死に戻り勇者は二度目の人生を穏やかに暮らしたい ~殺されたら過去に戻ったので、今度こそ失敗しない勇者の冒険~

白い彗星

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死に戻り勇者、軌跡を辿る

昨夜はお楽しみでしたね

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 ……翌朝。あの後結局朝まで魔物などの外敵は現れず、朝日が登るのを眺めていた。リリーもシャリーディアも、ぐっすり眠れたようだ。

 ゲルドとミランシェは、互いにスッキリしたようだったが、少し眠そうだ。理由は聞かない。ただ、昨夜はお楽しみでしたねとだけ思っておく。


「ロア兄ちゃん、ゲルドおじちゃんおはよー。見張りお疲れ様!」

「あー、おはようリリー」


 朝から、天使のような笑顔を向けられる。すさんだ心が、きれいに洗われていくようだ。

 リリーには、ゲルドたちの事情を知られないようにしなければな。この純粋な子を、守らねば。

 それぞれ挨拶を交わし、朝飯へ。野宿続きになると、非常食や以前立ち寄った人里でもらった食料が役立つが、自然に成っているもので食べられるものがあれば、それも食べる。


「あの、ゲルドさん……」


 朝飯を食べ終わり、出発の準備を進めていく中、シャリーディアがゲルドに声をかけているのが見えた。

 気づかれないように、会話の内容が聞こえる範囲まで近づく。


「なんだよ?」

「その……あまり、個人の事情に口出しはしたくはないのですが。いくらなんでも、その……ミランシェさんと、その、少しは自重してください」


 顔を赤らめ、彼女が話す内容は……ゲルドと、ミランシェのアレ事情のことだった。

 シャリーディアは、知っていたのか……しかも、その口振りから、昨日今日知ったわけでもなさそうだ。ただ、このタイミングで切り出したってことは、昨夜のがよっぽどすごかったからだろう。


「なんだ、聞いてたのかよ」

「聞いてたのかよ、じゃありません! あんな……リリーちゃんは、なにも知りませんよ。でも、ロアさんとドーマスさんにはバレてると思いますよ!?」


 はい、バレてます。昨夜聞いてました。

 一応ゲルドも、リリーに聞かれないようには配慮しているのだろうか……いや、どうだろう。というか、リリーがこっそり起きてたら終わりだし。


「そう言われてもなぁ。旅に出てから、娯楽がねぇんだ。だから、わかるだろ?」

「わかりません! どうして娯楽がないだけでそういうことに結びつけるんですか!」


 ゲルドは、王都では女好きで有名だった。女好きと有名なのに、なぜか抱かれる女が後を絶たないほど。

 しかも、そういうことをもっとも嫌ってそうな、ミランシェが……ゲルドと、そういう関係になるとは。わからないものだ。


「どうしてったって、そりゃこんななにもない所で出来ることなんざ限られてくるだろ。一度経験すればわかるさ」

「なっ……」

「なんなら、今晩あたり……どうよ?」


 ! ゲルドの奴……シャリーディアを、よりによってこんなタイミングで、誘いやがった!?

 シャリーディアは、絶世の美女だ。だが、あまりに美女過ぎて、逆に男が寄ってこない。そういう行為どころかお誘いも、経験がないはずだ。

 こうなったら、俺が止めに入って……


「……嫌に決まってるじゃないですか」


 ……あれ。わりとあっさり……顔を赤らめることすらなく、誘いを断ったな。


「ははは、即答か。いいねぇ、見た目だけでなく中身も一級品ときた。どうよ、本格的に俺のものにならねぇか?」

「……」

「もしお前が俺の女になってくれるなら、今後は女遊びからはきっぱり縁を切ってもいい! どうよ?」


 女好きのゲルドが、女遊びをやめると……それほどまでに、シャリーディアは魅力的だ。

 だが、その文句で落ちる女性なんているのだろうか。ましてや、相手はシャリーディアだ。


「……何様のつもりですか。そんなもの、うなずくわけないでしょう」

「なんだよ。それとも、一晩の関係のがお好みか? 俺はそっちでもいいが」

「あなたとそのような関係になるつもりは、ありません」


 シャリーディアにここまで食い下がる男も、ゲルドが初めてなんだろうな。俺があんな対応されたら折れてしまうが、ゲルドは折れないな。

 しかし、シャリーディアの態度は変わらない。


「……まさかとは思うが。意中の男がいるとか、言わねえよな」

「……あなたには、関係のない話です。それより、もう準備が終わりそうです。みんなのところに戻らないと」


 意中の相手……その言葉を聞いた途端、シャリーディアの反応が変わったように感じたのは、気のせいだろうか。会話を切り上げ、ゲルドに背を向ける。こっちに戻ってくる。

 俺は、聞いていたのがバレないように……先に、戻った。
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