史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第十二章 中央図書館編

923話 黒髪黒目のあれこれ

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 最近……っていうか魔導大会の一件からエレガたちには会いに行ってないよな。忘れてたとかじゃないよ、うん。
 あいつらも、なんだかんだまだいろいろと謎めいているしな。

 そもそも、五十年前にルリーちゃんの故郷を襲った時から、なんで姿形が変わってないんだって話だよ。エルフ族でもあるまいし。

「……お?」

 まあ、会いに行こうと決めたところで今すぐというわけでもない。さっきも思ったけど、せっかく限定区域に入れたんだから、時間いっぱい使わないと。

 そう思って私は、残りの時間また調べ物をすることにする。
 そこで探したのが……黒髪黒目の人間について記載された本がないか、だった。

「おー、あったあった」

 そんなわけで、私はその関連の本がないかを探す。

 一応種族別のジャンルを探していると、目的の本を見つけた。黒髪黒目の人間について記載されたものだ。
 まさか本当に見つけられるとはね。

「よい、しょ」

 それを本棚から取り出し、近くの席へ移動する。
 本は分厚いわけではない。むしろちょっと薄いかも?

「さあて、なにが書いてあるのかな」

 まあ、大したことは書いてないかもしれないけどね。もしそうなら、この区域に出入りできるマーチさんあたりが見ているかもしれないし。
 それで私を見てもなにも言わないわけだし……そもそも師匠だってそうだ。

 この本が、つい最近書かれたものでなければ……世界中を回っていた師匠すらわからなかった黒髪黒目の人間のことは、調べればわかることだもんな。

「ま、師匠のことだから本で調べるって発想にならなかったのかもしれないけど」

 すごい人なのは確かだけど、いろいろ抜けている師匠だ。私に世間の常識を教え忘れていたり。
 だから、まあこういう可能性もあるのだ。

 私自身、自分のことを知ろうだなんて気持ちはないけど……この世界には珍しいってのは、普通に興味をそそられる。

「ふむ……黒髪黒目の人間は、膨大な魔力を持つと言われている、か」

 ……なんか前に、誰かがそんなことを言っていたような気がする。

「それと、この世界とは別の世界の人間に見られる特徴、か。へぇー……ん??」

 さらっと読み飛ばしそうになってしまったけど、なんか今すごいこと書いてなかった!?

 私は今の箇所を、もう一度読み返す。
 ……黒い髪と黒い瞳を持つ人間は、この世界とは別の世界の人間に見られる特徴……

「え、え? これマジ?」

 べ、別の世界って……そんな、当たり前みたいに!? この限定区域にある本に書いてあることだから、一般常識ではないんだろうけど……

 別の世界……か。なんかヨルやエレガたちもそんなこと言ってたし、ヨルが召喚した妹のマヒルちゃん。
 彼女が、まさしくその別の世界から……なんて話をしていた。

「じゃあ……まさか、私、も……?」

 もしもここに書かれていることが事実なら、私もそうだ……ってことになる。

 そういえばなんか、ヨルもそれっぽいことを言っていたような……ちょいちょいしつこかったり、自分と同じだとなれなれしかったり。
 それって、こういうことだったのか?

 てか、こういう大事なこと、誰か教えてくれてもいいのに。まさか誰も、この本を見たことがないなんて言わないだろうし。

「ほ、他には……」

 こうなったら、他にもいろいろ書いてあるかもしれない。私はページを捲る。

 ……膨大な魔力に加えて、特別な力が宿る。常人ならざる身体能力だったり、特殊な能力だったり……

「……そう言われれば……」

 確か、ヨルは触れずに相手の魔力を吸い取る……という芸当ができたはずだ。
 魔導具ならともかく、私だって触れずに相手の魔力を吸うなんてできない。

 それに、思い返せばエレガ、ジェラ、ビジー、レジー、イシャスにもなんかいろいろあった気がする。魔導とは明らかに別の能力みたいなのが。
 それとも……あいつら五十年前から年を取ってないのも、その辺が関係していたりしてな。

「私は……なんだろう」

 考えてみても、私には自分に特別な力が備わっているとは思えないんだけどなぁ。
 この力だって、師匠の訓練のたまものだと思うし。

 今日まで生きてきて、みんなと違うと思ったことなんて……

「あー……あったなぁ」

 自分の髪を触り、私はつぶやいた。
 この黒い髪が白く変わる現象だ。あの時の魔力の昂りは、今でも思い出せる。

 もしかして、あれがそうなのだろうか。髪が変色するのも初めての事例らしいし。

「この世界に生まれ直した人間は、そのほとんどが黒髪黒目となっている。滅多にないことなので、世界中での目撃事例は少ない……」

 てか、普通に別の世界が存在する前提で書いてあるなこの本。なんだか確信めいたものを感じる。
 私としてはそこからわけわかんないんだけど……

 まあでも、そこに疑問を持ってたら進まないってことか。

「でも、こんな本があるなら……少なくとも王様とかは知っといてくれてもよさそうだけど」

 この区域に立ち入ることのできる人間は限られている。加えて、立ち入る権利のある人間だってみんながみんな読書が好きなわけではない。
 ジャンルを絞ればなおさらだ。

 でも、王様って立場の人なら……知っていそうなものだけどなぁ。
 私を見てもなんにも言わなかったし。
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