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第十二章 中央図書館編
942話 久しぶりのお茶会
しおりを挟む「こくっ……あー、紅茶おいしい」
「ふふ、よかったです」
放課後、私はカリーナちゃんたちに誘われ、久しぶりにお茶会に参加していた。
最近は生徒会やらなんやらで、参加できてなかったからなぁ。
久しぶりに飲む紅茶も、おいしい。
「やっぱりエランさんがいると華やかになりますわねぇ」
「そっかなー?」
私の他に参加しているのは、主催者のカリーナ・レンブランドちゃん、ロリア・サラメちゃん、ユージア・ワクニンちゃん。私が最初にお茶会に誘われた時のメンバーだ。
クレアちゃんは、今日はいない。
そして、この場にいるのはもう一人。
「ぷはーっ、本当においしイ!」
ずずっと紅茶を飲み干す、リーメイだ。下半身がお魚でも、ちゃんと椅子に座れている。今さらではあるけど器用なものだ。
なぜ違うクラスのリーメイがいるかというと、一人で散歩していたところ私たちを……というより私を見つけて駆け寄ってきたのだ。
そのまま流れで、お茶会を一緒することに。
「ありがとねー、リーも一緒におちゃ……かイ? していいって言ってくれて!」
「構いませんわ。エランさんのお友達なら私たちのお友達も同じですもの」
「えぇ」
「そうですそうです」
みんなも、いきなり現れたにもかかわらずリーメイには優しく接してくれている。
リーメイはニンギョという種族で、私とは別のクラスだから……ちゃんとみんなと馴染めているか心配な部分はあった。
でも、別のクラスのカリーナちゃんたちと会ってすぐ仲良くできるなら、心配いらないかな。
それに、同じクラスのナタリアちゃんからもちょいちょい話を聞いてるし。あとは、生徒会のシルフィ先輩にリーメイの名前出して遊ん……気にかけてみたりとか。
なんか、ちょくちょく連絡取ってるらしいんだよなー、この二人。
「エランの友達いい子ー、というか学園のみんないい子!」
「気に入ってもらえてるならよかったよ」
リーメイはパクパクと茶菓子を食べながら、毎日楽しいのだと話す。楽しいのならなによりだよ。
ニンギョなんて私だけじゃなく、この国でも見たことがないし。みんながどんな反応をするんだろうと思っていたけど。
結果、仲良くやれているのだ。
「それにしても、エランさんには驚かされますわね。魔導大会のときにいきなりいなくなったかと思えば、黒竜を使い魔にしてエルフや人魚の方と一緒に帰ってきたんですもの」
「いなくなったのは私のせいじゃないんだけどねー」
「本当に心配したんですよっ」
どうやらみんなに心配をかけていたらしいというのは、帰ってきてからの反応を見てわかった。
私のせいじゃないとはいえ悪かったなと思う一方で、それだけ心配してくれる人が居るのは嬉しいなとも思った。
って、確かにカリーナちゃんの言うように、とんでもないことしてるな私。
「でもリーは、エランに会えてよかったよ! おかげでみんなにも会えたし!」
「リーメイさん……」
「かわいいことを言ってくれますね」
リーメイの発言にキュンときたらしいカリーナちゃんとユージアちゃんが、それぞれ左右からリーメイの頭を撫でる。
リーメイは「くすぐったいー」と言いながらも嬉しそうだ。
「すっかり馴染んでますね」
「だねー」
クラスが別だと不安なこともある。でも、リーメイならうまくやっていける。クラスの子もいい子ばかりだしね。
「あ、そうだ。エランさんに聞きたいことがあるんでますけど……いいですか?」
「私? なになに?」
あ、と思い出したようにロリアちゃんが私に話があると言う。
ロリアちゃん。元は平民だったけど、親が再婚したことで貴族になった……が、そのことでいろいろ苦労してきたらしい子だ。
私も平民で貴族みたいなもんだから、ちょっとだけ親近感。まあ私は貴族だ平民だと気にしないけど。
「その、アレクシャン様のことなんですが……」
「……?」
「いや、そんな『誰だそいつ』みたいな顔されましても」
ロリアちゃんの口から出てきた『アレクシャン』という名前。名前……だよな、様って言ってたし。
誰だっけな、アレクシャン、アレクシャン……聞き覚えはあるんだけどな。
「ブラドワール・アレクシャン様のことですよ」
「……? ……待って、今ここまで思い出してるから……あとちょっとだから、先っちょだけだから」
「なにがです?」
うんうんと考えて考えて……「あぁっ」と思い出した。
「あれか! 筋肉男か!」
「……筋肉?」
そうだよ、筋肉男の名前が確かそんな感じのやつだった。はずだ。
名前覚える気がなかった……というかあだ名が定着しすぎててすぐに出てこなかったよ。まあ私が勝手にそう呼んでるだけなんだけどさ。
その筋肉男について話がある、と。
そういえばロリアちゃん、入学して教室に来たその日に筋肉男に席取られてたな。
あれ以来、特に二人にこれといった関係はなかったとは思うけど。
「どうかしたの? まさかまたいじめられてるの?」
「いえ、そういうことではなくてですね……」
あの男、女の子に優しい雰囲気を出しているけど、なんだかんだ自分大好き人間だからな。またロリアちゃんになにかをしてもおかしくはない。
なにかあったのかと問いかけると……ロリアちゃんはなぜか顔を赤らめて、もじもじしていた。
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