復讐の転生者 ~仲間に殺された男は、かつての仲間の息子となり復讐を決意する~

白い彗星

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第4章 騎士学園での騒動

フレンドリー王子

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「あっはははは」


 王族に手を握られ、笑みを浮かべられている。人のよさそうな、純粋な笑顔だ。

 どうしてこんなことになっているんだ。


「なあノアリ、これどうなってんの?」

「こっちが聞きたいわよ」


 だよな……

 さすがに王族と会話したことはない。何度か、王族の住んでいる城に連れていかれたこともあった気がするが、それも昔のことだし口を開くことはなかった。

 俺の家柄は、確かに一般貴族よりも位が上だとはいえ、それよりも王族は位が上だ。そんな立場の人間とどう話せばいいのか……わかんなくなってきたぞ。そもそも、この人はどうしてこんなに……


「シュベルト様」

「あ、おっとすまない。いきなりで驚かせてしまったな」


 されるがままでどうしたらいいか呆然としていたが、シュベルト様の隣に立つ女性が声をかけたことで、我に帰ったかのように手を離される。

 ほっ、なんとか離してもらえた。にしても……この、制服は……


「ええと、いろいろ聞きたいこともありますが……シュベルト様、その制服は……」

「あはは、シュベルトでいいよヤーク。あ、ヤークって呼んでいいかな。そうそう、ボクたちもこの学園に入学するのさ」


 聞いたこと以上の情報が帰ってきた。返答の中にすごい距離を詰められたなおい。

 なぜにこんなにフレンドリーなのかもすごく気になるが……思っていた通り、この学園の制服を着ているということは、この学園に通うらしい。なんで王族が学園に通ってんだろう。

 その際、ボクたちと言っていた。ということは……と隣に立っている先ほど声をかけた女性に目を向ける、女性は軽く頭を下げる。

 白髪の中にうっすらと水色みのある腰まで伸びた髪を後ろで縛って一本にしている。凛とした佇まいは、どことなくアンジーを思い出させる。シュベルト様と呼んだり、今の仕草からもしかして、彼女はシュベルト様の侍女なのだろうか。


「え、えぇ……俺のことは、好きに呼んでください」

「じゃあヤークで! これから仲良くしてくれると嬉しいんだけど、どうかな!」


 ……初対面の相手にこんなにまで迫られるというのは、ある意味で恐怖だな。とはいえ、断る理由も勇気もない。


「も、もちろん……というか、なんで俺と?」


 仲良くしたいと向こうから言ってくれるのはありがたいことだし、しかも王族なんてこっちからおいそれと話しかけられるものではない。ここで仲良くなっていれば、今後いいことがあるかもしれないし。

 ただ、それはいいとしても理由を知りたい。なぜ、会ったばかりの俺と、仲良くなりたいのか。


「なんで、か……以前からキミに、興味があったからかな」

「興味?」

「勇者『フォン・ライオス』の家系に生まれ、その実力もかなりのものだ。この間の入学試験を見ていたよ」


 俺への興味と言ったら、まあそのくらいだよな。王族にとっても、『勇者』の家系は珍しいのだろう。

 しかし、直後に「それに……」と、彼は続ける。


「多分、キミとボクは似てるんじゃないかなって」

「俺と……シュベルト様が?」

「シュベルトでいいって。王族、勇者……ただ生まれがそこってだけで、周囲が萎縮してろくに友達もできない。さっきだって、こっちから話しかけようとしても遠巻きに騒がれるだけだしね」


 そう話すシュベルト様の顔は、少し寂しそうだった。なるほど……貴族ってのは家柄を気にする生き物だ。それが、自分たちより位の高い王族に話しかける奴はそういないだろう。

 そうなれば、年の近い友達が作れるかどうか……上流貴族ならまだしも、王族ならばなおさらだ。

 俺だって、初めての友達はノアリだが……ノアリ以外に友達がいるかと言われると、な。ヤネッサやクルドは友達だが尊敬すべき相手でもある。そういった意味で純粋に友達として接しているのは、ノアリだけだ。

 ……俺も友達いなかったんだな。ノアリがいなかったら完全に。


「俺でよければ……ぜひ、こちらからお願いしたいくらいです」

「おぉ、ありがとう! そんなかしこまった言葉じゃなくてもいいよ、タメ口で頼む!」


 立場の関係ゆえに、友達ができなかった、か。確かに俺たちは似ているのかもしれない。

 隣の侍女さんは、友達って感じでもなさそうだし。あくまで侍女なのだろう。シュベルト様にとってのノアリみたいな存在、とはまた違うのだろうな。


「ええと……仲良くするのはこちらとしても願うところですが。話し方が呼び捨てにタメ口というのは……」

「頼むよ! 憧れていたんだ気楽に話し合える友人を!」


 呼び捨てタメ口を頼まれる……ってのも、変な気持ちだな。俺自身、これまで誰かに敬語を使ってきた記憶は、先生くらいしかないけれど……

 さすがに王族に、タメはどうなんだ? いくら貴族社会の上下関係を気にしない俺でも、王族相手には気が引ける。

 けど、本人たっての希望だしな……それに、似た者同士だからとせっかく俺に話しかけてくれたのに。


「い、いきなりは難しいかもなんで……じ、徐々に、ってことで。シュベルト……様」

「むぅ……まあ、それならいいか」


 とりあえず、徐々に慣らしていくことに。うん、話しやすいというか面白い人には違いないんだがな。手を取られたまま、ブンブン振られる。

 そして、シュベルト様の視線は次に、俺の後ろにいたノアリへと向けられる。


「キミは、ノアリ・カタピルくんだね! キミとも仲良くしたいな!」

「は、え、え、私、ですか!?」


 同じようなやり取り。ノアリはさすがにおそれ多すぎてそんなにフレンドリーには接することはできなさそうだが、ひとまずこうして仲を深めることには成功したようだ。

 ……周りの視線が多くなってきている。それはそうだ、学園の入り口でこんなこと。とにかく、中へ入らないと。


「あ……や、ヤーク、様にノアリ様!」

「この声……」


 ふと、聞き覚えのある声が。振り向くと、そこには制服に身を包んだミライヤがいた。入学することになった彼女も、当然この入り口を通ることになる。

 そんなミライヤは嬉しそうに、俺たちに近寄ってきて……俺の手を取っている人物を見て……


「は、は、はぅ、お、王族、の……し、しゅ、しゅ……はぅう~……」


 顔を真っ赤にして、その場に倒れた。
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