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死に戻り勇者、魔王の娘と対峙する
いつまでここに
しおりを挟む「おいしいー!」
朝の食卓に、ディアの声が響き渡る。並べられた料理を口にして、開口一番がこの言葉だ。
初めは、ガリーが作った料理だということで妙な警戒をしていたディアだが、食べてみればその味に大満足しているようだ。
「あなた、料理うまいのね! なんか意外だわ」
「ど、どうも……」
毒でも入っているんじゃないか、と疑っていたのが、噓のようにディアはガリーを褒めている。ガリーも、表情こそ変わらないが、褒められて嬉しそうだ。
ガリーには、俺が一から料理を教えた。料理だけではない、家事は一通りだ。
これまで一人で生活し、生きてきたガリー。だが、ここで暮らすのなら人としての生活を覚えていかないと、話にならない。
「ガリーは、結構覚えが良くてな。俺も驚いたもんだよ」
「ふーん……」
もぐもぐ、とディアは料理を食べていくのだが、俺のことをジト目で見てくる。さっきまでおいしそうに瞳を輝かせていたのに、忙しい奴だな。
「どうしたんだ」
「別に……ロアからものを教えてもらって、うらやましいとか思ってないし」
「……」
拗ねたようなディアの言い分は、こうだ。なにが別に、だ……めちゃくちゃ気にしているじゃないか。
というか、この程度のことで拗ねてるのか。かわいいなおい。
「ごちそうさま」
その後食事を終え、片づけに。片づけは、料理番とは逆……つまり今日は俺だ。
ディアも手伝うと言って、隣に立つ。
「大丈夫か? 大神官様が、皿洗いなんて……」
「む、その呼び方やめてよ」
軽口をたたき合いながら、食器を洗っていく。
こうして、隣にディアがいて、同じように食器を洗っている……なんだか、不思議な気分だ。
「ところで、ディアたちはいつまでここに、いられるんだ?」
「うーん……居れても、あと一日か二日ってところかな」
「そっか」
ディアは大神官という立場上、あまり長く国を空けることは出来ない。どんな仕事をしているのかまでは、わからないが。
メラさんだって、【分身】の『スキル』を使って片方がこちらに来ているとはいえ、少なからず負担のある『スキル』だ。あまり長時間は使わせない方がいいと思う。
このラーダ村からファルマー王国への道のりの時間を考えれば、むしろ二日は長すぎるのでは?と思うほどだ。
「ホントはね」
「おう」
「私も、ロアが今暮らしてる場所に移り住んじゃおうかな~って思ってたの」
「えっ」
何事もないことかのように、ディアは話し始める。なにそれ初耳なんだけど。
ディアは、視線は手元に落としたまま、続ける。
「ロアがいない時間はさ……やっぱり、寂しかった。時間を巻き戻して、この時間では絶対に、ロアを殺させない、どこかに逃がそうと思ってたんだ。その結果、もう会えなくなっても……死んじゃうよりは、マシだからって。でも……」
「……」
「ダメだね、寂しくて仕方なかった。今どこで、なにをしてるのかとか……逃がしたその先で、死んじゃってないかなと……いやな想像ばかりして。もしロアが生きてることや、今いる場所がわかったら……そこに、住んじゃおうかなって」
「ディア……」
「でもね……生きてるって、わかった。元気だって、わかった。また会うことだって、できた。私は、私のわがままだけで、私を頼ってくれる国の人たちを……見過ごせない。あはは、変だよね。自分でも、言ってることが矛盾してるの、わかってる」
ディアは、俺の方を見ようとはしない。それは、もしかしたら自分に言い聞かせようと、しているのかもしれない。
俺がいなくて、寂しいと言ってくれたのは嘘じゃない。それでも……俺が知らないだけで、国にはディアを必要としてくれている人たちが、大勢いるのだ。
その人たちを放り出してまで、国を捨てることは出来ない……まったく、ディアらしい。
ま、そういう優しくも強いところがあるから、好きになったんだけどな。
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