死に戻り勇者は二度目の人生を穏やかに暮らしたい ~殺されたら過去に戻ったので、今度こそ失敗しない勇者の冒険~

白い彗星

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死に戻り勇者、魔王の娘と対峙する

朝はやってくる

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「ぅ……んん……!」


 カーテンの隙間から、明るい光が差し込んでくる。窓の外では、チチチ……と鳥が鳴いている。朝日が登り、朝がやってきた証拠だ。

 布団の中に潜り込んでいた彼女が、寝起きの声を上げ……腕を伸ばしながら、起き上がった。


「ふぁ、あ……よく寝たぁ。おはようロア……ロア?」


 目覚めたディアは、隣で寝ていたはずの俺へと、視線を移す。しかし、そこに俺の姿はない。

 キョロキョロと辺りを見回して……ようやく、俺の姿を見つけた。


「ロア、どうしたのそんなところで」

「あぁ、おはようディア。どうしたんだろうな」


 俺は、布団から離れた床に寝転がっていた。結局、ディアに布団から追い出された後、俺は床で寝ることに決めた。

 だって戻ろうとしても、殴られるんだもの。あぁ頬痛ぇ。


「? なんだか不機嫌?」

「そんなことないさ」


 別に不機嫌ではない。理不尽に震えていただけだ。何度か殴られてしまったからな……神官というわりに、なかなかいいパンチしてたじゃないか。

 その後、俺にいろいろ聞いてきたディアを雑ながらかわしていく。教えてやったほうがいいだろうか、寝相が悪いぞ、と。


「わ、私が寝ている間、変なことしてないわよね?」


 と、布団を片付けながらディアが聞いてくる。変なことされたのは俺なんですけどね……物理的な意味で。


「いや、してないよ」


 まあ、ここは正直に答えておこう。俺は全然、変なことなどしていない。

 そもそも、一緒に寝る選択肢をした上で、ディアもその辺覚悟の上だと思っていたが……


「……別に、してもよかったのに」


 と、ぼそっと呟いたのは、俺に聞こえるように言ったのか、それとも俺がたまたま聞こえてしまっただけか。

 とはいえ……変なこと、仮にしようと思って実行に移しても、そうなる前に殴られ蹴られて終わりだ。寝込みのディアに変なことは、できないだろう。

 ディアとは昔はよく遊んでいたが、考えてみれば一緒に寝たことは……少なくとも、一緒の布団で寝たことは、ないな。子供の頃から寝相が悪かったのか、それとも大人になってからなのか。


「……寝てるお前に変なことする気は、ねぇよ」

「え、それって……」


 拗ねているらしきディアに、言う。いくら俺を好きと言ってくれた相手とはいえ、寝ている最中になにかするというのは、なにかイケない気がする。

 これ以上口を開いてもボロが出そうなので、そそくさと片付けて、リビングに向かうことにする。


「ねぇちょっと、さっきのって……あら、いい匂い」


 追いかけてきたディアが、香る匂いに鼻を動かす。


「もう少しで朝飯の時間だからな」

「朝飯……って、ロアはここにいるじゃない。ということは……」


 そう、俺はここにいる。つまり、今朝飯を作っているのは、俺以外の人間だということになる。

 そして、それは一人しかいない。リビングの扉を開ける。


「! ……おはよう」

「あぁ、おはようガリー」


 扉を開ける……そこには、キッチンに立つガリーの姿。

 朝飯……というか、家事は交代制でやっている。今日はガリーが作る番だったのだ。


「……ねぇロア」

「なにさ」


 小声で、ディアが話しかけてくる。


「ガリーって、料理できるの?」

「ふふん、それは食べてからのお楽しみだな」

「……なんでちょっと自慢げなのよ」


 この村に来たばかりの頃、ガリーは料理どころか、なにもまともにはできなかった。彼女の過去を考えれば、不思議でもないが。

 だから俺は、彼女に人としての生活を教えることにした。料理を始め、掃除、人付き合い、などだ。初めは言われたことをやるので手一杯だったが……


「ほんとに大丈夫? なんか毒とか入ってるんじゃ……」

「もしそうなら、俺はとっくにこの世にいないさ」

「ふたりとも、ご飯……できたよ」


 俺たちの会話は聞こえていないのか、それとも聞こえても興味がないのか……三人分の料理を、ガリーはテーブルに並べる。


「ま、騙されたと思って食ってみろよ。ひひっ」
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