久野市さんは忍びたい

白い彗星

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第二章 現代くノ一、現代社会を謳歌する!

第74話 女の勘というやつです

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「……っていうことなんだけど」

 久野市さんに連れられ屋上に来た俺は、篠原 美愛みあさんについて聞かれていた。
 なんで久野市さんが彼女のことについて気になるのかは分からないけど、久野市さんが求めているならと答えることにした。

 俺はあまり彼女のことを知らないが、それでもいいのだろうか。

「……なるほど」

 俺の話を聞いて、久野市さんは静かにうなずいていた。
 話と言っても、火車さんに説明したのと同じような内容だ。俺がバイト先でお世話になっている人の娘さんで、この学校の先輩。ルアが連絡先を交換して、早速既読スルーされていたこと。

 これだけのことだ。久野市さんが気になるようななにかがあるとは、思えない。

「なあ、なんで美愛さんのことを気にしてるんだ?」

「……なんとなく、気になりまして。あれです、女の勘というやつです」

 うむむ、と考える様子を見せながら、久野市さんは答える。
 なんとなく気になった、女の勘、とは……まったく説明になっていないが。

 久野市さんと美愛さんに接点はないはずだ。なのに、俺たちの会話を聞いただけで、気になることとはなんだろうか。

「すみません、わざわざ貴重なお時間を使わせてしまって」

「いや、それはいいんだけど……
 えっと、用が済んだなら、戻る?」

「はい、戻りましょうか」

 結局、久野市さんに呼ばれた理由は美愛さんについて聞くため……だったわけか。
 ただ、理由の理由はわからないまま、俺たちは屋上を後にする。

 ……屋上の鍵をどうするのかという疑問については、飲みこんでおいた。


 ――――――


 それから教室に戻った俺たちは、それぞれ昼食に移った。
 同時に教室に戻ったら変な勘繰りをされるので、時間はずらして戻った。

 その後、午後の授業を受け……放課後となった。

「さて……ん?」

 荷物をまとめ、帰ろうと教室を見渡すと……久野市さんの姿はなかった。
 久野市さんは部活には入っていないし、居ないということは帰ったのだろうか。でも、こんなそそくさとなんてどうしたんだろうか。

 そう疑問に思っていると……

「すみません主様、私は少し用事がありますので、先に帰っていてください」

 耳元で、声が聞こえた。
 こういう忍術だと言われていても、いきなり耳元で言われるとゾッとするよな。

 久野市さんの用事……とはなんだかわからないが、こちらから話しかけることが出来ない以上、その内容を知ることもできない。
 ……いや、知ることもできないってなんだよ。久野市さんのなんだよ俺は、キモいぞ。

 ま、久野市さんのことだしそんなに心配はしていない。
 ああ言っていることだし、帰るとしますか……

「おーい、木葉ー!」

「ん?」

 荷物を持ったところで、ルアが駆け寄ってきた。
 その顔には笑顔が貼りついていて、なにかいいことがあったんだろうなということが丸わかりだ。

「どうしたんだよ」

「実はな、この後美愛さんに誘われて一緒に帰ることになったんだよ!」

「へぇ……」

「「!?」」

 ルアの言葉は、予想もしていないものだった。ニマニマと笑顔を浮かべ、それがとても嘘や冗談のようには思えない。
 その宣言に、俺と火車さんは驚いた……

 ……ん? 火車さん?

「うぉっ、いつの間に!?」

 後ろを振り返ると、そこには火車さんの姿が。
 いつの間にいたんだ……まったく気が付かなかった。さすが元殺し屋。

 目を開け口を開け、仰天している。

「え、えぇと……本当に?」

 気を取り直して、ルアに聞く。先ほど嘘や冗談でないとわかっていながらも、確認せずにはいられなかった。
 するとルアは、大きくうなずいた。

「さっきメッセが来てさ。放課後一緒に帰らないかって!」

 嬉しそうにスマホの画面を見せてくるルア。
 画面を、見る。そこには確かに、この後一緒に帰らないかという誘いが書いてあった。

 ……なにがどうして、こうなったんだ?

「よ、よかったじゃんか?」

「おう! ってなわけで、今日は一緒に帰れねえわ! じゃ!」

 一緒に帰ろうという誘い……それを受け、もちろんと返信したルアは、そそくさと荷物を纏めて教室を出ていく。
 その嵐のような動きに、俺たちはしばし呆然と突っ立っていた。

 隣には、感情の読めない火車さん。
 なんか、話しかけにくいな……でも、このままって言うのもな。

「あの、火車さん……?」

「……尾けるぞ」

「はい?」

 短く言葉を発した後、火車さんは歩き出す。荷物を持ち、教室を出ようとして……足を止めた。
 そして俺を睨み、その目が語っていた……「来い」と。

「なんでこんなことに……」

 その圧に逆らえない俺は、観念する。
 この圧は、俺の命を狙ってきた時か、ひょっとしたらそのとき以上かもしれない。

 教室を出て、校舎を出て……歩くルアを発見。隣には美愛さん。
 ここからじゃなにを話しているかは聞こえないが、ルアから積極的に話しかけているように見える。

 美愛さんも、無表情だけど……別に嫌がってはいない、のか?

「ぬぐぐぐ……なんだよルアっちの野郎、あんな楽しそうにしてやがって……」

「うーむ……」

 果たして俺は、なんでこんな尾行のようなことをしているのだろう。
 ようなことっていうか、尾行だけど。

 それから、隣でずっと不機嫌な火車さんにはらはらしながら……二人が別れるのを見届けてから、俺たちも解散した。
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