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転生魔王は友達を作る
特訓開始
しおりを挟む「はい、あと少しですよ!」
「はぁ、はぁっ……も、もう許して……!」
どこからか持ってきたハチマキをあいは額に結び、なぐも先輩を走らせている。
ちなみにハチマキには『オニ』と書かれている。
オニコーチ、ということらしい。
特訓とは言うが、今のところはなぐも先輩を長距離走らせている。
グラウンドの外周を走らせたわけだが、なぐも先輩はすでに満身創痍だ。
俺とさなは、とりあえず成り行きを見守っていた。
「大丈夫、なんでしょうか?」
「大丈夫だと、信じたいがな」
この中で、一番運動ができるのはあいだ。
なので、あいに任せることにしたわけだが。
部活対抗リレーに勝つためとして、まずは個々の実力アップが望まれる。
その中でも、なぐも先輩は致命的だということだ。
このままではだめだと、あいは動いた。
「あいとさなは、中学の時女子テニス部だったと言うしな。
どうやれば体力がつくか、よくわかってるんじゃないか」
「私は全然ですよ。
あいちゃんに任せておいて……私たちは、私たちでやれることをやりましょう」
さなは、やれることをやろうと話す。
それもそうだな……なぐも先輩が遅くても、俺たちが頑張ればそれだけ挽回できる可能性はある。
体育祭までに部員が増えなければ、誰かに助っ人を頼むことになるか……
いずれにしろ、それに頼ってばかりもいられないか。
「とはいえ、リレーなんだから結局は走ることしかやれることはないんだがな」
「あはは、そうですね……
あ、バトン練習でもします?」
「そうしよう」
リレーにおいては、バトンパスがうまくいくかどうかで、その後の勝敗が左右される。
うまくバトンを繋ぐことができれば、それだけロスタイムは減るのだ。
より正確に、確実にバトンを渡し、それを受け取る。
これが、チーム戦であるリレーの肝と言っても、いいだろう。
そういうわけで、俺とさなはバトンの練習をすることにした。
「よっ」
「はい!」
「ほっ」
「はい!」
何度かバトンパスを繰り返す。
わりと、難しいな……落としはしないものの、スムーズにいっているわけでもないし。
しかし、何回と繰り返すことで、タイミングも合ってくる。
「あ、でも……まだ、走る順番を決めてないのに、いいんでしょうか」
ふと、さなが言う。
確かに、走る順番を決めていない現状では……俺とさなのバトンパスがうまくなったところで、意味があるかはわからない。
渡す側と受け取る側のタイミングの問題だから、相手が違えばこの練習も意味がなくなってしまう。
「俺の考えでは、アンカーはあいの方がいい。
もう一人がどこに位置するかはわからないが、あい以外の四人で考えるなら、俺とさなを連続にするのはありだと思う」
第一走者は、それなりに速い人がいい。そして、五人であることを考えれば……
速い→遅い→速い→遅い→速いでバランスを取ったほうがいいのではないか。
そう考えれば、残る一人を第一走者とし、さなを第二走者。次に俺、なぐも先輩と続き、アンカーがあい。
あくまで俺の考えだが、おそらくこうなるだろう。
「第四走者をなぐも先輩にするとして、それまでにどれだけ余裕をもたせられるか」
「そ、そうですね。頑張らないと」
第三走者がはしり切るまでに、余裕を持っておく……そして、なぐも先輩にバトンを渡す。
アンカーには、この中で一番速いあいを推す。
ま、助っ人が誰かにもよるがな。
「私も、先輩ほどじゃないけど速くはないから、特訓しないとですね」
おそらく無自覚だろうが、なぐも先輩が自分よりも遅いことを認めるさな。
いくら運動が苦手な自分でも、あそこまでではない、と思ってのことだろう。
「先輩、お疲れ様です!
いやぁ、やればできるじゃないですか!」
「はぁ、ひぃ……!」
向こうでは、外周を走り終えたなぐも先輩が倒れる勢いで座り込み、あいが駆け寄っていた。
……本当にあの人、大丈夫だろうか?
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