史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第十二章 中央図書館編

940話 私の宝物

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 そういえば、師匠の本って普通に売ってるみたいだけど、私見たことないなぁ。まあわざわざ探そうとも思ってなかったんだけどさ。

「サリア、普段はおとなしいし気遣いもできるしで、いい子なんだけどねぇ。グレイシア様の話になると人が変わるというか」

「ははは、師匠のことをそんなに好きな人がいるなんて嬉しいよ」

 師匠のことを好きどころかもはや神とさえ呼んでいるサリアちゃん。最初は少し引いちゃったけど、それほどまでに師匠のことを好きな人がいるというのはいいことだ。

 師匠がそんなにすごい人だなんて、この学園に来て初めて知ったわけだしね。
 普段から一緒に暮らしていると、そんなにすごいってわからないもんだよ。

 いや、そりゃかなり凄腕の魔導士なんだなとは思っていたけどさ?

「そりゃあ、魔導に携わっててグレイシア・フィールドの名前を知らない人はいないわよ。
 いや、もはやどの分野でも名前を残してるから、知らない人のほうが少ないんじゃない」

 魔導士としてはもちろん、冒険者や魔導具技師としても名前を残しているって言うんだからなぁ。
 しかも本まで出してるんだし、有名になる要素しかない。

 これだけ聞くと、とんでもなく雲の上の存在みたいだな。

「グレイシア様の弟子……そういう意味でも、エランちゃんが有名になるのも必然ではあるわよね」

「えへへへ」

「ま、グレイシア様の弟子とは関係ないところで暴れまわってるのも大きいけど」

 私の名前はもはや、学園の中だけでなく外にまで広まってしまっている。

 有名になって、いずれ最強の魔導士になるつもりの私としては、自分の名前が広まるのは望むところではある。
 そして、国の外にまで名前が轟くような存在になりたい。

 ……そうすれば、どこにいるかもわからない師匠に私は元気でやってることを伝えられるかもしれない。

「グレイシア様とずっと二人暮らし、か……なんだか自分に置き換えると、とんでもないことよね」

「師匠は私にとって師匠で、親でお兄ちゃんみたいなものだよ。あとたまに手間のかかる弟になるよ」

「偉大なエルフが十代の娘の弟って……」

 肩書きだけ見ればとても手の届かない存在だけど、師匠だって普通のエルフなんだ。まあ私は普通のエルフを知らないわけだけどさ。

 一緒に暮らして、良いところも悪いところも見えて……それでも、楽しかったんだ。家族みたいさ。
 ま、師匠の本当の娘はちゃんといるわけだけど。

「あー、師匠の話ししてたら師匠に会いたくなってきたよー」

「……生まれてからずっと一緒にいた人と離れて暮らすってのは、なんだか妙な気分よね。グレイシア様がどこにいるかはわからないんだっけ?」

「ぜーんぜん。多分どっか旅してるんじゃないかな」

 元は旅人の師匠。私がいなくなったことで、また旅に出た可能性は高い。
 私と暮らしていたときならともかく、一人であそこに住み続ける理由はないんだし。

 どこに行くって聞いたわけじゃないし、聞いても答えてくれなかっただろうけど。

「旅ねぇ」

「そ。いつか再会したら、みんなを紹介したいな。こーんなに友達ができたよってね」

 師匠がこの学園を勧めてくれたから、私はここに来て……いろいろなことがあって、たくさんの友達ができた。
 もちろん、魔導だってかなり上達した。はずだ。まだまだ師匠には遠く及ばないだろうけどね。

「ふふ、そのときは楽しみだけど、緊張しちゃいそうね。サリアなんか特に」

「あははは、確かにねー」

「……グレイシア様にとっても、エランちゃんのこと娘みたいに思ってたんじゃない? そんな子が、こんな風に笑ってるの見たら、喜ぶと思うわよ」

「! そ、そっかなー」

 な、なんだよぅクレアちゃん……いきなりそんなこと。て、照れちゃうじゃんか。

 師匠にとって私はどんな存在だったのか。ただの弟子だったのか、それとも……?
 少なくとも、娘のようには感じてくれていたのかなと思う。この『エラン』って名前が、その証のように思えるから。

 私は、首から下げているネックレスにそっと触れた。

「……それ、グレイシア様からの贈り物なんだっけ?」

「うん、別れるときにもらったんだー」

 これは、私が学園に向けて発つときにもらったもの。私の宝物だ。
 そういえば、この国への道すがらネックレスに触れてきた盗賊をボッコボコにしたっけなぁ。今となったらいい思い出……いや良くはないな。

 これを私は、ずっと身につけている。

「本当はお風呂にも持っていきたいんだけど、さすがにねー。それ以外のときは、肌見放さず持ってるよ」

「よく今までのゴタゴタで傷つかなかったわね。それとも、試合とか決闘のときはさすがに外してたの?」

「いや、私にとってお守りみたいなものだから、そういうときこそかけていったよ。
 このネックレスだけは傷つけるわけにはいかないから、特別なバリアでガッチガチに守ってるんだよ」

 そう、このネックレスは絶対に傷つかないよう、常に守っている。もしも誰かに傷つけられたら、そのときはもう自分で自分がどうなっちゃうかわかんないしね。

 寮での部屋ではもちろん、学園での授業中も休日も寝るときも……魔導大会でも魔大陸に行ったときも。ずっと持っている私の宝物だ。
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