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勇者パーティーの旅 ~魔王へと至る道~
第24話 旅立ち
しおりを挟むヴラメさんが現役を退いた本当の理由。それは、『他者を傷つければ傷つけるほど、寿命が減っていく』という『呪い』をとある男にかけられたためだ。
しかもその男は、師匠とヴラメさんを前にして逃げ切ったのだという。そんな人物がいるなんて、驚きを隠せない。
師匠よりすごい人はいないと思っていたけど……世界は広いんだな、なんだかんだで。
「そういうわけで、俺はもう戦いには出れない。それに、恥ずかしいが人に教えるのは致命的に苦手なんだ」
「そうですか……残念ですが、仕方ないです」
戦うことも、教えることもできない。その理由を聞き、先ほどよりも納得したような表情でうなずくグレゴ。
教えるのがド下手なのはともかくとして、仕方のない理由があるのなら、仕方ない。たとえ旅に同行しても、魔物であろうと傷つけたら寿命が減っていくのだ……まさか私たちの旅に巻き込み、寿命を減らすわけにはいかない。
戦えないのに、旅に同行しても仕方がない。だから、ヴラメさんが頑なに断るのも、それは当然の話だ。
「俺ができることはない、残念ながらね。けど、せめてここでゆっくり旅の疲れを癒してくれ。旅に必要なものも、可能な限り用意する」
「あぁ、それは助かる!」
好きなだけ休んでいってくれと、ヴラメさんは言う。師匠も笑う。うん、グレゴの勝負申し込みによりとんでもない展開にはなったが、元々ここへはそのために来たのだ。
魔王を討伐する旅とはいえ、急ぐものでもない。なのでここへの滞在は三日……その期間、休むなり遊ぶなり旅の準備を整えるために、気を休ませることになった。
サシェは集落の子たちと日々遊んだり、グレゴは教えてもらえないとわかりながらもヴラメさんの後を追い回したり……エリシアもボルゴも、私もそれぞれ思い思いの時間を過ごした。
その中でも師匠は、人気者だった。どうやらこの集落を作ったのは、ヴラメさんと師匠の二人であったらしい。なので、師匠もヴラメさんと同じくらい人気がある。こうして見ると、ホントお父さんみたいだな……
そうして、三日間はあっという間に過ぎた。
「じゃ、そろそろ行くとするか」
「ですね」
休息も食料も、充分に補給した。これで、この先の旅も頑張ることができそうだ。
「あっという間だったな、三日間も」
「なぁに、魔王を倒せばまた来るさ」
古い友人である二人は、ただそれだけを交わして固い握手を交わす。そうだ、師匠の言うように……魔王を倒せば、その帰り道でまたこの集落に来ることもできるのだ。
私は、改めて思う……ここにいる人たちの笑顔を守るためにも、必ず世界を平和にしなければいけない、と。
そのためには、辺りを闊歩する魔物を倒す。いや、元凶である魔王を倒すことだ。充分に英気を養ったし、今の私たちなら、たとえ誰が相手だって負けやしない!
「グルルル……!」
決意を新たにしているところへ、無粋な鳴き声が耳に届く。それは、この三日間耳にしていなかった……なのに、妙に耳についてしまった鳴き声だ。
そこにいたのは、魔物だ。しかも、多い……十は軽く超えている。集落の入り口で、威嚇するようにこちらを見ている。
「あ、あんなに魔物が……」
と、震えるのは本来この集落の門番であるコメット氏だ。彼も、これだけの数の魔物を相手にしたことはないだろう。それ以前に、今の彼には得物がない。
まだ、剣を新しく買ってもらってないのだ。
ヴラメさんを除けば、この集落一の実力者だと言う。ヴラメさんは呪いの効果で魔物を傷つけることができないため、コメット氏に門番を任せていたわけだ。
「ふん、魔物か……ちょうどいい、派手な旅立ちと行こうじゃないか!」
不敵に笑うグレゴは、剣を抜く。ここでも一人鍛練を続けていた彼は、ヴラメさんに教えこそ乞えなかったが、指摘を受けてはいた。教えるのは苦手なヴラメさんも、その人の癖を指摘することなんかはできたようだ。その成果を試すいい機会と、感じたのだろう。
とはいえ、グレゴだけに任せるわけにもいかない。私たちだって、英気充分気合い充分で、この世界を守ることを決めたのだから!
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