史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第十一章 使い魔召喚編

905話 広がる噂

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 中央図書館の限定区域とやらへの許可がもらえた。ゴルさん様様だよね。
 今度の休日に行くということをゴルさんに伝え、そしてゴルさんから図書館の人に伝えてもらうというのだ。

 てっきり、入門許可証みたいなものが必要なのだと思ってた。でも、そういったものはないらしい。
 もしも許可証みたいなのを渡したとして、それをうっかり紛失してしまったら。それだけならまだしも、失くしてしまった許可証を誰かが手にしてしまったら。

 過去にそういう事例があったのかはわからない。でも、許可証などにした場合万が一不正に使われる場合もある。
 だから許可を貰ったその人に、図書館側に伝えてもらうというわけだ。今回の場合は、私が休日に図書館に行く、と。

「セキュリティしっかりしてるんだぁ」

「あるいは、許可証を失くさなくても第三者に渡し悪用……という例もある。言葉こそ目には見えない分、悪用されることもない」

「確かに。あ、でもこういう会話を聞いていた誰かが、私の名前を騙ることもできるんじゃない? たとえば、シルフィ先輩が私の名前を偽って入るとか」

「なんだその例えは」

 言葉でも、それも悪用されることがあるんじゃないか。やり取りを盗み聞きしていた誰かが、名前を偽って行くパターン。
 口約束なら、向こうは私の顔を知らないわけだしね。

「普通に身分証の提示を願うに決まっているだろう」

 そこに、シルフィ先輩からの言葉が入った。

「あ、それもそっか」

「ま、お前の場合はその必要すらないかもしれないがな」

 ゴルさんは、ねぜかうっすらと笑っていた。

「なんで?」

「……エラン・フィールドを知らない人間はもはやこの国にいないと言ってもいいからな。お前の特徴は誰の頭にも入っている」

 私の場合は、身分確認なんて必要ないくらいに有名人なのだという。

 まあそれでも、変装とかそういったものを避けるために身分証の提示は必須みたいだけど。
 私そんなに有名になっていたのか。

「そうだ、有名ついでに尋ねたいことがあった」

 とんとん、と資料の束を整えていたゴルさんが、私を見る。
 はて、尋ねたいこととな。

「なんでしょ」

「お前……パルシュタン家の長男と交際関係にあるのか?」

「げほ!」

 ……予想もしていなかったところから、予想もしていなかった7言葉が飛んできた。
 まるで私のほっぺたをぶん殴るような衝撃。なにも口に含んでいないのに、咳き込んでしまう。

「ご、ゴルさんまでそんなこと聞いてくるんだ……」

「学園内で噂になっていたからな。もちろん、噂に振り回されているわけではないが……相手が相手だ。真偽を確かめておこうと思ってな」

 他の子のように、噂話に面白がっているわけではない。
 それはそれとして、気にはなるってことか。相手が相手だし、私は生徒会のメンバーだし。

 まったく、みんな気にし過ぎなんだよ。

「ただ一緒にお出掛けしていただけですよー。というか、あの日が初対面だし」

「ほう、あのヨークリア・パルシュタンが初対面の相手を逢引に誘うとは」

「逢引じゃないから!」

 ゴルさんも、私たちがそういう仲だって誤解しているのか?
 ……いや、楽しんでいるだけだなこれ。意外とお茶目なところあるしなこの人。

「ま、お前が誰と交際しようが構わないが、魔導学園の生徒である自覚は持っておけよ」

「だから違うってのにぃ」

 その後、生徒会の仕事は一段落し、私は一足先に帰ることに。
 シルフィ先輩としては、ゴルさんと二人きりになれるから望むところじゃないだろうか。

「お疲れ様でーす」

 生徒会室から出た私は、鞄を持ち直してから廊下を歩く。
 外からは、魔導の自主訓練に精を出している生徒たちの声が聞こえてくる。

 みんな元気だねぇ。若いってのはいいもんだよぉ。

「エランさん」

「ん?」

 すると、どこかから私を呼ぶ声。廊下で反響していたけど、歩いている方向から聞こえた。
 窓の外に向けていた視線を、正面に向ける。そこには一人の女子生徒の姿。

「キリアちゃん?」

 そう、キリアちゃんの姿。
 彼女は壁に寄りかかっていた。まるで誰かを待っているように……

 ……って、この状況だと私を待っていたってことか?

「どうかしたの?」

「あの……私、エランさんに謝らないといけないことがあって」

 壁から身体を離して、私と向き合うキリアちゃん。
 その内容は、私に対して謝罪したい、というものだけど……

 あ、謝る? キリアちゃんが、私に?
 別にキリアちゃん、私に対して謝るようなことしてないけどな。

「申し訳ありません。エランさん、恋人がいらっしゃったんですね」

「……ん?」

 頭を下げるキリアちゃんから出てきたのは、またも予想していなかった言葉だ。

「私、てっきりその……エランさんはダルマス様を好いているのかと思っていたので。でも、恋人がいるなら勘違いですね」

「ん? ん?」

 待って、いろいろと処理が追い付かないんだけど!

 恋人ってのは……まあ多分、というか十中八九ヨークリアさんのことだろうな。
 そして、キリアちゃんは私がダルマスのことを好きだと思っていた……でも、私に恋人がいるならそれも勘違い、というわけだ。

「エランさんも否定していたし、何度も違うと思おうとしたんですけど……やっぱり、エランさんはダルマス様のことを、という考えが離れなくて」

「いや、否定を信じるならまず恋人否定の方を信じてよ!?」

 私の噂はいったいどこまでいくのだろう。
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