史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第十二章 中央図書館編

922話 善か悪か

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 まんまりダークエルフについてしつこく聞いたら、不審に思われるかもしれないな。

「エランちゃんがそこまで気にしているってことは、なんかあるんだろうしね」

「え、なに?」

「なんでもないよ」

 うーん……マーチさんなら、ルリーちゃんがダークエルフって知ってもなんとも思わないかなぁ。
 いやいや、クレアちゃんの反応を見ても、そう判断するのは早すぎるだろう。

 どのみち、ルリーちゃんもいないところで私が勝手に決めていいことじゃないな。

「過去になにが起こったのか……歴史を追求していくのも、マーは楽しいんだよね」

「普段いろんな研究をしているんだろうに、歴史の勉強までしてるの?」

「ま、趣味みたいなものだからね」

 見た目は子供のようでも、その中身はしっかりと大人だ。
 私どころか、多分サテラン先生よりも年上っぽいし。やっぱり人は見た目じゃわからないよね。

「ところで、さっき見せてくれた紙のことだけど……」

 と、マーチさんは先ほど見た『魔力枯渇による種族変化について』と書かれた紙について話を戻す。

「それを落とした相手、本当に心当たりないの?」

「うん……男の子ってことは、わかったんだけど」

「そっか」

 エルフもいなかったこの国で、こんな情報を持っている。それはもしかして……エルフ本人なのではないか。マーチさんは多分そう考えている。だって私もそう考えているから。

 もしかしたらあの時、図書室にエルフがいて……その人が、私にこの紙を落としていったのかもしれない。
 とはいっても、学園にいるエルフはラッヘとウーラスト先生だし、そもそもラッヘは記憶喪失だし。ウーラスト先生なら黙っていないくなる意味が分からないし。

 ……謎だ。

「あのあと、それとなく探してみたんだけど……それらしい人は見つからなくて。まあ手掛かりがそもそもないんだけどね」

 どこの誰が落としたものかわからないものを、その落とし主を探すのは……思っていた以上に難しい。
 学園内でのことだから、学園内の生徒……ってことは確かだろうけど。

「ちょっと、私の方でも調べてみるよ」

「! 落とし主を?」

「いや、そっちはさすがに……
 こっちの、紙に書いてある内容の方」

 魔力の枯渇で、記憶に障害を負うことがあるのか。確かに私が調べるよりも、マーチさんに調べてもらった方がいいだろうしね。
 とはいえ、身近にエルフがいるのは私の方なんだし。ダメもとでウーラスト先生にも聞いてみるかな。

 もしも、この紙に書いてあることが真実だとしたら……学園祭で会ったリーフェルさんは、その昔ダークエルフの村にいたハーフエルフのリーフェルと同一人物の可能性が高くなる。
 ダークエルフと一緒に過ごした人……なにより、ルリーちゃんのお友達だ。

 っても、もしもあの時の事件が原因で記憶を失ったのなら……そのことを思い出させるのは抵抗感あるしなぁ。

「……それに、エランちゃんも記憶喪失だって言うし……」

「ん、どうかしました?」

「いや、なんにも」

 なんだか、マーチさんの視線を感じたんだけど……まあ、いっか。

 ともあれ、この中央図書館の限定区域でわかったこともあるし、マーチさんと会えたおかげで調べてくれるとなったのもありがたい。
 私としても心強いよ。

「さてと。マーはそろそろ行こうかな」

 と、マーチさんは立ち上がる。

「エランちゃんは、どうする? 閉館時間までまだ時間はあるけど」

「うーん……せっかくだし、もうちょっとここに居ようかな」

 せっかく許可をもらって居るのだ。気軽に来れるところでもないし、せっかくだからもうちょっと。
 それを聞いたマーチさんは「そっか」とうなずいた。

「じゃ、マーが言うのもなんだけど調べ物はほどほどにねー」

「うん、またねー」

 お互いに手を振り、マーチさんの背中を見送る。
 彼女の背中が見えなくなったところで、私は頭の中のクロガネに語りかけた。

「それで、さっきの話どう思う?」

『ダークエルフが善か悪かについてか? 正直、我にもピンとこない話だな』

 クロガネはダークエルフに対しては、悪くは思っていないようだ。
 まあそもそも、竜族という強大な存在が他種族のことを気にすることがあまりないってことらしいんだけど。

 そのクロガネが、さっきの話を聞いてどう思ったのか。

『ダークエルフが過去になにをしたのか……我もそれは知らないが、もしも先ほどの予想が正しければ、契約者にとっては良きことではないか?』

「うん。ルリーちゃんがみんなと仲良くなれるかもしれない」

 みんな、ダークエルフを恐れるように呪いが本能に刻まれている。それを取り除くことが出来て、そして本に書いてあることも嘘だったとなれば。
 それは、ダークエルフとみんなが歩み寄る大きなきっかけになるはずだ。

 ノマちゃんやクレアちゃん、ラッヘたちのことについて調べにきたけど、まさかダークエルフにも進展があるとはね。

「よぉし。これからダークエルフのことについて、もっと調べてみるぞ」

 ただ、書物で調べるには限界がある。となれば、ダークエルフのことはダークエルフ本人に聞くか……
 ダークエルフの呪いについて言及した、あいつらに話を聞きに行くか。
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