950 / 1,141
第十二章 中央図書館編
937話 私は怖いもの知らず
しおりを挟むお昼休みが終わり、私たちはそれぞれの教室へと戻る。
ヨルとマヒルちゃんについては、お互いよく話し合ってみるとのことだ。
教室へと戻るそんな中……
「お、エランちゃんじゃーん」
「! ピアさん」
向かいから歩いてきたピアさんと、ばったり会った。
ひらひらと手を振るピアさん。そしてその隣にはレニア先輩がなにかを手に持って運んでいた。
……小人族だから仕方ないんだけど、こうして見るとまるで姉弟のようだ。
そして弟に荷物を持たせている姉にしか見えない。
「今食堂帰りかな?」
「うん。ピアさんたちは?」
「今から昼食だよー。つい時間を忘れちゃって」
「そのついでに、この資料を職員室に届けに行くんです」
「なるほど」
ってことは、レニア先輩はピアさんと一緒に研究室にでもいたんだろう。
文化祭のときも協力してたし、やっぱり……そういうことなのかな。
ま、そうだとしてピアさんは気持ちにはまったく気付いてなさそうだけど。
「? どうかした?」
「いや……
そういえばピアさんは、他学年試合には魔導具は使うの?」
「そりゃもちろんだよ!」
当然だ、と言うように胸を張るピアさん。
それから、にんまりと笑った。感情がリンクしているのか、頭に生えている猫耳もピコピコと動いている。
「アタシの魔導具の改善点は、アンタさんが示してくれたからね。試合の時には、あれ以上のものを完成させるからね」
自信満々に話す。私がゴルさんとの決闘の時に使わせてもらった『魔力剣』、あれの改善点はいろいろと見つかった。
それを踏まえ、また新しい魔導具作りに挑戦しているのだ。すごいなぁ。
「アンタさんも、またアタシの魔導具が使いたくなったらいつでも言いにきなよ。もちろんキミたちもね」
「あ、はいっ」
「じゃねー」
手をひらひらと振り、ピアさんは歩いていく。その後ろに着いていくように、レニア先輩も。
センパイは両手が塞がっているから、軽く会釈をしていた。
その後ろ姿を見送りつつ、ナタリアちゃんははっと息を漏らす。
「あの人が、魔導具作りに熱を注いでいる先輩か。エランくんはすっかり仲良しみたいだね」
「えへへ、まあねー」
「魔導具に詳しい上級生と仲を深めているのは、うらやましいものだよ」
「? ナタリアさんは、魔導具に興味があるんですか?」
ルリーちゃんの質問に、ナタリアちゃんは「まあね」とうなずいた。
「みんなも、それなりにあるだろう?」
「まあ、ね。というか、エランちゃんの決闘の様子を見て興味を抱いた子もそれなりにいるみたいだし」
ピアさんの魔導具を使ったことはある。でも今度は、ピアさんの魔導具と対決するようなことがあるかもしれないのか。
ピアさんはさっきああ言ってくれたけど、今回私は魔導具なしで行こうと思う。"賢者の石"ももちろん、ね。
私とクロガネで、どこまで行けるか試してみたいもんだ。
「みんなどんな使い魔や魔導具を駆使して戦うのか。想像するだけでもわくわくしちゃうよ」
「本当に戦闘狂だなー、エランは」
「おにぃ、女の子にそういう言い方はよくないよ」
そんな会話をしながらも、それぞれ教室の前で別れる。
みんなとおんなじ教室だったらきっと毎日がもっと楽しいんだろうけど、そんなことになったら授業どころじゃなくなる気もするな。
教室に入り、次の授業の時間まで待つ。そして、チャイムが鳴る。
ガラガラと扉が開き、先生が入ってくる。
こうして、お腹いっぱいの午後も授業が始まっていくのだ。
――――――
「いやあ、ゴルさんのおかげでいろんな調べ物ができたよ。感謝感謝」
「……それがなによりだな」
放課後、生徒会室で……と、いつもの流れならそこでゴルさんにお礼を言う。
だけど、私がゴルさんに会ったのは放課後ではなく、授業中だった。
というのも、先生が入ってきたはいいが、次の授業は急遽自習になった。
なので私は教室から出て、ぶらぶらとしていたところだ。そしたら、ゴルさんに会ったのだ。
「放課後生徒会室に来ないなら、今のうちにお礼言っておこうと思ってね」
そう、ゴルさんは今日は生徒会室には来ないらしいのだ。
というか、今日は午前から学園にはいなかったらしい。今ここにいるのは、午後に用があったからだ。
「礼を言うのは感心するべきことだな。だがそもそも、自習時間は自由散策をする時間ではないぞ」
「まあまあ、凍魔界ことは気にしなさんなよ」
「はぁ」
それにしても、学園の廊下で次期国王と立ち話をしているって、冷静に考えなくてもすごい光景だよな。
よくクレアちゃんたちに、私は怖いもの知らずとか言われるけど……こういうところなんだろうか?
さて、ゴルさんへのお礼も済んだところで……
「あ、ちょっとゴルさん。私言いたいことがあるんだけど」
「なんだ」
「黒髪黒目の人間のこと、書いてある本を限定区域で見つけたよ。もー、そういうのがあるなら教えといてよ」
図書館で見つけた、一冊の本。そこに書いてあったことだ。
黒目の人間に関すること、別の世界への存在……そういう本があったのだ。
ゴルさんなら当然、そういう本も見たことがあるだろう。ならば、事前に行ってくれればよかったのに。
「……なに?」
だけど、ゴルさんは眉を寄せて。
「……そんな本、俺は見た事がないぞ?」
と、困惑気味に言ったのだ。
10
あなたにおすすめの小説
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
追放したんでしょ?楽しく暮らしてるのでほっといて
だましだまし
ファンタジー
私たちの未来の王子妃を影なり日向なりと支える為に存在している。
敬愛する侯爵令嬢ディボラ様の為に切磋琢磨し、鼓舞し合い、己を磨いてきた。
決して追放に備えていた訳では無いのよ?
わけありな教え子達が巣立ったので、一人で冒険者やってみた
名無しの夜
ファンタジー
教え子達から突然別れを切り出されたグロウは一人で冒険者として活動してみることに。移動の最中、賊に襲われている令嬢を助けてみれば、令嬢は別れたばかりの教え子にそっくりだった。一方、グロウと別れた教え子三人はとある事情から母国に帰ることに。しかし故郷では恐るべき悪魔が三人を待ち構えていた。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
濡れ衣を着せられ、パーティーを追放されたおっさん、実は最強スキルの持ち主でした。復讐なんてしません。田舎でのんびりスローライフ。
さら
ファンタジー
長年パーティーを支えてきた中年冒険者ガルドは、討伐失敗の責任と横領の濡れ衣を着せられ、仲間から一方的に追放される。弁明も復讐も選ばず、彼が向かったのは人里離れた辺境の小さな村だった。
荒れた空き家を借り、畑を耕し、村人を手伝いながら始めた静かな生活。しかしガルドは、自覚のないまま最強クラスの力を持っていた。魔物の動きを抑え、村の環境そのものを安定させるその存在は、次第に村にとって欠かせないものとなっていく。
一方、彼を追放した元パーティーは崩壊の道を辿り、真実も勝手に明るみに出ていく。だがガルドは振り返らない。求めるのは名誉でもざまぁでもなく、ただ穏やかな日々だけ。
これは、最強でありながら争わず、静かに居場所を見つけたおっさんの、のんびりスローライフ譚。
平凡な王太子、チート令嬢を妻に迎えて乱世も楽勝です
モモ
ファンタジー
小国リューベック王国の王太子アルベルトの元に隣国にある大国ロアーヌ帝国のピルイン公令嬢アリシアとの縁談話が入る。拒めず、婚姻と言う事になったのであるが、会ってみると彼女はとても聡明であり、絶世の美女でもあった。アルベルトは彼女の力を借りつつ改革を行い、徐々にリューベックは力をつけていく。一方アリシアも女のくせにと言わず自分の提案を拒絶しないアルベルトに少しずつひかれていく。
小説家になろう様で先行公開中
https://ncode.syosetu.com/n0441ky/
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる