史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

文字の大きさ
961 / 1,142
第十二章 中央図書館編

948話 年を取らない理由

しおりを挟む


 エレガたちにかけた魔法、それが『絶対服従』。基本的に私の命令には従ってしまうものだ。
 だけど、あんまり私の命令が突飛すぎたり、命令に従うことで命の危険があるようなものには従わない。なんとも妙な魔法だ。

 これは尋問とかに使えそうなような、使えなさそうなような。
 ともかく、こうして抵抗せず牢に繋がれていろ……って命令くらいならば従ってしまうわけだ。

「それにしても、すさまじい持続力だな。それも、一人でなく複数にかけて……か」

「私も、人に試すのは初めてだからこんなに長続きするなんてびっくりだよ」

「おい、今とんでもないこと言ったぞこの女」

 これは師匠から教えてもらった魔法だけど、あんまり多用しないようにとも言われていた。
 そもそも『絶対服従』なんて言葉がまずいいイメージがないしね。使うならば最低限だ。

 これは多分だけど、私の魔力が尽きない限りは持続する魔法だ。人数が増えればそれだけ使う魔力も増えるわけだけど、これはクロガネと契約したことでほぼ心配することはなくなった。
 クロガネの魔力も合わせればそれは莫大だからね。

 それにしても、相手を服従させる魔法なんて、それだけ聞いたら闇の魔術みたいだ。これは魔術でもなく魔法なんだけどね。

「……あんたたち、テンセイシャだって前に言ってたよね」

「あん?」

 この場にはゴルさんもいるけど……ゴルさんなら、特に取り乱すこともないだろう。それに、知っておいて損はないはずだ。

 魔大陸でこいつらと戦った時、『せっかくこの世界にテンセイしたから好きに暴れまわってやる』……みたいなことを言っていた。
 そのテンセイという言葉は、初めて会ったヨルが使っていたもの。

 そして……ヨルとマヒルちゃんが使っていた言葉で、あの本に書いてあったこと。別の世界で死んだ人間が、この世界に生まれ変わること。
 それがテンセイ……転生だと。

「なにを聞きに来たかと思えば。そんなこと確認してどうするつもりだよ」

「別にどうするってことはないけど……ただ、知っておきたいんだ」

「はぁん……言った通り、俺たちは転生者だ。今さら……いやそもそも最初から隠すつもりなんてないけどな」

 まあ自分たちで言っていたんだもんな、転生者だって。
 それでも、こうしてちゃんと向き合って聞くのは初めてだ。

 そして、これも……なかなかタイミングが掴めなくて、聞けなかったけど。

「あんたたち、どうして年を取らないの?」

「……」

「なに?」

 押し黙るエレガ。そして後ろでゴルさんは困惑の声を上げている。
 それも当然だろうな。私は五十年前のことを誰にも話してないし、ゴルさんでも知らないのは無理はない。

 ……ダークエルフの件に触れることになる。でも、ゴルさんなら……あくまでもルリーちゃんとかの部分は隠して……

「五十年前、あんたたちはダークエルフの故郷を襲ったね。そのときから、容姿がまったく変わってないのはどうして?」

「……どういう事だ。エラン」

「ごめん、後でちゃんと説明するから……」

 説明といっても、ルリーちゃんのことは話せないから……そこを省いて、どう説明をしようか。
 そもそも私がダークエルフであるルリーちゃんの記憶を見たから知ったわけで。

 知った経緯からなんか躓きそうな気がするんだけど……まあ、なるとかなるよ多分。なんとかなれー。

「ダークエルフの故郷……? ……あぁ、はは。ありゃあ楽しかったなぁ。今思い出してもうずうずしちまうぜ」

「……っ」

 こいつ……! わざとか? わざとそんなこと言って私を怒らせようとしているのか?
 檻の向こう側にいるから私が手を出せないと思って、こいつ……!

「んな気にするようなことか? ダークエルフはこの世界じゃ嫌われてる……嫌われ者を掃除してやったんだ。むしろ感謝されるべき……」

「お前……!」

「エラン、落ち着け」

 牢の中のエレガに向かって足を進めるけど、ゴルさんに手首を掴まれその場で止められてしまう。

 そうだ、落ち着け……ここで暴れても、なんにもならないんだ。

「……ふぅ、うん、大丈夫だよゴルさん。
 ……話をすり替えるな。ダークエルフの話じゃない、年齢の話をしてるんだ」

「はは、そんな気になるか? 別にエルフだって五十年程度じゃ見た目も変わらない……どっちでも同じだろ」

「お前は人間だろ」

 こいつ、ずっと退屈だって言ってたな……まさか私との会話に楽しさを見出して、適当に話をしようとか思ってるんじゃないだろうな。
 そう思ってると、エレガが「はっ」と笑った。

「んな深い理由はねえよ。この世界に転生するとき、望みはないか聞かれたから老いない身体が欲しいって答えただけだ。まさか本当に年を取らねえとは思わなかったけどな」

「……」

「信じてねえ顔だな。あんたになら、これが嘘か本当かくらいわかるだろうが」

 ……確かに、『絶対服従』の魔法が効いている限り、下手な嘘や誤魔化しは通用しない。
 そう考えると、今の話は本当なのだろう。

 年を取りたくないと望んだからその身体が手に入っただって? どんな魔法だそれは。

「いいもんだぜ。若い身体のままってのは……好きに暴れられるし、なんでもやりたい放題ってな!」

 やたらと楽しそうに笑うエレガ。他の連中も、こんな感じなのだろうか。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

追放したんでしょ?楽しく暮らしてるのでほっといて

だましだまし
ファンタジー
私たちの未来の王子妃を影なり日向なりと支える為に存在している。 敬愛する侯爵令嬢ディボラ様の為に切磋琢磨し、鼓舞し合い、己を磨いてきた。 決して追放に備えていた訳では無いのよ?

わけありな教え子達が巣立ったので、一人で冒険者やってみた

名無しの夜
ファンタジー
教え子達から突然別れを切り出されたグロウは一人で冒険者として活動してみることに。移動の最中、賊に襲われている令嬢を助けてみれば、令嬢は別れたばかりの教え子にそっくりだった。一方、グロウと別れた教え子三人はとある事情から母国に帰ることに。しかし故郷では恐るべき悪魔が三人を待ち構えていた。

平凡な王太子、チート令嬢を妻に迎えて乱世も楽勝です

モモ
ファンタジー
小国リューベック王国の王太子アルベルトの元に隣国にある大国ロアーヌ帝国のピルイン公令嬢アリシアとの縁談話が入る。拒めず、婚姻と言う事になったのであるが、会ってみると彼女はとても聡明であり、絶世の美女でもあった。アルベルトは彼女の力を借りつつ改革を行い、徐々にリューベックは力をつけていく。一方アリシアも女のくせにと言わず自分の提案を拒絶しないアルベルトに少しずつひかれていく。 小説家になろう様で先行公開中 https://ncode.syosetu.com/n0441ky/

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。 それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない! しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。 ……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。 魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。 木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

濡れ衣を着せられ、パーティーを追放されたおっさん、実は最強スキルの持ち主でした。復讐なんてしません。田舎でのんびりスローライフ。

さら
ファンタジー
長年パーティーを支えてきた中年冒険者ガルドは、討伐失敗の責任と横領の濡れ衣を着せられ、仲間から一方的に追放される。弁明も復讐も選ばず、彼が向かったのは人里離れた辺境の小さな村だった。 荒れた空き家を借り、畑を耕し、村人を手伝いながら始めた静かな生活。しかしガルドは、自覚のないまま最強クラスの力を持っていた。魔物の動きを抑え、村の環境そのものを安定させるその存在は、次第に村にとって欠かせないものとなっていく。 一方、彼を追放した元パーティーは崩壊の道を辿り、真実も勝手に明るみに出ていく。だがガルドは振り返らない。求めるのは名誉でもざまぁでもなく、ただ穏やかな日々だけ。 これは、最強でありながら争わず、静かに居場所を見つけたおっさんの、のんびりスローライフ譚。

処理中です...