異世界召喚され英雄となった私は、元の世界に戻った後異世界を滅ぼすことを決意した

白い彗星

文字の大きさ
153 / 522
英雄の復讐 ~絶望を越える絶望~

見えない攻撃

しおりを挟む


 体から溢れ出すエルドリエの魔力は、それはそれは凄まじい。娘のエリシアがあれだけの人物になったのも、納得できる。

 あの魔法の才能は、母親譲りだった……ってわけか。もちろん、本人の努力の影響もあったんだろうけど。


「……あなたは……優しい人だと、思っていたのに」


 エルドリエが、私を睨む。いや、瞼が閉じられているから、直接睨まれているわけではないんだけど……わかる。絶対睨まれている。

 いくら私が殺したと言っても、エリシアの死を完全には信じることはないだろう。それは信じられないより、認めたくないという思いから。

 それでも、私がエリシアの魔力の源を食べたことは見て明らか。エリシアの魔力の源は目玉だ、そして魔力を奪うにはその部位を食べないといけない……つまり、エリシアに危害を加えたということ。

 ……目玉を抉り、それを食べたなんて……危害を加えたなんてかわいげのあるレベルじゃないと思うけど。


「……優しい人なんて、気のせいだよ」


 だから、エルドリエが言う優しい人なんて……そんなもの、幻想だ。今の私がいい人であるなんて、そんなはずがないのは、私がよくわかっている。

 ……今の、か。昔の私は……この世界に戻ってくる前までの私は、どんな性格だったっけな。そこまで月日が経ったわけでもないのに、もう、覚えてないや。


「そのようね。私の勘違いだったわ」


 直後、エルドリエの魔力が一気に高まっていく。普通は魔力は目に見えるものではないけど、エルドリエの魔力は目に見える……まるでオーラのように、体に纏っている。

 見えないはずの力が見えるなんて、やっぱりその辺の魔法使いとは違うってことか。目が見えないからちゃんと戦えるのか心配だったが、これだけ力があれば、心配は無用のようだ。

 確か、魔力を感じ取ることで、そこに誰かいるくらいはわかる、と言っていたし。それが娘の魔力であれば、なおさらにわかるのだろう。

 ならば、視力が機能してないとかは関係ない。向こうが私を殺すつもりなら、私だって手加減は……!


「ふべっ!」


 直後、またもなにかに殴られる感覚。それを頬に受け、思わぬ攻撃に尻餅をついてしまう。

 っつつ……今のは、なんだ? さっきと同じ……見えないものに、殴られたような。

 さっきは、油断していたところにエルドリエの魔力をぶつけられたのだと思った。けど、今のはちゃんとエルドリエに気を向けていたし、もちろん背後のガルバラへの警戒も怠っていない。

 まさか、エルドリエとガルバラ以外に、この場に誰かいる? そいつが、透明になって私を……いや、他に誰かいるって気配は感じない。魔力は消せても、人の発する気配は完全には消せやしない。

 この場にいるのは、私とガルバラと、エルドリエの三人だけ。なら、この攻撃は二人のうち、どちらかの……


「これは……っ!」


 また、だ。なにかに殴られる。決して致命傷になるわけではないけど、正体のわからない攻撃というのは不気味だ……

 見たところ、どちらも不審な動きは見せていない。ただ、私が急に倒れたことに驚かない辺り、やはりどちらかの……

 ……どちらか、か。もしもこれがガルバラの仕業であるなら、さっき一対一で戦っていたときに、やらない理由がない。それにこれが魔法の類いなら、魔導具もあったんだ。威力を増幅することだって、できる。

 つまり、この攻撃は……


「お前、か!」

「!」


 この攻撃を仕掛けているのは、まず間違いなくエルドリエだ。それを確信として、魔法により火の玉を作り出し、エルドリエへと放つ。

 それは、なんの妨害もなくエルドリエを焼き尽くす……はずだった。しかし、そうはならなかった。


「えっ……」


 火の玉が届く前……彼女の体に触れるより前に、火の玉が消し飛ばされたのだ。まるで、見えない壁でもあるかのように。

 いや、攻撃を防がれたこと自体に驚きはない。魔力による防壁なんて、私もよくやるし。問題なのは、火の玉がまるで、内側から破裂したかのような……


「っ!」


 急に、背後からの殺気が強まる。とっさに身を捻ると、そこには拳を打ち出したガルバラの姿……エルドリエに気をとられている私の隙を狙って、仕掛けてきたか。

 忘れてた訳じゃないけど、エルドリエの攻撃、防御方法がわからない以上、邪魔でしかない!


「とりあえず伸びてて……ぶへ!」


 ガルバラを適当に気絶させようと、拳を振りかぶったところへ……また、見えない攻撃が叩き込まれる。さらに、そこへガルバラの蹴りが打ち出され……

 今度は、まともに腹に受けてしまう。


「ぐっ……へ!」


 なんとか踏みとどまり、数歩後退しただけに留めるが……こいつ、結構鍛えてるな。結構効いた。

 二対一……別に数の不利を嘆くつもりはない。今までこんなこと、何度もあったしね。

 ただ、手の内を知っていたグレゴとエリシア、呪術という未知の力を使うとはいえ所詮チンピラの男たちとは違い……掴み所が、ない。

 もし、エルドリエの見えない攻撃が魔法によるものなら……そういうものもある、とまあ納得はできる。なんたって魔法だし。ファンタジー世界だし。

 それに、ここは『魔女エリシア』が生まれた村……もしかしたら、私が知らない魔法がいっぱいあるのかもしれない。

 エリシアの親は凄まじい魔力を持ってるし、魔法が上達するのは周りの環境あってこそだろうし、村人だって決して弱くはない。

 むしろ、魔法という一つの才で比べるなら、マルゴニア王国の魔法述師隊よりも……だから、ここはある意味、魔法使いのエキスパートが集まっている村、と言ってもいいかもしれない。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-

ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。 断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。 彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。 通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。 お惣菜お安いですよ?いかがです? 物語はまったり、のんびりと進みます。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-

ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。 困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。 はい、ご注文は? 調味料、それとも武器ですか? カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。 村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。 いずれは世界へ通じる道を繋げるために。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

処理中です...