復讐の転生者 ~仲間に殺された男は、かつての仲間の息子となり復讐を決意する~

白い彗星

文字の大きさ
91 / 307
第4章 騎士学園での騒動

王族

しおりを挟む


「なんかあっという間だったな」


 入学試験の日から、時間が経ち今日は入学日。その間、なんだかんだであっという間だった気がする。

 俺とノアリ、そしてミライヤは合格し、今日から学園に通うことになる。試験では好成績を納めたし、その他も入学に問題ないとのことだ。

 結局、学園に通うにあたって寮生活をすることに。せっかくの学園生活なのだから、少しでも馴染んでこいという結論になった。なので、この家とはしばらくお別れだ。


「うぅ、寂しくなるわねぇ……」

「なにかあったらすぐ帰ってきてくださいね?」


 心配して涙ぐんでいる母上と、思いの外心配の様子を見せてくれたアンジー。思い返せば、アンジーとは本当にずっと一緒にいたもんな。日々の生活はもちろん、『呪病』の一件でも一緒に旅をしていた。

 その期間があるから、両親やキャーシュよりもアンジーと一緒にいた時間が濃いのかもしれない。父上は家を空けることが多かったし。

 そしてキャーシュは……


「兄様……頑張ってください!」


 寂しそうな顔を見せながらも、気丈に振る舞っている。あぁ、まったくキャーシュはかわいいなぁ。

 キャーシュと離れるのは苦渋の決断だが、なにもずっと会えなくなるわけじゃない。距離が近いのだから、休みの日なんかにちょくちょく帰ってくればいい。


「ヤーク、励めよ」

「父上……」


 そう言って俺の頭に手を置いてくるのは、父上……大きく温かな手は、普通であれば安心するものなのだろう。だが、俺は今すぐにでも払いのけてしまいたかった。

 騎士学園に入学し、剣の腕を磨く。それは最終的な目標として、父上……ガラド・フォン・ライオスを殺すことにある。然るべき場所で然るべき訓練を。そうすれば、今以上に強くなれるだろうとはロイ先生の言葉だ。

 俺は『呪病』の一件の旅から戻り、自分の実力を再確認した。子供のゴブリンに、ギリギリ勝つことができた。ゴブリンなんて、ある程度の実力があれば苦労なく勝つことができる。

 そんなのに苦戦するようじゃ、ガラドを殺すなんて夢のまた夢。だから俺は、より鍛練に励んだ。ちなみに先生は、予定が入っているので来れなかったようだ。残念がっていた。

 俺が転生してから16年……俺が死んでからだと、19年か。あの頃と比べれば、ガラドも年を取った。とはいえ、まだまだ現役だ。そんな人物に、勝つにはさらに実力をつける必要がある。


「じゃ、行ってくる!」


 さて、別れの挨拶もそこそこに……俺は家を出る。外ではノアリが待っていたので、一緒に登校する形だ。

 こうして隣り合ってあるくことに、初めの頃は少し抵抗はあった。幼なじみびいきを除いても、ノアリは美人だ。成長した今はよくわかる。そのノアリと並んで歩いていれば、当然注目はされる。

 今となっては、まあ慣れたしな。


「ふふーん♪ 楽しみね!」

「そんなに楽しみなのか、なんか意外だな」


 ノアリは当初からこの学園を受けるつもりはなかったようだが……俺がこの学園を受けると話して、急にここを受けるように努力を始めた。

 それで本当に合格するんだから、すごい奴だよな。


「せっかくの学園だもの、楽しまないと!」

「ま、それもそうだな」


 それには俺も同意見だ。せっかくの学園生活なんだから、楽しまないとな。

 転生した俺の目的は、ガラドを殺すこと。だが、それを俺の人生の終わりにするつもりはない。いかにして秘密裏にあの男を殺すか。そしてせっかくの第二の人生を、どう謳歌するかだ。

 どうして、もしくは誰がなぜ、俺を転生させたのかは知らない。だが、わからないならわからないで楽しむだけだ。


「人が多いわね……あれ、あそこ人だかりができてるわ」


 学園に近づくにつれ、人は多くなってくる……そして、入り口の付近で、人だかりができているのを発見。

 一瞬、入学試験日のミライヤの件を思い出したが……さすがに平民だからって、朝からこんな堂々とした場所であんなことは起こらないだろう。

 それに、人だかりの感じはあの時のような、悪意を感じるものではなくて……


「……おや」

「ん?」


 この人だかりが邪魔でなかなか前に進めない。いっそ払いのけてしまおうかと考えていたところへ、人だかりの中心にいた人物と目があった。

 誰だろう……なんか、見覚えがあるような。あ、こっち来た。その際、人だかりはその人物の道を作るように、避けていく。


「やあ、キミはヤークワード・フォン・ライオスくんだね?」

「え? はぁ、そうだけど」


 その人物は、人のいい笑みを浮かべ、俺の手を取る。肩まで伸びた金髪に、吸い込まれそうなほどに澄んだ水色の瞳。さらに頭の先からアホ毛が伸びている。

 なんという美形だろう。キャーシュもなかなかの美形だが、悔しいことに負けていない。

 とはいえ、いきなり手を握られるほどに面識などないはずだが……気のせいか、周囲がざわついている。俺の隣にいるノアリなんて、見たことがない顔をして固まっている。


「ノアリ? どうした?」

「どどっ、どうしたって……あんたこそ、なんでそそ、そんなに、冷静なわけ!?」

「なにが」


 ノアリがなにをそんなに慌てているのか。俺の返答を、まるで信じられないとでも言いたそうだ。

 身ぶり手振りでなにかを伝えようとしているが、やがて諦めたように……


「そ、その方がどなたかは、知ってるわよね?」

「いや」


 直球に問いかけてきたが、俺が首を横に振るとさらに衝撃を受けた顔に。おいおい、そんな顔するもんじゃないぞ。

 しかし、知ってて当然の人物ってことか。それも、ノアリが……貴族が、敬語を使うほどの……


「はは、申し遅れたね。ボクはシュベルト・フラ・ゲルド、以後お見知りおきを」

「あぁこれはどうもご丁寧に。……ん、ゲルド?」

「こ、この国の、王族よ! 第一王子の、シュベルト様よ!」


 聞き覚えのある名前、というか単語に首をかしげる。引っ掛かる。その引っ掛かりに答えをくれたのが、痺れを切らしたようなノアリの言葉だった。

 あぁ、ゲルド……この国の名前ゲルド王国か。それに、王子ということはなるほど……道理で見覚えがあるはずだ。王子ならば、どこかで見る機会もあったということで……


「……王子?」

「とりあえず、そういう肩書きってことかな」


 ……つまり、今……俺は王子に、手を握られて、いるのか……
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

[完]本好き元地味令嬢〜婚約破棄に浮かれていたら王太子妃になりました〜

桐生桜月姫
恋愛
 シャーロット侯爵令嬢は地味で大人しいが、勉強・魔法がパーフェクトでいつも1番、それが婚約破棄されるまでの彼女の周りからの評価だった。  だが、婚約破棄されて現れた本来の彼女は輝かんばかりの銀髪にアメジストの瞳を持つ超絶美人な行動過激派だった⁉︎  本が大好きな彼女は婚約破棄後に国立図書館の司書になるがそこで待っていたのは幼馴染である王太子からの溺愛⁉︎ 〜これはシャーロットの婚約破棄から始まる波瀾万丈の人生を綴った物語である〜 夕方6時に毎日予約更新です。 1話あたり超短いです。 毎日ちょこちょこ読みたい人向けです。

《完》義弟と継母をいじめ倒したら溺愛ルートに入りました。何故に?

桐生桜月姫
恋愛
公爵令嬢たるクラウディア・ローズバードは自分の前に現れた天敵たる天才な義弟と継母を追い出すために、たくさんのクラウディアの思う最高のいじめを仕掛ける。 だが、義弟は地味にずれているクラウディアの意地悪を糧にしてどんどん賢くなり、継母は陰ながら?クラウディアをものすっごく微笑ましく眺めて溺愛してしまう。 「もう!どうしてなのよ!!」 クラウディアが気がつく頃には外堀が全て埋め尽くされ、大変なことに!? 天然混じりの大人びている?少女と、冷たい天才義弟、そして変わり者な継母の家族の行方はいかに!?

攻略. 解析. 分離. 制作. が出来る鑑定って何ですか?

mabu
ファンタジー
平民レベルの鑑定持ちと婚約破棄されたらスキルがチート化しました。 乙ゲー攻略?製産チートの成り上がり?いくらチートでもソレは無理なんじゃないでしょうか? 前世の記憶とかまで分かるって神スキルですか?

伯爵令嬢アンマリアのダイエット大作戦

未羊
ファンタジー
気が付くとまん丸と太った少女だった?! 痩せたいのに食事を制限しても運動をしても太っていってしまう。 一体私が何をしたというのよーっ! 驚愕の異世界転生、始まり始まり。

異世界成り上がり物語~転生したけど男?!どう言う事!?~

ファンタジー
 高梨洋子(25)は帰り道で車に撥ねられた瞬間、意識は一瞬で別の場所へ…。 見覚えの無い部屋で目が覚め「アレク?!気付いたのか!?」との声に え?ちょっと待て…さっきまで日本に居たのに…。 確か「死んだ」筈・・・アレクって誰!? ズキン・・・と頭に痛みが走ると現在と過去の記憶が一気に流れ込み・・・ 気付けば異世界のイケメンに転生した彼女。 誰も知らない・・・いや彼の母しか知らない秘密が有った!? 女性の記憶に翻弄されながらも成り上がって行く男性の話 保険でR15 タイトル変更の可能性あり

処理中です...