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第十二章 中央図書館編
938話 ご内密にー!
しおりを挟む黒髪黒目の人間について書かれた本。私はそれを見て、ヨルやマヒルちゃんの言っていた"別の世界"という認識を改めた。
そして、そういう本があるということは、ゴルさんも目にしたことがあると思っていたんだけど。
……見たことがない、だって?
「……ゴルさん、もしかしてあんまり読書とかしない人?」
「失礼なやつだな。これでも一通りの本には目を通している。もっとも、物量的な意味でも全ての本にまで目を通せる訳ではないが」
それはそうだろうな。中央図書館にある本は、限定区域も含めれば一生をかけても読み切れないほどの量の本が並んでいると聞いたし。
ゴルさんはまだ十代だし、まして王族の仕事もあるんだろうし、学生だし。
読める量は限られているだろう。
「それでも、気にかかったことは調べるようにしている。お前のこともそうだ」
「私? いやん」
「茶化すな。お前のような特徴の人間、この国で見たことがないからな。そういった人種は居るのか、調べてはみたさ。もしかしたら、とても珍しい種族ではないかとかな」
腕を組み壁にもたれるゴルさんは、淡々と話す。
ただそれだけのことなのに、様になってんなぁ。これがカリスマ性ってやつか? 違うか。
ともかく、ゴルさんも調べてはくれたんだ。
「だが、そういった記載のある本は見当たらなかった」
「ゴルさんが見落としてただけじゃないの? 普通に種族別のジャンルの本棚にあったよ?」
「……見落としてないか、と確信を持って言えるほど自分に自信があるわけではないが。少なくとも、俺の記憶ではその棚にあった覚えはない。
そもそも、俺よりもマーチの方が様々な本を読んでいるだろうが……お前を見た時も、なにも言わなかっただろう」
「それは確かに」
あれだけ研究熱心な人なら、確かにいろんな本を読んでそうだもんなぁ。
そのマーチさんが、私を見てなにも言わなかったわけだし。その後調べてわかったことがあったとしたら、なんか言うだろうし。
そうなると……どういうことだ?
「私にしか見つけられなかった本?」
ゴルさんもマーチさんも、そして王様とかそれ以外の人も……誰も私のこの黒い髪や目を見てなにも言わない。
誰も 、あの本を見たことがない。のだとしたら。
あの本は、私にしか……いや、黒髪黒目の人間にしか見つけられない?
「うーん……」
ありえない……とは言えないよなぁ。そもそも魔導を駆使すれば、不可能なことなんてほとんどないんだし。
ただ、もしそんなことがあったとして、いったいなんのために?
「しかし、お前は自分のことには興味がなさそうだったのに、それを調べるとは意外だな」
「人を冷徹な人間みたいに言わないでよ。……ま、いろいろあってね」
最初から黒髪黒目のことを調べようと思っていたわけじゃないし。ま、その場の流れっていうかね。
しかし、私にしか見つけられない本か。もしそれが本当なら、また改めて読んでみる必要があるかもな。
なんか、特別感あるし。
「なにかわかったことでもあれば、マーチにでも話してやれ。あいつは知らないことを知るのが一番楽しいらしいからな」
「あはは、マーチさんらしいや。そのマーチさんにたまたま会ったんだよね。
ノマちゃんのこと引き続き調べてくれてるみたいだし、ありがたいよ」
「……その後、変わった様子はないか?」
「すこぶる元気だよ」
ノマちゃんの件は、クレアちゃんとは違って結構知ってる人は居る。なにせ"魔死事件"の件が大きくなっちゃったからねぇ。
でも、その後生き残ったって情報しかほとんどの人は知らない。"魔人"云々は、それこそ一部の人だけだ。
マーチさんが調べ、同じ部屋の私や同じクラスのコーロランが気をつけて見ておく。
ま、コーロランも"魔人"がってことは知らない。事件の後気をつけて見ておいてくれ、とゴルさんに言われたくらいだ。
「コーロランには、詳しくは伝えてないんだよね?」
「……俺たちすら、わかっていることが少ないんだ。中途半端な情報を与えて混乱させることもない」
「そりゃそうだ」
ノマちゃんの身体のことを知ろうが知るまいが、彼女の身体に異変がないか見ておく……それは変わらないんだ。
もちろんコーロランを信頼してないわけじゃないけど……あんまり広めたい話でもないだろう。
……それ以前に、だ。
『コーロラン様には、わたくしの身体のことはぜひご内密にー!』
と、ノマちゃんから必死にお願いされたのだ。
どうにも、身体に異変が起こってしまったことで心配させてしまうのは忍びないことと、なんだか恥ずかしいのだと。
好きな人に心配されたいが、自分のために心配させたくない。そんな乙女心があるのだ。
「みんな、それとなく心配はしてくれてるけどね」
ノマちゃんが"魔死事件"の被害者で生き残りということは、周知の事実なんだ。
だからだろうか、みんな以前よりノマちゃんのことを気にするようになった。気がする。
ノマちゃん自身、いつも元気ハツラツだから、一時は生死をさまよったという事実すら忘れてしまいそうだけどね。
「……黒髪黒目に、"魔人"。ここ何十年となかった事態が、一度に押し寄せてきているな」
窓の外を見ながら、ゴルさんはそうつぶやいた。
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