう!」

「つ、使い魔……会議?」

 そう、これはキリアちゃんのため……そして、もう一つの意味でも。
 使い魔に振り回されているという共通点……この会議を使って、キリアちゃんと彼の仲をぐっと縮めるチャンスだ!
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