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第十二章 中央図書館編
941話 すっかり慣れちゃった
しおりを挟む「大切な人からの贈り物か。ま、大切にする気持ちはわかるけどね」
しみじみと言うクレアちゃん。もしかして、クレアちゃんにもそういう経験が!?
「でっしょー。もしかしてクレアちゃんも、タリアさんからなにかもらってたり?」
「別にないわよ」
クレアちゃんは首を振る。照れ隠し、ってわけじゃなさそうだ。
私、一日に何度このネックレスを眺めているかわからないな。
師匠の髪の色と同じ、金色の宝石のようなものがはめ込まれている。もしかして高価な宝石かな? と思ったりもしたけど。
どうやら、特に価値のあるものではないらしい。一応調べてはもらったんだ。
まあ、とっても高価なものだったとしても手放したりはしないけどね。
「それにどう? 私ってばおしゃれさんに見えるでしょ!」
「普段おしゃれに気を使わない子にそんなこと言われてもねぇ」
そんな会話をしながらも、自習の時間は過ぎていく。
あんまり魔導の話とかはしなかったけど、師匠の話ができたしまあいっか。
もうじき授業も終わると言ったところで、「ママーッ」と元気な声が私を呼んでいた。
「フィルちゃ……わっと」
駆けてきたフィルちゃんは、私の胸元に飛びつくようにダイブする。
小さい子でも、助走が加わればバランスを崩してしまわないように気をつけないと。
「どうフィルちゃん。自習の時間でみんなとたくさん話せた?」
「うん! あっちではもふもふも遊んでるよ!」
「そっか」
向こうでは、召喚されたもふもふがクラスメイトと戯れている。
魔物ではあるけど、今じゃすっかり懐いちゃったな。最初はみんなも驚いたけど、危険もないしね。
私としては、魔物……はわからないけど、フィルちゃんの使い魔として召喚されたのなら少なくとももふもふとみんなが仲良くしてほしい気持ちはある。
「ママたちは、どんなお話してたの?」
「えーと……」
クレアちゃんの身体のこと……は言う必要もないか。てか言ってもわからないだろうし。
「私の師匠のことをね」
「……ししょー?」
って、師匠のこともわからないか。一から説明しないと……
「エランちゃんのお父さんみたいな人よ」
「クレアちゃん!?」
「ママのパパ……おじいちゃん!?」
「違うよ!」
いや、そりゃ師匠のこと家族だとは言ったけどさ。その言い方はいろいろ誤解を招きそうだから!
あぁ師匠、今度再会した時あなたにお孫さんが出来てそうです。
「おじいちゃんではないけど、まー私にとって大切な人ってことだよ」
「そっかぁ。ママの大切、私も会ってみたいな!」
「あはは、私もー」
とはいえ、師匠が私とフィルちゃんを見たらどう思うかな。だって、娘みたいに思ってくれていたと思う私に「ママ」と呼び慕う子ができてるんだ。
まさか本当に私が生んだとは思わないだろうけど。
そういった意味じゃ、二人を会わせるのが楽しみなような怖いようなだ。
「……それにしてもさ」
クレアちゃんが机に肘を立て、手に顎を乗せながら私たちを見ている。
「なあに?」
「エランちゃんの周りって、記憶喪失の人間多いなーって思って。
ラッへちゃんでしょ、あのリーフェルって人もでしょ。フィルちゃん……は記憶喪失なのかはまだよくわからないけど。なにより、エランちゃん自身がそうだし」
クレアちゃんの指摘するように、私の周り……確かに多いなぁ記憶喪失の人。
しかもどちらもエルフ。まあリーフェルさんの場合はほぼエルフで間違いないだろうってレベルだけど。
……リーフェルさんがルリーちゃんの友達だったハーフエルフのリーフェルって人の可能性は高くなったけど、それを本人やルリーちゃんに伝えるかどうかは、まだ検討中。
「どうしてだろうねー、あはは」
「というか、エランちゃんを中心にいろんな人が集まっている感じがするのよね。そういう星のもとに生まれたのかしら」
「いろんな子と友達になれるのは素直に嬉しいんだけどねー」
「前向きねぇ」
私の周りに個性豊かな子が集まるってのは、それだけいろんな子と仲良くできるってことだ! それってとてもすごいことだと思う!
クレアちゃんは前向きだと言うけれど、前向きなのが私の取り柄だ! 多分!
「ママ、前向き、すごい!」
「えへへ、でしょー?」
抱きついたままのフィルちゃんの頭を、なでなでしてやる。やっぱりかわいいねぇ。
それにしても、ママって呼ばれるのにもずいぶんと慣れたなぁ。最初の頃は、そりゃ戸惑ってばかりだったけどさ。
でも、いつの間にか自然と受け入れている自分がいるのも事実なんだよなぁ。不思議だぁ。
「でも、フィルちゃんの本当のお母さんも見つけないとねぇ」
「?」
結局、フィルちゃんの両親を探してもらっているけど大した進展はないみたいだ。フィルちゃん自身が両親のことを覚えてないのもそうだし、なにより捜索願的なものも出てない。
こんな小さな子が行方不明になったら、すぐさま捜索願的なものを出しそうなものだけどなぁ。
だから、探しようがない……ってのが問題だ。
「ママはママだけだよー?」
訳がわかってないフィルちゃんは、私の胸に顔を埋めてくる。
うーむ、やっぱり嬉しいようでちょっと複雑な気持ちだぁ。
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