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英雄の復讐 ~絶望を越える絶望~
不可視の魔法使い
しおりを挟む「……くっ!」
二人の攻撃を、かわしていく。といっても、相変わらず透明な攻撃は避けられず、当たってしまうんだけど。
攻撃には、なんにせよ気配があるものだ。相手の動きを見ていれば、どんな攻撃を放ったのかだいたい予測はつく……はずなんだけど。
「ぶっ!」
エルドリエは、その場からまったく動いていない。集中的に魔法を放つのはガルバラだが、ここぞというときに、エルドリエの見えない攻撃が襲ってくる。
これというのがなかなか厄介で、防ごうにもどこからどこに攻撃が放たれるのかわからないので、対処しようがない。
とはいえ、このまま逃げるパターンになっていてもじり貧だ……
「なら、突撃するしかないでしょ!」
攻撃を受けないことは大事だけど、防ぐ手段が見つからないんだ……ならばその大元を、叩いてしまえばいい。
その間本格的に防御を捨てることになるが、どのみち今までも攻撃は当たってたんだ。致命傷ではない……それがわかっているし、なんてことはない!
「! こいつ!」
私の突然の突撃に驚いたようだが、すぐに魔法を一点集中して放ってくる。だけどこんなもの、足止めにすらない!
「ふっ、せい!」
「なに……!?」
火だろうと氷だろうと風だろうと。そんなもの、全部殴り飛ばしてやる。この拳には、それができるだけの力がある。
片手しか使えないとはいえ、充分だ。……以前出てきた謎の手は、さっぱり出てこない。
「こないで!」
「! う、ぉっ!」
あと少し……そこまでの距離に迫ったところで、突如吹いた突風に、押し戻される。これは……エルドリエの、魔力か。
あの女、戦い向きな性格ではない……が、間違いなく魔力の才能は随一だ。時間はかけられない、さっさと決着をつけたほうがいいな。
「う、おぉ!」
……向こうでは、ユーデリアが村人たちを翻弄している。エルドリエやガルバラほどの魔力の持ち主がいるかはわからないにせよ、一人であれだけの数を圧倒するなんて、やっぱりやるねぇ。
「なんなんだ……あれは、まさか氷狼か……!」
ユーデリアの放つ冷気は、こちらにまで届いてくる。ちょっと肌寒くなってきた。
あの子にばかり、いいかっこはさせられないな。
「いくよ……!」
再び、二人に向かって突撃する。今度は、あんな突風では押し返されないほどに速く。速く。速く。
魔力で身体能力……主に脚力を上昇させ、スピードを上げる。そうだ、下手な小細工はいらない……今まで、こうして力と速さだけでねじ伏せてきたんだから。
魔法を撃つ暇なんて、与えない。エルドリエの、その横っ面に一発食らわせて……!
ガンッ!
「……つっ!」
しかし、またも私の拳は届かない。透明な壁に阻まれてしまっているが……音が、鈍い。まるで、コンクリートの壁にでも拳を打ち付けたような感覚だ。
透明な攻撃といい、壁といい、突風といい……エルドリエの使う魔法は、不可視のものが多いな。目で見ようとしても、全然ダメってことか。
ただ、魔力も気配も感じやしない……どうなってるんだ。
「ぬぬ、ぬ……!」
第一、この拳を阻んでいるものはなんだ? 並大抵のものじゃ、簡単に砕くことができるってのに……!
「はっ、貴様じゃエルドリエの魔力は突破できんさ!」
「!」
そこへ、ガルバラからの追撃魔法。こいつの魔法は避けるのは簡単だが……やはり、厄介なのはエルドリエ。目が見えていないのに、私を正確に狙ってくるし。
再び、遠距離から魔法を撃っても……やはり、なにかに阻まれる。拳も魔法も、届かない。
それなのに、向こうの攻撃は届くのだ。なんて一方的な……幸いなのは、エルドリエの攻撃にたいした威力がないことであるが。
「エルドリエ、これを」
「……これ、は……」
しかし、その考えすらも今、覆ろうとしている。ガルバラは、持っていた魔導具の宝石部分を、エルドリエに手渡したのだ。
それは、杖の状態から折れたとはいえ、まだ魔力を増幅させる力は残っている。その力を、自分でなくエルドリエに使わそうっていうのか!
「……でも、これは……」
しかし、受け取ったエルドリエはなにか、渋っているように見える。受け取ったものがなにかわかってないのか……
いや、あの様子から、なにを受け取ったかは気づいているだろう。魔力を感じることができるんだし、魔導具であることはわかるはずだ。
なら、なにを戸惑っている?
「わかっている……だが、これはあんたの娘が作ったものだ。それに、娘を殺したというあの女を、倒すためには」
「……わかったわ」
次の瞬間、宝石が……魔導具が、凄まじい光を放ち始める。同時に、莫大な魔力が放出する。
杖が折れてから魔力が半減していたそれが……杖であったとき以上の力を発している。ただ、エルドリエの手元に渡っただけで。
「なん……ぐぁ!?」
エルドリエの娘、エリシアが作ったことと、なにか関係があるのか……それを考え終える前に、なにかに体を突き飛ばされ……背後の壁に、打ち付けられる。
けど、それで終わりではない、謎の力は、なおも働き……私は、壁に押し付けられる形になり、その場から動けなくなってしまう。
「こ、れは……!?」
これも、エルドリエの魔力なら……先ほどとは、比べ物に、ならない……!
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