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英雄の復讐 ~絶望を越える絶望~
魔導具を作った女
しおりを挟む「なっ……!」
バキッ……!
ガルバラの手元から離れた杖……魔導具は、粉々に砕ける。どんな素材でできているのかは知らないが、見るからに木製のそれは……実際に木のような感触であった。
蹴りにより杖は真っ二つに割れ、地面に落ちていく。これが鉄製とか硬いものだったら、足が痺れたかもしれないけど……木だったおかげで、痒いくらいだ。
「これで……」
この魔導具により、ガルバラは魔力を増幅させていた。ならば、魔導具さえ壊してしまえば、もう魔力が増幅することはない。
魔導具なんてたいそうな名前がつけられているから、もう少し頑丈にできてるもんだと思ってた。なんてことはない、その辺の、少し太いだけの枝と変わらない。
「あ、あぁ……ま、魔導具、が……」
数秒前の元の形はどこへやら……今や無惨な姿になってしまった魔導具を見て、ガルバラはショックからか足が震えている。その足で、魔導具へと近づいていく。
膝から崩れ落ち、まさに棒切れとなったそれを拾い上げる。涙まで流して……そんなに、ショックだったのか。
「あぁあ、なんてことを……ま、魔導具は、とても貴重な……!」
つまり、高価なものを壊されて泣いている、のだろうか。おっさんの涙なんて見たくないんだけどな。
「この、罰当たりな……だが、まだ本体は……」
罰当たり、ねぇ……すでに、私は、罰とは軽すぎるくらいの行いを繰り返している。今さら魔導具の一つや二つ壊したからって、どうということはない。
ガルバラは、折れた杖を大事そうに抱えている。あの宝石のような部分は、無事か……あれが本体だというのなら、あそこを、破壊しておいた方がよかったかもしれない。
とはいえ、あの悲しみよう。魔導具になんの支障もなかった、というわけではないらしい。
「まだだ、これさえ無事なら、まだ……」
「やっぱり、そこが源の部分か」
魔力を感じるときは、あの宝石が光っていたから予想はしてたけど……あの魔導具は、杖全体ではなくあの宝石に魔力の源があるのか。
だけど、少なからず影響はあるはず。
「くっ……おぉ!」
証拠に、ガルバラは魔力の増幅行為をしているのだろうが……さっきより、確実に増幅の力が弱まっている。やはり。魔導具としての性能は落ちているってことか。
放たれる火の竜も……やはりさっきのものには及ばない。これなら、簡単にかき消すことができる。
ボシュッ
「っ、くそ! せっかく、完成させた魔導具を! あんな、変な襲撃者なんぞに!」
……よほど、魔導具ってやつにこだわるなあのおっさん。おっさん自体の魔力は決して弱くはない……むしろ村の中では高い方だ。エリシアの魔力が突き抜けてるから、相対的に弱く見えるだけで。
なのに、魔導具なんていう、魔力を増幅させるものに執着している。なにか、理由でもあるのか。
完成させた、と言うからには、誰かが作ったということだろう。サンタさんが持ってきたわけでもなし。
「ねえ、その魔導具ってやつ、あんたが作ったの?」
この世界には、まだ私の知らないものが溢れてるってことか。氷狼に呪術に魔導具。それを、復讐のために再度訪れたこの世界で知ることになるなんて、思わなかった。
「作った? はっ、魔導具とはそこらの凡人がおいそれと作れるものではない! 私も含めてな……貴様も、よく知っている人物が作ったのさ!」
私のことを敵対視はしていても、聞いたことには答えてくれるんだな。親切なのか、まだ余裕があるのか……なにか奥の手でも、あるんだろうか。
まだ魔導具は健在だ、警戒をするに越したことはない。
それにしても……あの魔導具を作ったのは、私の知っている人物だって? それは、誰か……そんなの、検討する人間は一人しかいない。
「まさか……エリシア?」
「そうさ。これは、あの小娘が作ったものよ。忌々しいことにな」
……まさか本当に、エリシアが? エリシアが村を出たのは十八の時だ……ってことは、それまでの間に、あんなものを作ってたっていうのか。
魔力の才能があり、魔力を増幅させる魔導具まで作れる……ホント、魔法というものに恵まれてたんだな。
そして、彼女が作ったものを、使っている……のはいいんだけど。エリシアのことを快く思ってないっぽいあのおっさんが使って、あまつさえ壊されたら涙まで流すのは、いったいどういうわけなんだ。
「忌々しい、のにずいぶん大切に扱ってるんだね」
「……貴様は、魔導具の製造方法を知らぬから、そんなことが……!」
徐々に、ガルバラの感情は上昇していく。私、なにか地雷を踏んだのだろうか。
もしかして、ものすごく高価なもので作ってある、とかかな。魔力を増幅させるものだ、どんな素材でどんな作り方かなんて、想像もつかない。
「それ……」
「えぇええぃ!」
ガルバラは完全に怒ってしまったのか、会話を中断させ様々な魔法を放ってくる。初めに村人たちが撃ったのと似たようなものでありながら、一人でその威力を上回っている。
だが、手がつけられないほどでない。いくら威力か高かろうと、こんなレベルエリシアの足元にも……いや、魔獣だってもっとすごいレベルのがいた。
「もうあんたじゃ、私には勝てないよ」
襲いくる魔法の数々を、私はぶん殴り消滅させる。魔導具が万全だったらまだしも、今の状態では遠く及ばない。わざわざ魔法を使うまでも、ないくらいに。
「くそ、なんなんだ貴様は……この、化け物め!」
……さっきも言われたな。このおっさんの中で、私は完全に化け物扱いだな。どうでもいいけど。
けど、化け物化け物言われるのも癪だし……
「化け物、なんて失礼だな。私はアン……ただの人間で、エリシアを殺したのは私だよ」
「……な、に?」
さっきからいやに執着しているエリシア……彼女の生死を、伝えてやる。
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